彼女は24歳という年齢にもかかわらず完璧なまでのニンフェットだった、
紫の混じったブラウン色だったが
自分では体を直接的に売ることはしなかった。
カジノ勤めをしていたのは2つの理由がある。
ブラックジャックが大好きで、毎日でも遊びたいが
怖かったというのが1つ。
ウエイトレスなら警察の手入れにあっても逮捕されない、と言われていた。
もう1つは今でも呆れてしまうのだけれど、
強くてきれいで賢い人間になったような気がした。
弱い男の人を翻弄するニンフェットなんて最高だ。
でもそんな春がいつまでも続くわけがない。
ブラックジャックはカジノゲームの中で唯一カジノ側の利益が約束されていない。
バカラハウスだなんてつまらない名前に“アミューズメントカジノ”は
名前を変えていった。
札が配られた瞬間に決まっている勝負なんて興味ないと
朝に何時間でも勝負をした。レートは変えたけど、
客が来ない明け方にプレイ台に突っ伏して寝ている姿も
裏方でつまみのナッツをひたすら砕いている姿も
おおよそアリスらしくない姿をたくさん見ている
ディーラーはそれでもいつでも優しかった。
朝にいつでもブラックジャックに付き合ってくれた。
その代わりたまに彼とはセックスをした。
客のための隠し部屋、ウエイトレスが体を売るための部屋で
エプロンがずるずると肩からずり落ちていくのを
面倒くさそうに退けるしぐさにたまらなく欲情した。
エプロンをつけていなきゃいけない夜と
そんなものが邪魔になる朝。
ルーレット宅の上で足を広げて、ホイールの持ち手の上に身を沈めて遊ぶ。
つぶれて消えてしまった、よくあることだ。
その女の子は30歳になり、アニメ製作会社のオタクの男性と結婚した。
働いているような気分になる。
なんだか夢のような時代だったなと
そしてまだ夢の中にいるようだと
今でもどこかの街で回っているのだろうか。
回っているといいな、と彼女は思う。
あんな美しい光景がこの国からなくなったら、
もう生きていけないような気さえするのだ。