2015-09-24

[]片山ユキオ「花もて語れ」※4巻まで

5巻収録分から週間連載になったらしく、クオリティや中身が別物になってたら困るので、

少なくとも確実に面白かった4巻までの感想を書いておく。

朗読マンガという唯一無二のジャンル

ただ朗読するとか地味なだけでしょと思いきや違った。

ただの吹奏楽マンガと思ってソウルキャッチャーズを読んだときに度肝を抜かれた感じと似ている。

あらすじ。

主人公は幼い頃に両親を失った、雲を見て空想するのが好きな女の子

両親を失ってうまく話せなくなり、周りから浮きがちになるが、

学芸会担当した朗読によって、少し救われる。

時はたち、就職して新社会人となった主人公は、

また昔のようにくじけそうになっているところに朗読と偶然再会し、

まれ朗読の才能で、気づかぬうちに周りと自分自身を救っていく――。

作品の中で扱われる作品実在作品

4巻までだと、

やまなし

花咲

トロッコ

が取り上げられた。

マンガから当然音声はない。

からソウルキャッチャーズと同様、音が核であるはずのジャンルを扱う上での難しさがあるため、

生半可なマンガだと逆に朗読自体コケにすることにつながりかねない。

しか吹奏楽ピアノ等と違って、朗読はひたすら読むだけで絵面も地味になる確率が非常に高い。

そういった高いハードルをしっかりと助走をつけてきっちり飛び越していく、確かな地力のあるマンガだ。

朗読とは、ただ読むだけではなく、解釈表現力によって完成するものであり、

一見シンプルだが奥が深く、簡単そうに見えて難しいことが存分に伝わってくる。

やまなしトロッコをはじめとして、何も知識のない状態で黙読して読み流すだけでは絶対意識しないような読解の視点多種多様呈示され、

すでに知っている物語をより深く味わえる面白さを知ることができる。

朗読という視点を得たことによって、より黙読の読書も奥深くなるという発見すらある。

また、単に朗読ハウツー本にとどまらず、マンガとしての完成度も高い。

超人主人公によって単純に周りが救われる、下手すると勧善懲悪モノになりかねないようなことはない。

主人公自身も、様々な障害葛藤を抱えており、朗読によってそれらと向き合い、少しずつ自己実現していく。

ただそれゆえに、主人公トラウマというか問題ネタが尽きたときの展開のさせ方が心配にはなる。

でもこれだけのものを描ける作者なら、5巻以降もしっかりと中身の濃いもの提供してくれると信じたい。

重箱の隅をつつくと、1巻のマリコとの出会いきっかけは少々無理やりすぎるんじゃないかなとか、

 選ぶ朗読作品とそれによって状況が解決される人間がいつもいるのが都合よすぎるように思えることもないわけじゃないけど、

 物語必然性として許容できるレベルだと思う)

実を言うと、だいぶ前に花咲山の3巻あたりまでを初めて読んだときは、面白いとは思ったがそこまで心にこなかった気がした。

それからだいぶ時間がたって、自分の周りの状況が大きく変わった今改めて読むと、ものすごく心にきて、地味だが静かな感動を覚えて涙が出た。

心の隅の本棚に置いておいて、たまに読み返したいマンガリスト入り。

久しぶりに熱く感想を語ってしまったけど、そうさせる熱量もつマンガだったことをわかっていただけたら幸い。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん