「人間不信に陥るよ」。それまで不平不満も言わず、まじめに働いていたフリーのデザイナーがある時、急に態度を変える。
デザイン業界における労使トラブルでよく耳にする話だ。決して労働環境が整備されているとはいえない業界にあって、こうしたトラブルはいま、現場で頻繁に起きている。
今回、当事者となってしまった東京都内の事業者も、「話に聞いていたが、まさか自分がという思いだ」と打ち明ける。
「不平不満も言わず、まじめに働くいいやつだ」。社長が最初に受けた印象で、何事もなく半年が過ぎようとしていたが、それまで何も言わなかったデザイナーが報酬を貰いたいと申し出てきた。
有償のデザイナーを用意するだけの余裕はない同社にとって、気持ちばかりとはいえ報酬を取られるのは痛手だ。
社長は状況を説明した上で、苦肉の策として、会社の印刷物にデザイナーの名前を記入することを許可し「これが仕事につながれば良いだろう」と了承を得ようとした。
一時はそれでしのげたが、そのデザイナーの態度は徐々に悪化。何かといえば不平不満を口にする。見かねた同社長が注意しても、態度は変わらない。
対応に苦慮していた時、新たな問題が起きる。今までの未払報酬の支払いを要求してきたのだ。払えないと諭すと、今度は弁護士を伴って発注元へ駆け込んだ。
同業大手の仕事をしていた同社は、発注元からその事実を聞かされ慌てた。
後でわかったことだが、デザイナーは外注契約を結んでから、すべての発注に請求書を作り経理に送っていたのだという。確信犯だった。
デザイン費の請求は100万円に上ったが、契約書の不備を理由に妥協案を示し、10分の一の10万円で事なきを得たという。
しかし、問題はそれだけで終わらなかった。契約していたフリーのデザイナーが次々と報酬を請求しだしたのだ。仕事は途中で色々仕様が変わるし、まともに発注できるわけがない。
トラブルが無いように、契約などに詳しくないフリーのデザイナーと契約をしていただけに、「仕事は頼んだが請求書が送られて来るのは納得行かない」のが実情だ。
だが、フリーのデザイナーは、毎年次々と生まれてくるため、「平気で請求書を送って来るようなデザイナーはすぐ切れば良い。人間不信に陥らないうちに…」。
最近は、耳障りの良い「プロボノ」という言葉を使えばホイホイ無償でデザインしてくれる馬鹿が釣れることに気がついた。
タイトルを見て報酬を求めるデザイナーが人間不信に陥ったのかと思ったら逆だった(一応お約束としていってみた)