学生寮の屋上に上って、この街に溢れている幾つもの神話について思いを馳せてみる。ペンキの剥げかけた給水塔の淵に座って、その錆の浮いた表面をゆっくりと歩く蛍の姿に目を遣る。幾つもの神話が生まれ、そして死んでいった。もう二度と蘇ることのない神話もあり、そうでない神話もある。そして、多くの人間は自分の抱えている神話が死んでいることにさえ気付くことはないのだ。
僕にとっての神話が死んでしまったのはいつのことだったのだろう、と蛍の動きを観察しながら考える。それは確か、僕が十五歳だった時のことだ。その歳に、僕は初めてフランツ・カフカの小説を読んだのだった。
そういう歳だ。
結局、僕にとっての神話というものは僕をどこかに連れて行くものではなかったのだ、と思う。寧ろ、神話の喪失こそが、僕を遠くへと連れて行くための条件だったような気さえする。僕がこれからどこへ行くとしても、その条件は喪失に他ならないのだ。それは海よりも深い確信だった。耳を済ませば夜の羽音が聞こえる。それは今にも飛び立とうとしている。ほんの微かな音であるにせよ、それは僕の耳に届く。それが神話というものだった。そして、その聴覚こそが、神話を喪った人間が引き換えに手に入れることのできるものだった。僕がどこかに行くには、何かを失うしか無いのだ。
◇
やがて、蛍が飛び去っていってからも、僕は長い間その蛍が去っていった方角を眺めていた。
僕は目を閉じ、自分の中を通り過ぎていった長い時間について考えた。目を閉じた後の暗闇の中を、蛍の灯は長い間彷徨っていた。僕は、その軌跡に手を伸ばしてみた。その指はどこにも触れなかった。僕が捉えようとした光は、僕の指のほんの少し先にあった。
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http://anond.hatelabo.jp/20160527043842
「効率が悪い」という理由で、いろいろと棚上げにできるってのが、健全というか、元増田の言葉を借りるなら無邪気で羨ましい。
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信心たるものを自分で見つけ出せなかった言い訳を本件の文意に見出すのは良い態度と言えない。 それぞれが信じている各ワールドに幻想めいた真実があるではなく、不動の価値に自ら...