中学生のころ、やたらと話のデカイ友人がいた。でも、田舎町だったし、その男の家はいたって平凡だったから、単に厨二病で背伸びがしたいだけなのだと思っていた。
仲も良かったし、彼のことを本当に良い友人だと思っていた。
高校進学で、その男は別の高校に行ったからだんだん疎遠になったのだけど、たまに合うと挨拶くらいはしていた。
大学進学のち、ほとんど音信不通になって社会人になったころ、クラス会があって再開した。
公認会計士の免許を取って、アマチュアのバンドを組んでいてときどきライブもやっていて、今はなぜか○○○(車メーカー)のディーラーに勤めているということだが、それは実際の企業会計を学ぶための仮初めであって、いずれ開業するし近い将来に結婚も予定しているとのことだった。
○その後、医大に入り直すという話だったが、それはやめてシェフの修行を始めたとのことだ。どうもパリに修行に行くとのことだった。
本人の言または本人から聞いたという仄聞の経歴または目標だけが立派で、本人が何をしているのか実態は不明だった。
セルフイメージを、もっぱら「職業」にもとめてばかりいた彼は、いったいなにをやっているのか不明だ。
彼の勉強成績はかなり低いほうだったし、目標だけが暴走していたのだろう。最近流行っている「自分らしさ」もこんな風にならないことを願いたい。