2014-03-29

初めて死を予感した日

私は夜行バス大好き人間だ。

冒頭の一文で多くの人が察すると思う。

乗ったバスの運転手が寝ていたのである

死と隣り合わせだったあの日を振り返ってみる。

夜行バスに慣れない人は一睡も出来ない場合もあるらしいが、マイスターの私はぐっすり眠ることができる。

しかしあの日は違っていた。

というのもまず、その日の私は昼から大量の酒を飲んでいた。

早めに切り上げたつもりだったが、乗車したころには既に二日酔いの症状が現れていた。

いつもとは違う。気持ち悪くて眠りが浅い。

うたた寝しては起き、うたた寝しては起きを繰り返す。

そして酔いも眠りも覚ますような悪夢現実になる。

夜の3時ごろ、ガタガタガタっとバスが車線を踏む音で目が覚めた。

(ガタガタした車線のことをランブルストリップスと言うらしい、豆知識

運転手の様子が明らかにおかしい。

歌っている。顔を平手打ちするような音が聞こえてくる。

これは数多のバスに乗ってきた私にも初めての経験であった。

大きな車体がふらついている。右に逸れて左に急ハンドルを切ったのがわかる。

瞬時に今現在置かれている状況を理解し、直感した、「こいつヤバイな」と。

それからは生き地獄だった。

「こうやって死亡事故って起きるんだな」

「死んだらニュースになるかな」

前方に座っていたため、恐怖はことさらに大きかった。

時計にチラチラ目をやったが全く針が進んでいない。

やがて4時ごろ、サービスエリアに着いた。

フードコート備え付けのお茶を飲もうとするが、紙コップを持つ手が震えている。

もうここで降りてやろうかと思った。

しかし同じ便に乗っているらしい人たちを見ると、何事もないようにリラックスしている。

後方に座っている人には歌声が聞こえていないのか。

熟睡している人にはふらついているのがわからないのか。

時間いっぱい休憩した後、またバスに乗り込んだ。

もう朝が近づいている。

目的地まであと少しだ。頑張ってくれ。

そう願いながら、バスは再び動き出す・・・

しかサービスエリアを出発してからは例の現象は一つもなかった。

おそらく運転手が変わったのだろう。

私は安堵して爆睡した。

1回も目覚めることはなく、気がついた時には目的地に辿り着いていた。

そして何もなかったかのように(実際何もなかったのだが)解散した。

これが私の体験談

今思えばビビりすぎていただけなのかもしれない。気づいていない人もいたくらいだし。

死亡事故レベル10だとしたらこれはレベル7くらい。言うなれば予備軍クラスか。

「停まりましょう」と言葉をかけようとも思ったが、いかんせん被害が全くなかったので言うのをためらった。

初めて死を予感したというわりには悠長な考えをしていたもんだ。

こうやって体験談を書き出してみると、これは勇者になるべきケースだったと思う。

ちなみにこの1週間後二日酔いの状態で海に潜り、再び死を予感する。

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