「ほら、みてみろよマック。こいつ、エスプレッソが4ドルなんだぜ!?」
「マジで?ダンキン。このご時世に!?マジうけんですけどwww」
きつく香る、コーヒー豆の倉庫で僕はダンキンとマックに足で踏み付けられていた。
朝丁寧にアイロンをかけた緑の制服は既に何度も暴行を受けたせいで、薄汚れていた。
「スタバちゃん、今どんな気持ち?君の街のシアトルで俺らに負ける気分はさぁ!」
ダンキンは僕をよりいっそう強く蹴飛ばす。
ガムをくちゃくちゃ噛みながらシェイクを飲み、俺を見下すのは金髪のマックだ。
「お前が悪いんだぞ。スタバ。ブランド戦略だか何だか知らないが、俺らにたてつくから」
…僕の、なにが、悪かったというのだ。
ただ僕は美味しいコーヒーをオシャレに飲みたかっただけなのだ。油臭くて、高校生がたむろっていて、席に座れない店でコーヒーを飲むのではなく…
そこまで考えたところでマックに唾を吐かれた。
僕の、美しい世界は一瞬にして崩壊した。
「やめてやめてやめてやめてやめて…」
僕は泣きながら叫ぶ。もうやめて。僕が悪かった。
だからそんな風に僕の、僕自身のセイレーンを汚さないで。
「そんなこと言われてもなぁ?」
「スタバチャンは変わろうとしないじゃない」
「…値下げをします」
と叫んでいた。
「はぁ?」
二人はぽかーんと僕を見つめる。
「30%割引を、します」
「ふざけんなよぉおおスタバああああっ」