私には、この状況を、ディスプレイの端から涙が垂れるがごとく記すだけの、気力も文才もありません。
つまりはお約束のネーミングです。御笑覧ください。
スーパーの籠にそれだけを入れて、レジ列に並ぶスーツ姿の男に出くわして、
ゆっくりと息が詰まった。
迷う余裕すら、きっと男にはなかったのだろうか。
あのひとはぼくよりずっと年上だ。
そして、例のくだらない悪戯があるまで、いつかこっこが欲しいね、そう漏らしていた。
三十路負け犬なんて言葉をあざ笑うように、あのひとは変化に跳んだ二十代を送った。
そして三十を越えても、その目線をそらさないでいる。これからも、きっと。
でも、その中ですこし、落ち着きが欲しいのかもしれない。
それが分かっていて、期待を受けて、応えないでいる私がいる。
私も好き勝手、泥と飴を、舐めてきた。
季節は二度、移り変わった。
この期に及んでも、それでもあのひとは期待をしていると知っている。
ぶつけてくるものがどれだけ負に満ちていても、そこに望みがなければ、物はつぶやくまい。
日常に流れる音楽。深く潜り込むための本。少ない親友人。そしてあのひと。
欲しいものが、もっとあっただろうか。
もう忘れてしまったような、胸奥に詰まって息を苦しくさせているような。