2010-06-02

ヒキコモリだから毎日窓ばっか見てる

「昔はその部屋から、太陽が昇るのを数えていたね」

「もう数えるのはやめたんだ」

「いくつまで数えていたんだね」

「千までは覚えているよ」

「偉いね、千まで数えたんだ。それなのにやめてしまった?」

「うん、最近ひどく眠くて」

「それでも街を眺めるのは、忙しそうに歩く人達が羨ましい?」

「何もわからないよ、考えたくないんだ」

「利口だよ。そうやって逃避すれば焦燥に駆られることもない」

「その、ひどく眠いんだ。もう行ってほしい」

「行ってほしい? どこへ?」

「知らないよ。君は誰?」

「君はスタートするべきだと、思っているんじゃないのかい?」

「わからないけど、ぼくはこれでいいんだ」

「君は不幸でもある。君と引換に自由を失った両親ですら、君を急かさないんだ」

「両親は……」

「両親がいけなかった!? そうだよねぇ君を育てたのも両親だもの」

「そうじゃない」

「だから、君がお手をしなくてもご飯をくれるんだね」

「両親が悪いなんて」

「そうじゃないんだ? じゃあ君がいけなかった?」

「……ぼくはこれでいいんだ、どうせ」

「そう! そうやって自分を出来ないヤツに置けば正当化される! 賢い子だ! 犬に銀行マンは出来ない!!」

「眠らなきゃいけないんだ。ママに叱られるよ」

「叱られないよ。君は知ってるはずだ」

「それでも、眠いんだ」

「それは良い! 妄想にも自慰にも飽きたら夢を見るのが良い!」

おやすみなさい」

「それで、夢の中の君は?」

学校にいるよ」

「十年も昔だ! 学生! 希望も! 時間だってある! あれ、でもおかしいな、君の夢は真っ暗だね」

「それは」

「そう、また机に突っ伏しているんだ。もっと、もっと、昔が良かったかな?」

「関係ないよ、ぼくは眠っているんだ」

「そうかこの頃か! この頃からもうずっと、眠っている格好をすれば、逃げられると思ってたんだ? 学んだんだ? 偉いなぁ」

「……」

「──あれ? でも必死に耳を傾けてる? 気になるんだ!! 仲間に入れて欲しいんだ!!」

「じゃあほら、顔を上げてごらんよ」

「これは夢なんだ。君の思うようにうまくいくんだ」

「ほら、女の子がこっちを見てるよ。いいなぁ、君を見て笑ってるよ。君とおしゃべりしたいのかな?」

「あれぇ、でもここまでみたいだ。残念だなぁ。時間なんだ」

「眼を覚ませば、君はまた腐った畳の上で腹をだしてるんだ」

「そして、なぜだか涙が出てる」

「少しはスタートする気も起こるのかな?」

「でもどうせ、妄想自慰と空白を繰り返す!」

「飽きたら机に突っ伏すようにまた眠るんだ! 毛布にくるまると尚良いぞ! いいなぁ! 羨ましいなあ!」

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