容赦なく照りつける日射しの下、俺は図書館へと続く道を急いでいた。
休みの日を涼しい図書館で過ごすというのは、我ながら悪くないアイデアだと思ったのだが、こんなことになるとは。
家でゴロゴロしていればよかったと後悔しても、もう遅い。
冷静になれ。焦りは禁物。
心を落ち着かせて図書館との距離間を掴み、肛門の絞り具合、歩く速度を調整する。
こういう時に焦ってしまい、最初からフルパワーで便意を抑え込もうとしたり、全力で走ってしまったりすると失敗する。
最小限度の力で肛門を締め上げ、走るか走らないかの速度を維持するのが重要だ。
大丈夫。オールオーケー。危険状態には違いないが、状況は完全にコントロール下にある。
寄せては引く波のような便意に呼吸をあわせるようにして前進する。
よし、図書館に着いた。
と思った途端、一気に猛烈な便意が襲いかかってきた。
ここからは全ての力を括約筋に集中させる。ゴールは目の前、あとはラストスパートで乗り切れるはずだ。
辺りを見渡し、天井から吊り下げられたトイレのマークを見つける。
よし、行くぞ。
無我夢中で走る。
化粧室のドアを開ける。
駆け込む。
個室のドアを開ける。
ドアを閉める。
ズボンのフックを外しチャックを下げる。
便器の上でズボンを膝まで下ろし、中腰になったところで、それは勢いよく放出された。
どうだ、どうなんだ…?
恐る恐る足元のほうを見ると、全てが見事なまでに便器に収まっていた。
念のためズボンとパンツを確認してみるが、こちらもきれいなままであった。
ふう。やれやれ。後はゆっくりとまだ残っている便を出すとするか。
便器に腰を落ち着けた時、大事なことを思い出した。そういえばこの個室の鍵をかけていないじゃないか。
危ない危ない。誰かが入ってきたら大変だ。
慌てて鍵をかけようとした俺が見たのはピンク色のドアだった。
ま、まさか、ひょっとして…
慌てて便器の上に登り、個室の上からそーっと見渡した化粧室の中に
小便器はなかった。