私はある朝方に遠くの方で鳴いている鳥の声に重たい目を擦り上げられるようにして、起きた。昨晩のウイスキーの香りが染み込んだ木の家で、妻がベーコンを焼いている音がする。
買ったばかりのシガーを開け、ビニールを取り、白い整列した一つの断面から
一本のマスターピースを抜き取る。
3時間の作業に成ることを見通し、マスターピースを一本吸うと、一面に枯れ茂った芝を切り始めた。やれやれ。
ほんの少しの作業をすると、曇天が色を変え、季節の変わり目らしいせわしない動きをはじめた。淹れたコーヒーを広げ、クロックスの靴を投げ出して、寝始めた。
妻はアイロンを掛けると、ブーツを履き、新しい赤いiPodでビートルズのドイツサンバ部作3番章を聞きながら、近くのラウンドリーに出かけた。
大きな蛇行を打った川の上を見上げると、ドイツの運河のような黄色い水が流れていた。
私は、コーヒーを飲み、喉を焦がしながら、その光景を見ていた。
まるで、戦場で一人のロシア兵が鉄のカメラで撮ったような、争いの中で一つだけ凍りついたような場面であった。
大きな大きな木の群れに囲まれて、赤く艶やかな桃がドンブラーコーコーコーと流れてくるではないか。
秋の季節の成果であるのか、その桃は果実を超えた匂いを放ち、抑揚のあるリズムでやはりドンブラー、ドンブラッハー、と流れに乗って、流れてきている。