2012-09-11

今日池田信夫を考える

今日池田信夫が「TVタックル」に出演していた。

多くの人は、彼の発言が奇異に聞こえたかもしれない。

彼の考えている事は、いい意味でも悪い意味でも「感情を投げ捨て、全て理論で考えている」のであり、そういう意味でなかなか分かりにくい。

では、ちょっと、彼の頭の中を覗いてみれないだろうか?

例えば、番組内で「東日本大震災において、福島原発事故は、(被害が少ない)マイナー事故である」と発言した。

普通感情で言えば、とてもそのように思わないだろう。

番組内でも、その発言の直後、一斉に反撃にあっていた。

何故、彼はこのような発言をしたのであろうか。

東日本大震災での被害者は約1万6千名、行方不明者は3千名である

非常に多くの方が亡くなられた。

御存知の通り、この多くの原因は「津波である

一方、福島原発事故被害者の数はどうだろうか?

今回の事故で、直接被曝し致死量に至った住民はいない。

しかし、「避難して多くの人が犠牲になったではないか!」というご意見や「長期的被曝健康被害が出るではないか」というご指摘を頂くであろう。

前者については、彼もそのような被害者が居られる事は、理解している。

http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/07/600.php

ただ、彼はこの状況を「過剰避難による2次災害」と言っている。

これは「重篤な患者を移動させるリスクを伴ってまで、避難させる必要があったのか?」という事を言っている。

まり、「放射線量の高い現地に留まるリスクと、患者を移動させるリスクどちらが高いのか?」という問題を考える事になる。

これは後者の長期的な健康被害と同じで、「致死量に至らない放射線の被害や人体への影響はどうなのか?」という問題に直面する。

放射能のない世界」を望まれる声を聞いたりするが、放射能はこの地球上で生きている人間が全員ずっと浴びている。

人体が被曝する線源(放射能の源)は様々であるが、自然放射能と呼ばれ、地球上の誰でも平均で年間約2.4ミリシーベルト放射能を浴びている。

また、自然放射能の強さには、地域特性があり、非常に高い地域存在し、そこにも人が住んでいたりする。

例えば、インド ケララ州では年間1.8~35ミリシーベルトを体に受けてしまうし、イラン ラムサールにいたっては、年間0.6~149ミリシーベルト被曝してしまう。

では、このような地域では、放射能によって生命にどのような影響を受けているのであろうか?

放射能を沢山浴びているから、寿命が短いのであろうか?

放射能は、通常の「毒」のような化学物質ではなく、「エネルギーのかたまりである

このエネルギーを人体が浴びると、細胞内のDNAが傷つき異常な細胞生まれる。

この異常な細胞が増えると「ガン」と呼ばれる病気になる。

このようにして、被曝による大きな影響として、まず「ガンの発症」が挙げられる。

http://www.rerf.or.jp/general/qa/qa5.html

では、「ガンになるのは、全て放射能の影響か?」というと、そうではない。

DNAは、放射能による被曝以外でも傷つき、ガンを発症させる。

この原因となる物質が、いわゆる「発がん物質である

まり、世の中で、ある一定の方がガンでなくなるわけであるが、そこには放射能も含めた様々な要因が含まれている。

このような事を踏まえて、「自然放射能が高い地域でガンで亡くなる人が多いか?」という調査が行われている。

例えば、以下の様な研究成果が出ている。

http://criepi.denken.or.jp/research/topics/pdf/201110vol8.pdf

(P.5 高自然放射線地域住民の疫学調査

この論文では、平均14.4ミリシーベルトでは発がんリスクは見つからなかった、という結論に至っている。

これは一例であるが、低線量被曝(年間100ミリシーベルト以下)による明確な健康被害は見つかっていない状況である

気をつけなればいけないのが、「低線量で多くの被害が出る」と言っている論文は、なんらかの「仮定」に基づく「試算/シュミレーション」であって、実際にそれだけの人が被害に遇っている、という事実を述べているのではないという事である

今、問題にしているのは、どのような「仮定」が正しいのだろうか、という議論で、どんなシミュレーションでも、その「仮定」が間違っていれば、間違った結果になる。

そういう意味で、シュミレーションに関する研究結果は、冷静に読む必要がある。

元の問題に戻って、福島原発事故による被災地放射線量がどの程度か分かれば、上のような高自然放射線地域研究結果などと比較ができないだろうか?

ここに、線量の分布が公表されている。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo11/siryo1.pdf

低線量被曝(年間100ミリシーベルト)では健康被害が無いとすると、既にこのレベルの高線量の地域から人々は退避しておられるので、今後、放射能で顕著な健康被害が出る可能性は非常に低く、長期的な健康被害は見つからない可能性が高い。

従って、事故の際に避難することによって失われた約600名の命が福島原発事故による犠牲という事になる。

また、この犠牲も、低線量被曝による影響(が極めて少ない事)を考慮する事によって、大幅に避難地域を縮小したり、長距離移動を避け屋内退避に留めることによって生きながらえれた人が多く居た可能性が高い。

これらの事を踏まえて、原発問題に多くの費用を投じるよりも、2万人の方が亡くなった津波の対策を効率良く進める方がより多くの命を救える、というのが池田信夫の言いたかった事ではないだろうか?

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん