絶賛ばかりですが正直な感想を申しますと、「おもしろくなかったけど、何度か観たい映画」というところでした。
批判的な感想をあまり目にしないので、この一週間、絶賛に対して指摘したい部分を時々考えました。それを時間書けずに一発で書きます。荒くてごめんなさい。
・ストーリーに波がない。
「生きねば」と書いてあるポスターや、ボロボロに燃えてしまった後の戦闘機っぽいものと、それを見て呆然と佇む主人公の絵に、
「戦争に揉まれながら、どんな恋や葛藤があるのかな〜!」と思ってしまいますが、はじめからわかってた展開をただ踏まえてるだけな気がしました。
予告編では泣けましたが、本編では泣こうとおもっても、、、、?なかなか泣けない。
とにかく長いです。一緒に行った人は寝てました。最後のユーミンの歌の、長い長いPVみたいでした。
幼少の頃から非凡な存在として描かれていて、そのままです。しかもお坊ちゃま。
人格も優れている主人公がどんな壁を経験して、奮起するドラマなのかと思いましたが、、、右肩上がりのまま、、、右肩上がりにフライ。
これは厳密には違う指摘ですが、菜穂子と再開する避暑地の重要なシーン。
あれも「なんで今は仕事しないの?オフでも飛行機のこと考えてるキャラが何してんの?」と内心思いながらでした。しかも、これも長い。
それを消してくれる説明も無かったような気がします。
・SEが口
これはなんかの朝のニュースでやってたのを着替えながら見たので知ってましたが、どうやらSEのほとんどは口で人が作ってるようです。
でも、それが耳障りなんです。なんの意図があったのか知らないので残念ですが、その意図を知らない私からすると違和感で集中できないのです。
途中から、製作者側が「今回のSEは人の声が作ってるんですよ」とドヤ顔で言ってたらと思うと、それをどうやって論破するか。。。そんな怒りの妄想に集中力がいってしまいました。
・庵野秀明の声
幼少期が終わって、いきなり声が変わります。それで「『ジブリの主人公の声をエヴァ監督の庵野秀明が担当』なんていうニュースを何かで見たが、これか・・・」とその時に思い出しました。
とにかく、びっくりするほどスムースな口調で人間らしさゼロ。10のテンションで話してきたキャラに対して、4くらいのテンションで返す主人公。しかし、相手は自然に10のテンションを保ったまま会話している不自然さ。
例えて言えば、片方は大男が体をうねらせて豪速球を投げているのに、それを受け取る主人公は直立不動でボールをキャッチし、腕だけ動かして投げて緩いボールを返している感じ。その不自然なキャッチボールはラストの一言まで続きます。
製作者の意図としては「理系の人っぽさを出したかった」ということですが。理系独特のドライさってのは違うと思います。
成功に仲間や上司が昂ぶっている時にタバコ吸ってどっか見てたり、菜穂子が王子様アピールしてるのに「晴れてきました」とかいってるだけで理系っぽさは出たと思います。
その点、同じ理系でも今放映中の福山雅治のやつとかは、たしかに理系っぽい感じはします。
百歩譲って、理系な人が抑揚のない声で話すとしましょう。でも、見る側としては少なくとも僕は違和感で集中できないんですね。不自然なコミュニケーションを意図的に作ってドヤ顔してる制作側に本当にいらっとした。
ヒロインが嫁入りするシーンで、嫁が高橋留美子の漫画のキャラにしか見えない。
そもそも、結核の嫁が病院抜けだして来て嫁入りを済ませるっていうのはとてもむずかしいと思う。
ただの美談ですよね。ちび上司が普段と違ってお祝いしてる方が胸を打たれました。
これは単純すぐり僕の勘ぐりでもあるのですが、いちいち飛行機とか鯖の骨とかに「美しい・・・」とかいうところに、デザインに対して強いこだわりを思っていたジョブズを投影させてたのかなって思っちゃいました。
シンプルに美しい見た目=優れてる、という考え方を持っている二郎アピールが多いんですよね。
もしジブリもジョブズに敬意を表すなら、普通に「敬意あります」とか言えばいいんであって、作品にわざとらしく言わなくてもいいんじゃないでしょうか。
とにかくうるさいんですよね。忘れた頃に出てくる。「また!?そんな(にデザイン好き)なの?」みたいな
でも、まあ、ジョブズが話題になる前からsimple is the best的な価値観はありましたので、あんまり強気で言えることじゃないです。
以上を踏まえて「風立ちぬ、傑作!」みたいな空気は、なんかつっこみたくなります。
「ジブリがやったことならすべて良し!たとえ理解できなくても良しと言う!白も黒と言えば諸手を上げて黒に賛成」みたいなダサい空気です。
確かにジブリの過去作は素晴らしかったです。でも、今作はどうでしょう。ほんとうにそうおもってますか?と。いや、過去作も実は「良さげ」雰囲気だけの作品だったのかも… ?
なんちゃって、それは言いすぎな気がしますが、否定なんかしたら自分がバカっぽい立場になるって思ってませんか?
僕もそうゆうのが怖いのですが、これを書いた反響とかを楽しみたくてネットに書きました。
以上です。
ちなみに、個人的に一番良かったシーンは、幼少期の夢の中で雑誌に出てた有名なイタリアの設計士と出会い、刺激をうけるところです。
あの夢の中には、生まれや、能力や、物理法則すらも超越した、ピュアな(実現したい世界としての)夢だけでした。
そしてあの空間にいる間は、「自分のヴィジョンは世界の偉人と共有できる程のものなんだ」という高揚感は、とてもこんなことを言うのは憚られますが、僭越ながら共感できました。
色々文句もありましたが、終わってみると、確かになんだかスッキリした映画でした。
それが何かは、わかりません。それが不思議な魅力でしょう。
自分はジブリと育ってきたような年代で、現在は「アラサーw」と自虐を言う時期に入った年代です。
「風立ちぬ」は今回の作品で初めてです。
一番好きなジブリ映画は「もののけ姫」。理由は興奮するからで、メッセージ性などはあまり気になりませんでした。
一番心躍った映画は「バトルシップ」。一番泣いたのは「アイ・アム・サム」。という単純な人間です。