「あの頃は良かったよ。
あたしがステージに出ると客はみんな驚いた顔をするのさ。
こっちをカタワ女って馬鹿にしてんのさ。
あたしがそれに構わず踊ってみせると、途端に拍手喝采でおひねりが飛び交うんだ。
それがおかしくって昔は毎日げらげら笑って、仲間たちとも上手くやってたよ。
なによりあたしは自分で食い扶持を稼いで、そんな自分に誇りを持って生きてられたんだ。
それが今じゃどうだい。法律なんてものが出来て奇形の見世物が禁じられて、
あたしらみたいなまともな仕事が出来ない人間は、毎日やることもなく、
ただ他人のお情けで金を貰って生きていくしかないのさ。
それなのにあいかわらずこっちをニヤニヤ見るやつらは減りゃしない。」