離婚していた母が帰ってきた。
父と別れて5年になるが、毎年お盆の時だけはやってくる。
1年ぶりに再会する父と母はふたりとも嬉しそうで、
会話もはずんでいる。
「なんでこうなったのかなぁ」と、私はこの幸せそうな風景を見て思う。
「弟が生きていたらなぁ……」とつくづく思う。
弟は6年前に交通事故で死んだ。
農道をミニバイクで走っていたところ、飲酒運転の軽トラックにはねられ、
運悪く次の日に亡くなった。
最愛の息子をなくした母は、弟の死をうけいれられず、しばらく自室にひきこもっていた。
父も私も日中は仕事があったので、仕方なく母は家におきざりにしていた。
それがよくなかった。
気がついたら母は酒びたりになっていた。
「タカシがね、またお金が要るって言うのよ、海外に行きたいとかって。ほんと困った子だわ。」
「そうか、苦労をかけるな、すまない。」父は母の相手を続けていた。
「そうだ、あの子はお好み焼きが好物だから、晩御飯はお好み焼きにしましょう。そうしましょう。」
何故か母は仏壇の下をあけ、「お好み焼きをつくる道具」を探し始めた。
「そんなところにしまったかなぁ」と父は天井を見上げて呟いた。
「もう中国のせいで相場がね、もうほんとにめちゃくちゃなのよ。」
私が知らない間に母はトレーダーになっていた。
「そっか、そうだろうな。」父はまだ天井を見上げていた。
それまで私も相手をしてあげようと思う。
いかにも創作臭いんだけど、マザコン?