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2024-10-13

名作といわれるドラマおしんをみたので感想を書く その4

https://anond.hatelabo.jp/20241010224911から続く

おしん物語根底を流れているのが、「恩」であり「仁義であるということをこれまでの感想でも書いてきた。おしんイコール辛抱する精神というイメージが広く流布するなか、金儲けに走った息子の根性を叩き直すために、田倉家を滅ぼしてでもライバル会社に利する行動に出た、という物語ハイライトは、意外にもあまり注目されていない。私も正直なところ、全話を通してみるまで知らなかった。

今回は、物語類型としての「おしん」をみてみたい。

流浪するおしん股旅物としての評価

おしんは一代記ものとしては、タイムスケールがとても長い。おしん1901年昭和天皇と同年に生まれた設定である

そしておしんが生きた少女時代から後期高齢者の83歳になった1984年まで、それぞれの時代があまりにも違い過ぎるので、1983年の田倉家のシーンから明治回想シーン時代を一気に2世代くらい遡るときタイムトリップ感が半端ない

1983年おしんが息子・仁を裏切って、並木商店への説得どころか、積極的大手スーパーへの並木土地の売却を進めてくれとお願いした背景には、並木商店隠居の大旦那並木浩太に対する並々ならぬ恩があるからである

それは、どのような恩だったのか。おしんは息子たちには何も過去を語ってこなかったので、仁には知る由もなかった。そもそも並木浩太とは何者なのか。

おしんも誤解されるのが嫌でそれまで息子には一度も語ってこなかった。しかし、前年の1982年17号店進出を知ったおしんが息子の行動を阻止しようとしたとき、仁は、それが母の初恋の人への配慮であることを悟る。そして、仁はいう。商売ってそういうものじゃない、「母さん、みっともないよ。」と。今風にいえばいい歳してエモいことを言い出してんじゃねえよと思われたのであろう。案の上、誤解されてしまったおしんであったが、なすすべなく工事は進み、ついに開店当日を迎える。おしんはこれまでの人生の回顧の旅に出るのである

おしんと人の縁

おしんと浩太のいきさつをかいつまんでかくのも、がっつり書くのもいずれもけっこうしんどいしかし、今回のテーマの「股旅物」がわかるように、ややガッツリ目に書いておこう。股旅とは、大正時代に生み出された物語類型ひとつで、一宿一飯の義理人情に従って流浪する物語であり、多くは渡世人やくざなどが主人公である股旅物の元祖長谷川伸は、その後の日本小説戯曲、そして映画テレビドラマに至るまで多大な影響を与えた人物である。「飢餓海峡」で知られる水上勉は、長谷川伸の「夜もすがら検校」を読んで作家を志したことはよく知られている。「夜もすがら検校」を発表したのは1924年である明治が遠く過ぎさり、大衆大正デモクラシー自由への過大な期待から人々が少しずつ醒め始め、もう一度生き方を見直そうしていた時代である

2000年代になると、日本映画ドラマの潮流は変わり、義理人情といったテーマ陳腐ものとして忘れ去られてゆく。20世紀末までのドラマでいえば、「北の国から」が長谷川伸的な一宿一飯の義理人情世界観でつくられた恐らく最後ドラマだろう。吹雪の中を助けに来る馬、泥付きの一万円札などに表現される世界は、まさに長谷川伸系譜なのである

おしん回想シーンだけをみると、浪花節にあふれた、まごうことな股旅であるしかし、おしん物語面白いところは、浪花節陳腐化し、古臭いものになってしまった現代1980年代)と交差している点である

キーワード加賀屋への恩】

並木浩太とおしん最初出会いは、おしん16歳、山形酒田の米問屋加賀屋奉公へ来てから7年が経った頃だ。おしんは、加賀屋の跡取りの長女・八代加代と姉妹同然に育ちながらも、大奥様・八代くにからは、肉親の孫娘・加代よりも商売イロハから茶道裁縫など良家の子女としての教養を徹底的に教え込まれていた。このときにの指導によって身に着けたものの考え方や教養が、のちのおしん人生で役に立つのである。加代はというと、将来は良家から婿をもらって加賀屋をどうせ継がさせられる自分のつまらない運命うんざりしていた。絵画が好きだった加代は、東京で別の”自由”な人生があるのではと夢をみる少女だった。そんな折、農民運動活動家・浩太と出会った。酒田訪問した際、官憲の目を逃れるためにおしんとお加代に助けを求めたのが最初出会いであるおしんとお加代は同時に、浩太に恋心をもってしまう。大正デモクラシー時代だった。インテリかぶれした加代は平塚雷鳥の本を手元におき、人形の家を著したイプセンなどに憧れを抱いていた。当時、大衆のなかで勃興していた人権運動先進的だと中身もわからず憧れていたのである農民運動、カッコいい!加代は浩太の活動ロマンを感じて恋に落ちてしまった。一方、おしんは、土地を持たない小作農民の自立を助けたい、という浩太の純粋な思いに心を打たれていた。おしん小作の娘であった。小林綾子が主演した「おしん少女編」では、おしんの母・ふじが冬の川に下半身を沈めて妊娠中絶を図ったり、小作農民の悲哀がこれでもかというくらい暗く描かれていた。そしておしんは冬の川に入った母の姿をみて、6歳で材木問屋奉公へ行く決心をしたのであるいかだに乗って、母ちゃんと叫ぶ、有名なシーンのアレである

ともあれ、加代とおしんは同時に同じ男性に恋をした。そしておおらかで情熱的な性格の加代は恋心を隠すことができず、おしんに打ち明けていた。そしてやがて加賀屋の跡取り娘でありながら、何もかも捨てて浩太へ会いに東京家出してしまう。しかし、おしんは、奉公先の跡取り娘であるお加代様の恋を大切に思い、自分の思いはそっと封印した。一方の浩太は、東京に出てきた加代の猛烈な求愛を受け止めつつ(東京で加代と同棲までした)、本心最初からおしんが好きだったのである

おしんは加代の家出理由加賀屋に伝えることが忍びなく、おしん加賀屋から暇をもらって帰郷する。帰郷したおしんを待っていたのは、おしん女郎部屋へ売り飛ばそうとする父・作造と口利きの男であった。さら実家で目にしたのは、奉公先の製紙工場の過重労働健康を害し、肺結核で放り出され、今や死を目前にした姉・はるの姿であった。いまわの際に、はるは女衒に騙されそうになっているおしんを救うべく、自分の夢が髪結いになることだったことをおしんに告げ、東京の知人の髪結い師匠長谷川たかの住所を訪ねるように、伝えて息絶えた。

一方、加代は、浩太の心がおしんしか向いていないことを悟り、浩太のいない東京を去り、加賀屋を継いで見合い結婚する。

キーワード日本髪結いのおたかへの恩】

こうして、はる姉ちゃんが叶えなかった夢を託されたおしん東京へ出た。女郎部屋を売り飛ばそうとした父のいる故郷に心を残すものはなかった。髪結い師匠たかは、江戸時代から続く髪結いの昔気質職業観を持った女性だった。一人前になるための6~7年の下積みの苦労は当然であり、弟子には甘えを許さなかった。

しかし、大正という時代は、江戸から明治まで続いてきた日本髪の伝統の衰退期であった。大正浪漫とか大正モダンと言われる時代が到来しており、洋髪が東京流行し始めていた。おしんが修業している3年間の間に大きく時代が変わりつつあったのである

大衆身分から解放され、より自由髪型を求めるようになっていた。髪型をみれば、人妻なのかそうでないのか、はたまた、その人の職業身分がわかる、という時代は終わりつつあった。弟子入りなんてせず洋髪の専門学校をでて、理髪を仕事にする時代がきていた。おしんには洋髪のセンスがあった。たかおしん独立をすすめる。たかはいう。「昔は厳しかったんですよ。6年も7年も修業してやっと一人前になったら、それからまた、お礼奉公をして。10年近くもただ働きをして覚えたもんなんですよ。そんなことは今は通んなくなっちまったけど。やっぱりご時世ってもんですかね」。これは紆余曲折を経ておしんたかの元から独立し、その後、客先で出会った男性・田倉竜三と結婚挨拶たかを訪れたとき言葉である。その時、5人いたたか弟子はついにたった一人だけになっていた。

田倉商店を竜三の妻として支えるようになったおしんであったが、商売は順風ではなかった。おしん夫婦を陰で支えていたのはたかであった。田倉の経営が傾くと、おしんたかを訪れ、髪結いをして夫を支えた。たかもまた、洋髪の時代おしんの才覚を必要としていた。客商売は人の縁、ひととのつながりを大切にすることだと心に刻んだのはこの頃である

一方、田倉商店開店休業状態に陥るほど経営悪化していたが、おしん髪結いで稼いでいたので竜三はプライドを傷つけられ、すっかりおしんが稼ぎ出した金で遊び歩くようになってしまった。師匠たか相談すると別れちまえという。「ダメな男はどこまでいったってダメなんだよ」とすっぱり切り捨てるが、おしんは亭主をダメにしたのは自分だとと気が付いた。夫の更生のために妻の自分は黙って夫についていく姿勢を示すことを決意し、長谷川洋髪をやめることをたかに申し出る。稼ぎ頭のおしんに辞められるのはたかにとってもつらいが、受け入れる。やがて蓄えもつき、明日食べるコメもないどん底におちて初めて竜三は再起を決意する。しばらくは順調に田倉商店再生が進んで、おしん洋裁の才能も手伝って、田倉は子供服店を開店することになった。しかし、その直後、関東大震災おしん夫婦の夢を完膚なきまでに打ち砕いてしまうのである工場火災で焼かれ、絶望した竜三は「佐賀ゆっくり休みたかおしん佐賀はいいとこばい。。。」といって佐賀への帰郷の心を固める。竜三は大地主の三男坊なのである。こうしておしんにとって地獄佐賀編がスタートすることになった。

さて、佐賀に三男の嫁として入ったおしんを待ち構えていたのは、姑による徹底的な虐待だった。数か月もすると、おしん佐賀地獄から脱出を心ひそかに誓い、東京師匠たかのもとに、東京に戻りたいと手紙を書くのであるたかの元にいけば助かる、自分の腕一本で生きていると信じた。必死の決意で脱出し、やっと髪結いを再開しようとするも、さらなる不幸がおしん絶望に突き落とす。佐賀で夫に振るわれた暴力が原因で、右手の神経に麻痺が残ってしまっていた。髪結いを諦めざるを得なくなった。

こうしておしん流転の人生が始まる。屋台出店からまり故郷山形酒田と流れ流れ、ついに浩太の紹介で三重伊勢の魚の行商に落ち着き先を見出すのである佐賀に残った夫といつかは一緒になれると信じて手紙を書き続けるのである

キーワード:浩太の恩】

浩太の実家貴族院議員の父を持つ、太い実家だと先に書いた。しかし、浩太にとって本当のやすらぎのふるさとは、おばの伊勢実家網元のひさの家であった。浩太は、流浪人生を送るおしんを見かねて、伊勢網元をやっているおばのところに下宿し、行商を勧めるのである。これまで米問屋での奉公に始まり、ラシャ問屋子供服洋裁、洋髪・日本髪、農家の嫁地獄酒田の飯屋をやってきたおしんめし加賀屋は加代とおしんが切り盛りし、おしんにとって加代の元気な姿をみた最後の思い出となった。その職業遍歴に今度は魚売りが加わることになった。

伊勢に来て、笑顔を取り戻したおしん。竜三もおしん魚屋をやる決意をしてくれ、おしん人生好転し始めていた。

一方、加代の人生は、暗転した。加賀屋本体が夫の先物取引の失敗で負債を抱え倒産した挙句、夫は自殺してしまう。八代家の両親は過労で衰弱、入院費を工面するために加代は借金のかたに売春宿に沈められてしまう。両親は相次いで亡くなり、生まれたばかりの希望を抱えた加代をみて、おしんは救出を誓うが、借金の額に手が出せなかった。加代は翌日酒を煽って死んでしまった。希望は田倉で引き取ることにし、加賀屋の再興を果たしたい思いから、養子にはせず、八代苗字も変えなかった。

一方、浩太は長く続けてきた農民運動に行き詰っていた。治安維持法により、弾圧が厳しくなり、ついに6年間も投獄され、苛烈拷問の末、転向を迫られた。敗北者となった浩太は、心身の傷をいやすために伊勢のおばのところに帰るのである。すっかり引きこもってしまい、おしんとも口を聞こうとしなかった。やがて、浩太は実家の縁談に応じて、並木家へ婿入りすることになって静かな人生を送るのである。やがて少しずつおしんとも再び心を開くようになるまで十数年を要した。

田倉家では、雄、次男の仁、そして希望がすくすくと育っていった。雄は戦争で亡くなるが、戦後も仁と希望兄弟のように母おしん魚屋を支えていた。大人になった仁が商才を発揮する一方で、希望商売に向いていない自分を見つめ直し、自己実現のために陶芸の道を歩みだす。

屈折10年、陶芸師匠の元で修業した希望がようやく独り立ちできる時期が来た。そのときに、希望のための釜・新居の支援をしたのは浩太である。お加代さんとの縁を思い出してのことである。浩太は、折に触れて田倉家のおしんを見守るように生きていた。おしんセルフサービスの店に挑戦するときも、銀行からの借り入れにあたって、浩太は並木の自宅を抵当にいれてくれたこともあった。

股旅物を取り込んだ現代劇~義理人情は古臭い観念かという現代人への問いか

さて、長いことおしんの半生を振り返ってきたが、一旦冒頭の仁のセリフ1983年の場面)に戻りたい。

仁が17号店の出店を並木商店の近くに計画していることを知っておしんが反対したときのことである初恋のひとに迷惑がかかる?「母さん、みっともないよ。」というのが仁の反応であった。しかし、もし仁が母おしんの半生をもう少し知っていればそんな言い方はなかっただろう。おしんは人の恩に深く支えられて生きてきたのである。田倉スーパーの出発点となったセルフサービスの店にしても浩太の支援があってこそであった。

ドラマ構成として興味深いのは、おしんの半生を、徹底的に(一年間のドラマの大半部分を費やして)一宿一飯の義理人情で「世話物」的に(つまり当時の生活感覚として)描いておきながら、おしん戦後現代にいたる高度経済成長おしん自身義理人情を忘れてしまたことに気が付く、というメタで重層的な構成であるおしんにしても、商売は食うか食われるかだ、という厳しい姿勢戦後を突っ走り、16号店までたのくらスーパー事業拡大させてきた戦犯なのである。それが今になって17号店は昔に世話になった人に迷惑がかかるから反対、はない。突然反対し始めた母を見た1983年の仁の目からは、義理人情なんて古臭いものだという感覚であり、母の物語は「世話物」ではなく完全に「時代物」なのである。大切なものを置き忘れてしまった気がしたおしん問題17号店開店当日、失踪する。この世話物時代物が交差する、ところもドラマおしんの魅力である

2024-10-12

パロディじゃないオリジナルネタ面白い作品

「あーこれはあの作品のあの描写のパロね」とか「SNS話題になってた例の騒動元ネタね」みたいな、知ってる人がニヤって出来るのもまあおもろいけど

ゼロからイチを生み出した」ようなネタが多めでなおかつおもろい作品ってなんかある?

「厳密な意味ゼロイチは不可能」とか「ギリシャ戯曲にすべての元ネタが」とかそういうのはいいから、あくまゼロイチっぽい雰囲気を感じ取れるくらいのでええからそういうやつが知りたい。

2024-10-03

anond:20241003021349

12月6日 オルガニスト 山之口洋 小説10

12月20日 辰のお年頃 藤井青銅 オリジナル 全5回

2000年代

編集

2000年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月31日 マジックタイム 二木美希子 他 オリジナル10

2月14日 小惑星美術館 寮美千子 小説10

2月28日 エデン2185 竹宮恵子 漫画10

3月13日 これは王国のかぎ 荻原規子 小説 全15回

4月3日 愛のふりかけ 草上仁 小説10

4月17日 バッテリー あさのあつこ 小説10

5月15日 エンジェル 石田衣良 小説10

5月29日 二の悲劇 法月綸太郎 小説10

8月7日 封神演義 第3部 易姓革命 訳:安能務 古典20

10月2日 踊る21世紀 藤井青銅 オリジナル10

10月16日 不思議旅行代理店 今井雅子オリジナル10

10月30日 イカロス誕生日 小川一水 小説10

12月18日 2001年巳年の旅 藤井青銅 オリジナル 全5回

2001年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

2月6日 5DROPS 橋本信之 他 オリジナル10

2月19日 おいしいコーヒーのいれ方 V〜緑の午後〜 村山由佳 小説10

3月6日 ジャガーになった男 佐藤賢一 小説10

3月19日 645〜大化の改新青春記〜 ウォーリー木下 オリジナル10

4月2日 ダブル・キャスト 高畑京一郎 小説10

4月16日 見習い魔女にご用心 ランドオーヴァーPart5 テリー・ブルックス 海外小説10

5月14日 イーシャの舟 岩本隆雄 小説10

5月28日 仮想騎士 斉藤直子 小説10

7月9日 踊る21世紀 Part2 藤井青銅 オリジナル 全5回

7月16日 不思議博物館 原田裕文 他 オリジナル 全15回

9月3日 窓辺には夜の歌 田中芳樹 小説10

9月17日 王の眠る牧野修 小説10

10月1日 永遠の森・博物館惑星 菅浩江 小説10

10月29日 オルファクトグラム 井上夢人 小説10

12月17日 ひょうたんから‘午' 藤井青銅オリジナル 全5回

2002年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月7日 カレーライフ 竹内真 小説 全15回

1月28日 エドモンたちの島 福田卓郎 オリジナル10

2月18日 私の告白 さわだみきお 他 小説10

3月18日 バルト海復讐 田中芳樹 小説10

4月1日 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ 滝本竜彦 小説10

4月15日 しゃばけ 畠中恵 小説10

5月13日 ザ・ワンダーボーイ [注 8] ポール・オースター 海外小説 全15回

6月3日はいつまでも 川上健一 小説10

6月17日 南の島のティ池澤夏樹 小説10

7月15日 アクアリウムの夜 稲生平太郎 小説10

7月29日 スウィートアンダーグラウンド ウォーリー木下 オリジナル10

10月7日 カラマーゾフの森 岩松了高橋陽一オリジナル10

10月21日 おいしいコーヒーのいれ方VI 〜遠い背中村山由佳 小説10

11月18日 不思議薬品店 北阪昌人 他 オリジナル10

12月16日 迷えるお未年 藤井青銅 オリジナル 全5回

2003年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月20日 妖異金瓶梅 山田風太郎 小説10

2月17日 女王の百年密室 森博嗣 小説10

3月3日 サウンドドライブ さわだみきお 他 オリジナル10

3月31日 レヴォリューションNO.3 金城一紀 小説10

5月19日 聖杯伝説 篠田真由美 小説10

7月7日 海辺王国 ロバートウェストール 海外小説10

7月21日 光の島 尾瀬あきら 漫画10

8月4日 DIVE!! 森絵都 小説20

9月8日 不思議不動産 山本むつみオリジナル10

11月17日 おいしいコーヒーのいれ方 VII〜坂の途中〜 村山由佳 小説 全5回

12月1日 インテリアライフ さわだみきお 他 オリジナル10

12月15日 申(さる)モノにござる 藤井青銅 オリジナル 全5回

2004年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月5日 タイムスリップ明治維新 鯨統一郎 小説10

2月9日 赤と黒 第1部 スタンダール 小説 全15回

3月29日 しゃばけ2 [注 9] 畠中恵 小説10

4月12日 オーデュボン祈り 伊坂幸太郎 小説10

6月28日 赤と黒 第2部 スタンダール 古典 全15回

8月2日 スピリットリング ロイス・マクマスター・ビジョルド 海外小説 全15回

8月23日 渚にて 久世光彦 小説10

11月15日 ミヨリの森 小田ひで次 漫画10

12月20日 今夜はバードいこう! 藤井青銅 オリジナル 全5回

2005年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月3日 タイムスリップ源平合戦 (原案)鯨統一郎、(脚本)山本雄史 オリジナル10

2月14日 不思議貿易商 山本むつみオリジナル10

2月28日 家守綺譚 梨木香歩 小説10

3月28日 G戦場ヘヴンズドア 日本橋ヨヲコ 漫画10

6月6日 穴(HOLES) ルイス・サッカー 海外小説10

7月18日 迷宮百年の睡魔 森博嗣 小説10

11月14日 アクアライフ 芳崎洋子 他 オリジナル10

12月12日 5つの贈りもの (原作)パール・バック、(作)井出真理 海外小説 全5回

12月19日 来年こそはワン!だふる 藤井青銅 オリジナル 全5回

2006年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月9日 タイムスリップ戦国時代 (原案)鯨統一郎、(脚本)山本雄史 オリジナル10

2月20日 垂直の記憶 山野井泰史 小説 全5回

2月27日 風神秘抄 荻原規子 小説 全15回

3月20日 不思議図書館 安形眞司 他 オリジナル10

4月3日 プラハの春 春江一也 小説 全15回

5月8日 太陽簒奪野尻抱介 小説10

5月22日 あでやかな落日 逢坂剛 小説10

6月19日 金春屋ゴメス 西條奈加 小説10

7月10日 ウォーターマン 松久淳小説10

7月24日 風になった男 [注 10] 飯嶋和一 小説10

8月7日 精霊の守り人 上橋菜穂子 小説10

10月2日 ベルリンの秋 春江一也 小説 全15回

10月30日 死神の精度 伊坂幸太郎 小説 全5回

11月6日 ドラマ 古事記神代篇〜 [注 11] 市川森一 オリジナル10

1120おいしいコーヒーのいれ方 メモリーズ 村山由佳 小説10

12月4日 おいしいコーヒーのいれ方 VIII〜優しい秘密村山由佳 小説 全5回

12月11日 おいしいコーヒーのいれ方 IX〜聞きたい言葉村山由佳 小説 全5回

12月18日 おいしいコーヒーのいれ方 X〜夢のあとさき〜 村山由佳 小説 全5回

2007年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月8日 タイムスリップ川中島 (原案)鯨統一郎、(脚本)山本雄史 オリジナル10

1月22日 ハッピーバースデー 青木和雄、吉富多美 小説 全5回

1月29日 僕たちの戦争 荻原浩 小説10

2月19日 不思議料理中村比香 他 オリジナル10

3月5日 尾張春風伝 清水義範 小説10

4月16日 闇の守り人 上橋菜穂子 小説10

5月14日 一瞬の風になれ 佐藤多佳子 小説10

6月11日 冷凍人間の復活 小金丸大和 オリジナル 全5回

6月18日 ラジオの前で 北阪昌人 オリジナル10

8月6日ねこつの冒険 飯野真澄 小説10

9月10日 押入れのちよ 荻原浩 小説 全5回

10月29日 ボディ・ライフ 樋口美友喜 他 オリジナル10

1112ナンバーライフ サカイヒロトオリジナル10

11月26日 闘う女。〜そんな私のこんな生きかた〜 下関崇子 ノンフィクション10

12月17日 俵のねずみマウスでチュー! 藤井青銅 オリジナル 全5回

2008年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

2月4日 ロズウェルなんか知らない 篠田節子 小説10

3月17日 ゼンダ城の虜 アンソニー・ホープ 古典10

7月7日 バスパニック 塚本隆文 オリジナル 全5回

8月11日 らせん階段セル・リナ・ホワイト 海外小説10

9月15日 ラジオキラー セバスチャン・フィツェック 海外小説 全15回

11月3日 有頂天家族 森見登美彦 小説10

11月17日 バードケージ 一億円を使いきれ! 清水義範 小説10

12月15日 モー、ギュゥー!っとして 藤井青銅 オリジナル 全5回

2009年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月19日 世界でたったひとりの子 アレックスシアラー 海外小説10

3月16日 ふたつの剣 [注 12] 早瀬利之 小説10

4月6日 碧眼の反逆児 天草四郎 松原誠 小説 全5回

5月11日 黒蜥蜴 江戸川乱歩 小説 全5回

6月15日 ごくらくちんみ 杉浦日向子 小説 全5回

7月13日 失われた地平線 ジェームズ・ヒルトン 海外小説10

8月24日 スカラムーシュ ラファエルサバティーニ 海外小説 全15回

10月26日 ゴー・ゴー!チキン藤井青銅 オリジナル10

1123プリンセス・トヨトミ 万城目学 小説10

12月14日 燃え虎の子 藤井青銅 オリジナル 全5回

2010年代

編集

2010

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月25日 なぞタクシーに乗って… いしいしんじ 小説 全5回

2月1日 終末のフール 伊坂幸太郎 小説10

3月1日 マナカナ大阪LOVERS 青山花累 他 オリジナル10

4月5日 黄金仮面 江戸川乱歩 小説10

5月3日 ヤッさん 原宏一 小説10

6月7日 移動都市 フィリップリー海外小説10

7月26日 ゴー・ゴー!チキンパート2 藤井青銅 オリジナル10

9月20日 神去なあなあ日常 三浦しをん 小説10

10月18日 サマルカンド年代記 アミン・マアルー海外小説10

11月22日 ゼンダ城の虜〜完結編〜 ヘンツォ伯爵 アンソニー・ホープ 古典10

12月20日 神南の母(ママ)の備忘録メモワール) 阿部美佳 他 オリジナル 全4回

2011

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月10日 タイムスリップ大坂の陣 (原案)鯨統一郎、(脚本)山本雄史 オリジナル10

1月24日 サバイバル さいとう・たかを 漫画10

2月21日 フランケンシュタイン メアリシェリー 古典10

3月7日 マナカナ大阪WORKERS 福井ちひろオリジナル 全4回[注 13]

4

anond:20241002194458

1990年代

編集

1992年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

4月6日 十四歳のエンゲージ 谷村志穂 小説10

4月20日 不良と呼ばれた夏 高橋三千綱 小説10

5月11日 王女アストライア 藤本ひとみ 小説10

5月25日 東京防衛軍 よしもとよしとも 漫画10

6月8日 あたしの嫌いな私の声 成井豊 小説10

6月22日 星虫 岩本隆雄 小説10

7月6日 ブラックホール 宮崎由香、綾瀬麦彦 オリジナル10

7月20日 超能力ワイン香り 藤井青銅 小説10

8月3日 北壁の死闘 ボブ・ラングレー 海外小説10

9月7日 北村想怪人二十面相・伝 北村想 小説10

9月21日 都会島のミラージュ 寺田憲史 オリジナル10

10月26日 マドモアゼルモーツァルト 福山庸治 漫画10

11月9日 ベルサイユのばら外伝 池田理代子 漫画10

11月24日 ロンリーランナー 喜多嶋隆 小説 全9回

12月7日 アンデルセン雪の女王 ハンス・クリスチャン・アンデルセン 古典 全5回

12月14日 アドベンチャー的五大ニュース 藤井青銅 オリジナル 全5回

1993年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月4日 おしまいの日 新井素子 小説10

1月18日 五番目のサリー ダニエル・キイス 海外小説10

2月15日 オズ 樹なつみ 漫画10

4月5日 夢の木 木根尚登 小説10

4月19日 猫のゆりかご カート・ヴォネガット・ジュニア 海外小説10

5月10日 春休み少年探偵宗田理 小説10

5月24日 テレヴィジョン・シティ 長野まゆみ 小説10

6月7日 ハリーアキラ 辻野臣保 オリジナル 全5回

6月14日 ジュラシック・パーク マイクル・クライトン 海外小説 全15回

7月5日 ふたり 赤川次郎 小説10

7月19日 スフィア マイクル・クライトン 海外小説10

8月16日 ブルボン封印 藤本ひとみ 小説 全15回

9月6日 くたばれ!ビジネスボーグ 草上仁 小説10

9月20日 武蔵野蹴球団 木根尚登 小説10

10月4日 ザ・マンボスパイマキノノゾミ オリジナル 全5回

11月1日 草上仁ミラクルワールド 草上仁 小説 全4回

11月8日 都立高校独立国 首藤剛志 小説10

12月6日 サンタクロースが歌ってくれた 成井豊 小説10

12月20日 我輩は犬である 藤井青銅 オリジナル 全5回

1994年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月3日 アドリア海復讐 ジュール・ヴェルヌ 古典 全15回

1月24日 紅はこべ バロネス・オルツィ 古典 全15回

2月14日 少年探検隊 池内紀 その他 全10

4月4日 霧隠れ雲隠れ 三田誠広 小説10

4月18日 エンジェルスエッグ 村山由佳 小説10

5月9日 平成トム・ソーヤー 原田宗典 小説10

5月23日 BANANAFISH 吉田秋生 漫画10

6月27日 昔、火星のあった場所 北野勇作 小説10

7月11日 ウォッチャーズ D・R・クーンツ 海外小説 全15回

8月15日 あの夜が知っている R・D・ツィマーマン 海外小説10

8月29日 アナスタシアシンドローム メアリ・H・クラーク 海外小説10

9月26日 アリアドニの遁走曲 コニー・ウィリスシンシアフェリス 海外小説10

1011バイオレンスジャック 永井豪 漫画 全9回

10月24日 笑う20世紀 藤井青銅 小説 全9回

11月7日 カルパチア綺想曲 田中芳樹 小説10

12月5日 レディ・スティンガー クレイグ・スミス 海外小説10

12月19日 イノシシが来た 藤井青銅 オリジナル 全5回

1995年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月4日 三銃士 アレクサンドル・デュマ 古典 全13回

1月30日 リプレイ ケン・グリムウッド 海外小説10

2月13日 吸血鬼ドラキュラ ブラム・ストーカー 古典10

2月27日 せいけつ教育委員会ホイホイ 村田基 小説 全5回

3月6日 オーバー・ザ・ハポン〜空の彼方(かなた)へ〜 伊佐治弥生 オリジナル 全5回

4月3日 魔法の王国売ります ランドオーヴァーPart1 テリー・ブルックス 海外小説10

4月17日 エヴァが目ざめるとき ピーター・ディッキンソン 海外小説10

5月1日 ヴァーチャルガール メイミー・トムス海外小説10

5月15日 秘密の友人 アンドリュー・クラヴァン 海外小説10

6月12日 BANANAFISH パート2 吉田秋生 漫画10

6月26日 BANANAFISH パート3 吉田秋生 漫画10

7月24日まれた街 ジャック・フィニィ 海外小説10

8月7日 アルジャーノンに花束を[注 7] ダニエル・キイス 海外小説10

8月14日 優しすぎて、怖い ジョイ・フィールディング 海外小説10

8月28日 夏への扉 ロバート・A・ハインライン 海外小説10

9月11日 魔術師の大失敗 ランドオーヴァーPart3 テリー・ブルックス 海外小説10

9月25日 イッセー尾形劇場凡庸の極み 近藤峰子、柴田喜幸 オリジナル10

10月9日 踊る黄金ドナルド・E・ウェストレイク 海外小説10

11月20日 ウエディング・ウォーズ 草上仁 小説10

12月4日 笑う20世紀 Part2 藤井青銅 オリジナル 全5回

12月11日 ねずみのチュー告 藤井青銅 オリジナル 全5回

1996年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月4日 ロビンフッド冒険 ハワードパイル 海外小説 全7回

1月15日 モンテ・クリスト伯 アレクサンドル・デュマ 古典 全15回

2月5日 二役は大変! ドナルド・E・ウェストレイク 海外小説10

2月19日 新・夢十夜 二木美希子 他 オリジナル10

4月1日 お父さんの会社 草上仁 小説10

4月29日 ダーク・ウィザード〜蘇りし闇の魔導士〜[注 7] 寺田憲史 小説 全5回

5月20日 ブラジルから来た少年 アイラ・レヴィン 海外小説10

7月15日 青の時間 薄井ゆうじ 小説10

7月29日 精神分析ゲーム バチヤ・グール 海外小説10

8月12日 時間泥棒 ジェイムズ・P・ホーガン 海外小説 全5回

8月19日 黒いユニコーン ランドオーヴァーPart3 テリー・ブルックス 海外小説10

9月2日 大魔王の逆襲 ランドオーヴァーPart4 テリー・ブルックス 海外小説 全15回

9月23日 イッセー尾形たゆたう人々 イッセー尾形 小説10

10月7日 嘘じゃないんだ ドナルド・E・ウェストレイク 海外小説10

10月21日 笑う20世紀 パート3 藤井青銅 オリジナル10

12月2日 今夜は眠れない 宮部みゆき 小説10

12月16日 モー!いいかげんにして! 藤井青銅 オリジナル 全5回

1997年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月6日 おいしいコーヒーのいれ方Ⅰ 〜キスまでの距離村山由佳 小説 全5回

1月13日 おいしいコーヒーのいれ方Ⅱ 〜僕らの夏〜 村山由佳 小説 全5回

2月3日 記憶の城 大田淳子 他 オリジナル10

3月31日 邪鬼が来る 谷登志雄 小説10

4月14日 P 木根尚登 小説10

4月28日 天体議会プラネットブルー長野まゆみ 小説 全5回

5月5日 家族ホテル 内海隆一小説10

5月19日 星の感触 薄井ゆうじ 小説10

6月2日 夏の魔術 田中芳樹 小説10

6月16日 笑う20世紀 パート4 藤井青銅 オリジナル10

6月30日 ロスト・ワールド アーサー・コナン・ドイル 古典10

7月14日 顔に降りかかる雨 桐野夏生 小説10

8月4日 少年H 妹尾河童 小説20

9月1日 日常生活冒険 北野勇作 オリジナル 全5回

9月8日 完璧な涙 神林長平 小説10

9月22日 イッセー尾形たまゆら日記 イッセー尾形 小説10

10月6日 夢にも思わない 宮部みゆき 小説10

1020フルネルソン 永倉万治 小説10

11月3日 新宿鮫・氷舞 大沢在昌 小説10

12月8日 おいしいコーヒーのいれ方Ⅲ 〜彼女の朝〜 村山由佳 小説 全5回

12月15日 タイガーにしなさい! 藤井青銅 オリジナル 全5回

1998年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月5日 虹を操る少年 東野圭吾 小説10

2月2日 嘘の誘惑 富永智紀 他 オリジナル10

2月16日 電気女護島〜エレクトリック・レディラン藤本有紀 オリジナル10

3月30日 着陸拒否 ジョン・J・ナン海外小説10

4月13日 オペレーション太陽(ソル) 小池小説10

4月27日 天使リー喜多嶋隆 小説10

5月11日 少年漂流松本雄吉 オリジナル10

6月8日 Meg スティーブ・オルテン 海外小説10

6月22日 分身 東野圭吾 小説 全15回

7月13日 タイムリーパー 大原まり子 小説10

7月27日 笑う20世紀 パート5 藤井青銅 オリジナル 全5回

8月3日 封神演義 訳:安能務 古典20

8月31日 路地裏のエイリアン 北野勇作 オリジナル10

9月28日 レッドレイ柴田よしき 小説10

1012ゲノムハザード 司城志朗 小説10

10月26日 夢源氏祭文 小池一夫 漫画10

11月23日 ぼくは勉強ができない 山田詠美 小説10

12月21日 「卯」の音も出ない! 藤井青銅 オリジナル 全5回

1999年

開始日 作品名 原作・作 原作ジャンル 話数

1月4日 海賊モア船長の遍歴 多島斗志之 小説20

2月1日 悪戯楽園 さわだみきお 他 オリジナル10

2月15日 蒲生事件 宮部みゆき 小説10

3月29日 カラフル 森絵都 小説10

4月12日 しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子 小説 全15回

5月3日 名馬 風の王 マーゲライト・ヘンリー 海外小説 全5回

5月31日 魔女たちのたそがれ 赤川次郎 小説10

6月28日 笑う世紀末探偵 藤井青銅 オリジナル10

7月26日 おいしいコーヒーのいれ方Ⅳ 〜雪の降る音〜 村山由佳 小説 全5回

8月2日 封神演義 第2部 朝廷軍の逆襲 訳:安能務 古典20

8月30日 鬼の橋 伊藤小説10

9月13日 トリガー 霞田志郎 小説10

11月8日 狩人たち 薄井ゆうじ 小説10

11月22日 不思議百貨店 北阪昌人 他 オリジナル10

12月6日 Permalink | 記事への反応(1) | 02:13

2024-08-18

煮詰まる」はいかにして「結論が出る」という意味になったか

それでは夏休み自由研究を発表したいと思います

最初

現在のところ「煮詰まる」という言葉は、「議論交渉がまとまって結論が出る」という用法が正しいとされ、「議論が進まなくなって行き詰まる」という用法誤用であるとされている。「煮詰まる」という言葉がどのように用いられてきたのかに興味を持ったので、その変遷を辿っていこうと思う。ソースはだいたい国会図書館デジタルコレクションである

注意として、ここでは「煮詰まる」と「煮詰める」を区別して、「煮詰まる」の用例のみを追っていくこととする。現在においても「煮詰める」のほうには「行き詰まる」という用法はなさそうだからである

白樺派の例

調べてまず気付くのは武者小路実篤が「煮詰まる」を多用していたこである。そして同じく白樺派有島武郎長与善郎、その影響を受けたという岸田劉生木村荘八なども「煮詰まる」を用いている。まるで実篤から伝染したようである。それらは概ね「無駄な修飾を排して凝縮されている」あるいは「態度が一つに決まっていく」というような用法であり、いずれもポジティブ意味で使っているところが共通している。いくつかの例を挙げる。

大正10年 武者小路実篤自分脚本に就て』

僕は脚本はどうしても人間精神のあらわれである上に、煮つまったものであることを要求します。


大正10年 有島武郎『筆頭語』

心が二元的である間は、即ち或る機縁によって煮つまって一元的にならない間は、どこまでも二元なり多元なりの生活を押し通して行くがいいと思う。


大正11年 木村荘八『泰西名画家伝』

長官デリニのあやが「うまく」かかるもかからぬもなく、競技――即(すなわち)対抗の空気は忽ち煮つまるばかりであった。


大正13年 長与善郎『書斎より』

牛のよだれのようにだらだらした書きぶりがいかんのは問題にもならぬ事であるが、さればと云って何でも只無暗に簡潔に端折って書きさえすればいいと云う事を一つおぼえて、まるで電報文句のような言葉さえつかえば煮つまったいい文章だ、と思っている人の文章は又不自然な、とらわれた感じのするものである


昭和5年 岸田劉生演劇美論』

全体として、一つの美しさを出すけれど、旧劇の如く煮つまった味はなく、その美は甘く、低級である


白樺派以外の例

もちろん白樺派以外の用例も同時期にあった。意味的にはさまざまだが、ネガティブ用法も多かったようだ。

明治40年イヴィッド・パーリー『くらげ』

この説明には余程可笑しな点がある、で、僕は云った。

『じゃ、この国では、宗教煮詰まって了ったのですネ。』

もとは『The Scarlet Empire』というタイトルアメリカ小説である。原文は「It looks as if religion may correctly be said to have gone to seed, in this country.」となっており、「gone to seed」は「盛りを過ぎて衰える」という意味なので、つまりそういった意味で「煮詰まる」が使われていると考えられる。「加熱しすぎて水分が飛んでしまった」ようなイメージだろうか。

大正9年 ドストエフスキー白夜

私が余りに余計なことを喋舌り、私の心の中で長い間煮つまっていたことを必要もないのに述べ立てたことを、而もそれに就いては私は書いたものから読むように話すことが出来たのだ

こちらも翻訳書。英文は「I had unnecessarily described what had long been simmering in my heart」。「心の中でくすぶり続けていた」とか「ずっと感情が渦巻いていた」といったイメージか。

大正10年 岡本一平へぼ胡瓜』

何処かに法華宗があると見え、この熱気の世界の中へ煮詰まった声でお題目をいきみ出してる。

真夏暑い日に遠く法華宗お題目が聞こえてくる…という場面で、この「煮詰まった声」は「重苦しく絞り出している」ような印象を受ける。もの煮詰まったあとのドロドロとしたイメージだろうか。

大正12年 佐々木味津三『呪はしき生存

単にそれを考えるだけでも、彼は天地が煮つまるように感じていたたまらないような震撼を覚えた。

「居た堪らない」というので、世界が煮られて、そこにいられなくなるような感じだろうか。ぎゅっと狭窄するような感覚もあるかもしれない。

昭和2年歌舞伎 第三年第十三号』

森金之丞は正直にこれに答えるが、だんだん議場(公議所)の空気が煮つまって行き怒声、罵声騒然たる裡に第一場は閉じて行く。

議論が悪い方向に盛り上がってヒートアップしているという描写結論が出そうにないという点では現在の「誤用」のほうに近いか

昭和6年 大高巌『近代支那文学史上の先駆者

かるが故に自己生活を安泰ならせんが為には儼然として己れが階級城壁を固守しなくてはならない。科挙制度がそれだ。かかる試験制度採用することは一に権力者に反抗する意志学問の為に煮つまらせ、又一には士大夫階級思想擁護有為なる人材を作ることになる。

こちらは「集中させる」「浪費させる」ようなニュアンスか。

昭和9年 式場隆三郎バーナード・リーチ

高村光太郎は余り外に出ない。併し仕事は煮つまってきていると思う。暫らく作品を見ない。

この式場隆三郎白樺派との交流があったらしいが、「作品を見ない」ということは、ここでの用法は「行き詰まる」に近いのではないか

昭和10年 丸山幹治『黒頭巾を脱ぐ』

勿論コチコ官僚型で煮つまって、倒さにふっても水っ気もないような人ではなく、時代に対する感受性は強く、好んで人の長所認識する感服癖さえある。

こちらは「頭が固い」というような用法

昭和10年 ギュスターヴ・フローベールジョルジュ・サンドへの書簡

では左様なら。もう遅いのです。頭がまるで煮詰まりそうです。

翻訳書。英文は「Adieu, it is late, I have an aching head.」なので、普通に頭痛がすることを言っているのか、それとも「悩んで行き詰まっている」的な意味なのかはわからない。

戦後の例

戦前武者小路実篤を中心に、小説詩歌戯曲などの文学的文脈で使われることが多かった「煮詰まる」だが、戦後になると現在のような「議論交渉煮詰まる=結論が出る」といった用法が登場し、やがて支配的になっていったようだ。

それに関してわかりやすいのは「国会会議検索」で、戦前の「帝国議会会議検索」では「煮詰まる」はほとんどヒットしないが、国会会議録では1950年代あたりから見られるようになる。さらに用例を確認していくと1960年代から爆発的に増えていったようだ。労使交渉文脈が多いように思われるので、そのあたりをきっかけに流行りはじめたのかもしれない。

となると次に気になるのは「議論煮詰まる」=「行き詰まる」という用法がいつごろ確立されたのかということである。どうやって調べればよいか。たとえば「煮詰まってしまった」みたいな形だとネガティブ文脈で使われていそうだ。ということで検索してみよう。

昭和34年週刊現代

しか日本側は表面上は「朝鮮総連相手にせず」とその抗議を重視せず、裏では字句は修正せずとも運用面に幅をもたせるという妥協の動きに期待を寄せていた。それが、日赤相手にせざるをえない北朝鮮赤十字から真向に攻撃を受けたのだから問題は煮詰ってしまった。


昭和44年『先見経済

やはり人間災害にあってみないとなかなかわからないもので、そういったことで安堵感を持っている。しかしジワジワと危機に瀕してきているわけで、そのとき判断をあやまると、残念ながら煮詰まってしまう。


昭和47年ミュージックライフ

ハイスクールからジュニアカレッジヘと進んだアリス達は2年間のカレッジライフ煮詰まってしまい、カリフォルニアに向かったのである


昭和50年キネマ旬報

その後の二本は結局むしかえしのドラマをやるしかなくて、無残な作品になってしまった

あれも、会社方針企画貧困の為せる業で、プロデューサー監督も完全に煮詰まってしまったんですよ


昭和51年レコード芸術

あい自由さが背景にあってのこの音楽じゃなくて、すごい煮詰まっちゃってて、つらいだろうなというところで出て来る音なんですね。


昭和53年スイングジャーナル

でも、いつか自分のやりたいことをやらないと苦しくなるというか煮詰まちゃうわけだよね。


昭和54年ジャズ批評

昔は、自分が何をやっていいかからなかった。やり過ぎると煮詰まってしまうし。


昭和56年週刊読売

「でも、仕事ばっかりしていると煮詰まちゃう」「煮詰まちゃうってのは、息詰まる、退屈する、スランプに陥るって意味なんです。」


昭和60年 毛利子来岡島治夫・末永蒼生『「体」発、宇宙へ』

たとえば原稿書いてて、もう煮詰まっちゃって、しょうがない、寝よう、横になると、ア、と思いついちゃう


昭和60年 チャールズ・シェフィールド放浪惑星

その問題ととっくんでいるうちにわたしの頭は煮詰まってしまい、あとをマッカンドリューにゆだねた。


昭和60年 松浦理英子いちばん長い午後』

実はそれは性的遊戯の一環ではなく、二人の交際煮詰まってしまったあげくのもがき合いであった。


結論が出る」用法と比べれば圧倒的に少ない。とはいえ1970年代くらいからは、日常語として「行き詰まる」的な用法もわりと広まっていそうな感じはする。というか「結論が出る」用法議論交渉文脈しか使えず、それ以外のときは「行き詰まる」用法になることが多かった、という感じではないか

ちなみに、この「行き詰まる」用法誤用として問題視されるようになったのは2000年ごろらしい。実際、Google Booksで「煮詰ま誤用」などと検索すると2000年以降の書籍しか引っかからない。

まとめ

といったところか。

煮詰まる」のコアイメージは「熱されることで水分がなくなっていき固形分だけが残る」というようなものであろう。

それをポジティブに捉えると「余分なものが削ぎ落とされて本質がはっきりする」といった意味合いになり、ネガティブに捉えると「瑞々しいものが失われて停滞する」といった意味合いになる。たとえば「議論」にポジティブイメージ適用すると「論点が整理されて結論がはっきりする」になり、「思考」にネガティブイメージ適用すると「新しいアイディアが生まれなくなり行き詰まる」になるわけだ。

もともとの料理としては「美味しくするために煮詰める」ことも「熱しすぎて煮詰まってしまう」こともあるわけで、どちらのイメージで使うのも自然感覚である。当初から煮詰まる」は多義的比喩表現だったのだから、「これが唯一正しい用法なのだ」などとはあまり気にしなくていいのではないだろうか。

発表は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

2024-07-03

百年の孤独」の後、逆張りしたい奴が読むべきラテンアメリカ文学6選

百年の孤独」読んだ後にこれを読むべきってネット記事が書かれ始めていて面白い。こういうの好きで、色々なジャンルでこの類の記事を読んで探求してる。だけど時々「いや確かに自分素人なんすけど、もっと段階踏んだ後に読むべき、玄人向けのやつも読んで背伸びしたいんすよ!」と思う時がある。多分、そういうやつここにもいるだろ?そういう同類に捧ぐ。

エドゥムンド・パス・ソルダン/ 服部綾乃&石川隆介「チューリング妄想」(ボリビア)

今、ボリビアクーデター未遂があったとかで混乱してるらしいけど、そんな国を描いたテクノスリラー小説がこれ。“チューリング”ってある通り暗号やらインターネットやらサイバー犯罪やら色々先端技術出てきて、いわゆる魔術的リアリズムとかそういうの全然ない。つーか作者自身ラテンアメリカ文学といえば魔術的リアリズムとかざけんなや!とか思ってこれ書いたとか書いてないとか。クソ分厚いけどオモロイよ。

ベンハミン・ラバトゥッツ/松本健二「恐るべき緑」(チリ)

ここで紹介するなかで一番新しいやつ。これも魔術的リアリズムとかそういうのじゃなくて、科学のとんでもない功罪の数々についてフリッツ・ハーバーとかシュヴァルツシルトとか、あと数学者グロタンディークの生涯から描いてるめっちゃ禍々しい本。あれだよ、ノーランの「オッペンハイマー」と並べられるべき本、本内にオッペンハイマー出てきた気もする。物理学者の全卓樹がこの本の翻訳はよ出せはよ出せとか言ってて、冷静なフォロワーが「この前もう翻訳出版されてましたよ」とか言われてたのが印象的だった。

オラシオ・カスジャーノス・モヤ/細野豊無分別」(中米)

ラテンアメリカラテンアメリカでも南米じゃなくて中米文学日本でもあんま読めない。そん中でもこの人はエルサルバドル出身作家中米についてずっと書いてる。この本はグアテマラ先住民虐殺を綴った報告書を読んでる主人公がその残虐さ陰惨さにどんどん正気を失っていくって本で、読んでてただただ気が滅入る。トーマスベルンハルトとか好きな陰気な人にオススメ

セルヒオブランコテーバイランド」/仮屋浩子(ウルグアイ)

これはラテンアメリカ文学好きにも知られてないやつで、何故なら戯曲から。何かウルグアイっていう結構マイナーな国の戯曲日本演劇化されて、その勢いで本として出版されたっぽい。こういうのいいよな。内容はめちゃ小賢しい。ギリシャ神話、作者自身が登場するメタい設定、そんで現実虚構が混ざりあう、みたいな。でも小賢しく技巧凝らしてるからこそ面白い物語あんだよなあ。

クラリッセ・リスペクトル/高橋邦彦ナヲエ・タケイ・ダ・ジルバ「G・Hの受難/家族の絆」(ブラジル)

リスペクトルな、俺「星の時」読んで泣いたよ。何でって、ここまで複雑な設定を使って無垢登場人物を痛めつける作者はサディストクズ人間で、小説読んでここまで怒りを覚えたこマジでないよ。でも「G・Hの受難」は凄かった。何かずっとゴキブリについて語ってて、そのゴキブリの死骸を通じて瞑想して悟りに至るみたいな。は?ってなるよな。ガチ意味不明で、そういうのって文学醍醐味だわ。

エドゥアルド・ハルフォン/松本健二ポーランドボクサー」(グアテマラ)

これは何か、主人公恋人乳首噛んでたこしか覚えてねえや。でも読んで色々印象に残った本だとか、全く印象に残らなかった本とかは数多いなかで、“主人公恋人乳首噛んでた”みたいに局所的に1つだけ何か覚えてるみたいな本はそう多くない。いや何で読んだんだっけな、白水社のエクス・リブスシリーズから出てたからかな、それも忘れた。でも確かに主人公恋人乳首噛んでたのは覚えてんだよ。不思議だな。

続編:「百年の孤独」読まんで逆張りしたい人に薦めるラテンアメリカ文学10

https://anond.hatelabo.jp/20240704181200

2024-06-24

単著もないくせに」とか言われ続けたか電子書籍を書いたのその後

作者「書いた。否定できるものならやってみろ」

https://anond.hatelabo.jp/20240612003341

「1か所2か所ならともかく、本の内容が多岐にわたりすぎて、すべての内容を否定することは絶対にできない(できるもんならやってみろ)」

という内容になってます

ぼくに10年ぐらい粘着したある人物や、悪い意味言及した人物が読むことを想定して「重箱の隅をつつくことぐらいなら言えるかもしれんよ?」「でも、本の内容をちゃん論破しようと思ったら、ぼくよりも幅広い知識と、オリジナリティの両面がある人じゃないと無理(そんなに能力があるならもうお前が電子書籍出せばいいし、俺の論破とかやる暇があったら、もうお前本書いて自分人生変えたほうがよくね?)」という内容になっとります。


Amazonで数名から酷評現在評価は平均★1.6

https://www.amazon.co.jp/dp/B0D6NCB574/

本を読み終えて怒りのままレビューしたので長文になってしまっておりました。

端的に申し上げます

文章力が低すぎて読みづらい

・著者の境遇思考が(悪い意味で)特殊すぎ、一般の人には参考にできない

以上です。

この本には「レベルの低い言い訳」が目立ちます

「頑張って書いた」とか「(図が)少々見ずらいのはご愛嬌」とか

私も数多くの本を読んできましたが、このレベル言い訳を著書の中に書くのはプロはおろか、小説サイトしか投稿しないアマチュアですら見たことがありません。

そして実際「言い訳」が必要なほどの出来となってしまっています

ブログ読書感想文として書くならこれでも良いのかもしれませんが、さすがにこれを売り物にするのは良心がないのかと言いたくなります



作者「読者の反応を見た。想定してるより読者が馬鹿すぎて俺の作品の素晴らしさを理解できなかったらしい」

私の誤算は2つ。

まず、

「今の時代、本を読む人ならこのレベルぐらいかな?」

と思った位置が高すぎた。

「今の時代9割は高校出てるんだから高校レベルで書けば誰でも読めるぐらいになるかな?」

と思ったけど、これがそもそもの間違いだった

もう1個が完全に計算外すぎて

ウソでしょ?」

と思ったところで…

それが「私ごとき嫉妬する人間がいる」というところ。

自分をよく見せようと思うなら、ダメなところとか書かないのですが…ダメなところとか書いてても自慢話に聞こえる人とかがいたらしくて

「ええ…」

と本気で驚きました


作者「ここはもうリライトどうこうじゃなくて、コンセプト上の失敗ですから…新作として実装するしかないです。」

「難しくしすぎない」

実在する人間を登場させない」

という意味で、戯曲方式の方が良かった。

ここはもうリライトどうこうじゃなくて、コンセプト上の失敗ですから…新作として実装するしかないです。



作者「文章を手直しします」

今、本の改訂作業をしてます

文章を早くする意識で作り直してます

「1文に1つの内容」を意識するといいそうです。

練習のために、ツイートでも「1文で1つの内容」を意識します。

2024-06-03

anond:20240603034445

引越しテーマにしたわけではないかもしれんが、引越し前後が切り出されたお芝居というのは、過去に3つ見た。1つやった。平田オリザの本にも書いてあった。

ちゃごちゃした舞台が1時間で、気がつけばすっからかんになってるのを見ると、自分もやってみたくなるくらいインスピレーションを与えてくれる。

媒体との相性がきっといいんだろう。

引越しテーマナイス戯曲をぜひ書いてくれ。

2024-05-13

最も過大評価されている作家三島由紀夫

三島由紀夫日本代表する文豪憂国の士といわれるが、過大評価され過ぎだと思い、所感を書いておく。

駄作が多すぎる

三島由紀夫はかなり多作作家で、小説戯曲だけでおそらく200作を超える。

新潮社三島由紀夫全集バカデカサイズの全42巻からなり、通読した人間三島専門家くらいだろう…専門家すら怪しいが。

なぜならあまりにしょーもない作品が多すぎるから

三島由紀夫といえば金閣寺。少し落ちるものとしては仮面の告白潮騒美徳のよろめき鏡子の家憂国豊饒の海がある。

しかし他の95%の作品・・・

私は三島由紀夫が好きで、小説だけでなく戯曲を含めて結構読んでいる方だと自認しているが、若者がつまら観念を語るだけの作品、あまり紋切り型恋愛作品が多すぎて、読むのが時間無駄苦痛だ。

打率の低さは擁護しきれないほどである

三島由紀夫vs東大全共闘

2021年に『三島由紀夫vs東大全共闘』という映画が公開された。三島由紀夫 = 憂国の士という共通認識を前提とした筋書きのようだ。

しかし当時(1969年)の共通認識は「ややこしい人がクビを突っ込んだな」である

当時の三島由紀夫はボディービルディングに熱中したり、鍛えた裸を披露するために自分映画写真集作ってみたりと、脇道にそれる活動が多く、作家としての存在感が薄らいでいた。

それどころかいい年したおじさんなのにUFO超能力の探求にハマったり、ハタチそこそこの若者を誘って私兵部隊を結成したり(後に市ヶ谷駐屯地突入した楯の会である)と、お騒がせキャラクター確立していた。

まりUFO超能力に興味があり、自分映画写真集をつくり、若者を集めて軍事訓練を積ませている40過ぎのおじさんが、ソ連マルクス主義の嵐が吹きすさぶ東大に入って論戦しようというのであるいくらなんでもツッコミどころが多すぎるよ。

当時は同性愛天皇礼賛主義への偏見が強かったこともマイナスイメージ形成しており、三島由紀夫は"へんなおじさん"であった。

楯の会事件

散々語られていることだが計画性がなさすぎる。拡声器すら用意していなかったとは…。

社会思想を訴えることについて、本気度・想像力が足りない。

偉い人を人質にとって吠えれば自衛隊が動くと思ったのだろうか。組織とはそのような属人的ものではない。

ずさんな計画のわりに、割腹自殺の準備だけはキッチリしていたらしいが。

派手に割腹たかっただけでしょ。割と当たっていると思う。三島由紀夫エッセイ映像インタビューで度々語っているお気に入りエピソードに、終戦の日に夏の静かな日差しを見ていると自分は"生き残ってしまった、後に残されてしまった"という強い感覚を持ち、それ以来死に場所を探しているという話があり、その"死に場所"を選んだということなのだろう。

三島自己満足に付き合って死んだ若者たちが可愛そうだ…。

最後

三島由紀夫エッセイストとして優秀だとおもう。"高貴なる野蛮人たれ"という言葉を残した。上品で、教養があり、裕福な人間一見洗練されているようではあるが、実は個性がなく退屈で、柔順で、脆弱人間なのである種の誇り高き野蛮さを備えておくべきだという三島由紀夫の主張。この主張は私の人生の指針にもなってきた。

ただ文豪憂国の士というのは過大評価であり、観念に引きこもるあまり最期は周りに迷惑をかけて死んだへんてこ作家、くらいが妥当評価だと思う。

2024-04-14

anond:20240414105756

マルチバース理論で生まれ変われると知ってから、夢の喪失感は消えたぞ。

宇宙って実はここ一つじゃなくて、いま現在無限に、同時に存在してる。

このマルチバース論は科学界で広く支持されてる。矛盾が少なく色んな事象をうまく説明できるから

で。

ポイントは異なる物理法則支配する宇宙が「無限に」存在するということ。

今の俺の状態って原子電子電気的な配置ですべて決まるじゃん?

だとすると、今の俺とピッタリおなじ状態の瞬間が別の宇宙存在しうる。

無限」にバリエーション豊かなわけだからな。

無限に続く円周率の中に、111111のような奇跡的な連なりどころか、シェイクスピア戯曲だって全部入ってるのと同じ。

からつの時点の俺でも生まれ変われてる。

俺は大人だが夢を持ち続けられてるよ。見知らぬ女の子初恋相手になって、俺も彼女を好きになって、結ばれる。幸せになるんだ。

2024-01-04

[]2023年前半に読んだ本

1月

読書12冊+α)

アラン・デケイロスサル大西洋を渡った 奇跡的な航海が生んだ進化史」

ラッタウト・ラープチャルーンサップ観光」★

下村智恵理「AN-BALANCE:日本非科学紀行」第S1話 スメルズ・ライク・イーヴル

下村智恵理「AN-BALANCE:日本非科学紀行」第S2ステアウェイ・トゥ・ワンダーランド

ルイジ・ピランデッロピランデッロ戯曲集I 役割ごっこ/作者を探す六人の登場人物

アゴタ・クリストフ悪童日記」★★

アゴタ・クリストフふたり証拠

アゴタ・クリストフ「第三の嘘」

下村智恵理「AN-BALANCE:日本非科学紀行」第S3話 シー・キャント・エクスプレイ

アゴタ・クリストフ「昨日」

マイケル・カニンガムめぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人

日経アーキテクチュア編「危ないデザイン 建設設計運用に仕える知見を事故に学ぶ

繁田信一「殴り合う貴族たち」★★★

池澤夏樹「ワカタケル」

M・R・オコナー絶滅できない動物たち 自然科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ

美術館博物館

諏訪敦「眼窩裏の火事

府中市美術館常設展

特別展「毒」

映画

「すずめの戸締り」

その他

ボドゲ(クイックショット、マーダーミステリー・想いは満天の星に、ワードウルフ

金沢ハイキング

イチゴ狩り

友人のブログで見かけた本や、別の友人から紹介された本や、旅先の十和田市図書館で見かけた本を読んだ。アゴタ・クリストフは再読。昔は低く評価してしまったが、再読して正解。引越し先にも持っていきたい。

2月

読書(13冊)

ビー・ウィルソンキッチン歴史 料理道具が変えた人類食文化

ティーヴン・J・ダブナー 、スティーヴン・D・レヴィット「ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する 増補改訂版」★

千葉雅也「デッドライン

千葉雅也「オーバーヒート

山下いくとEVANGELION ANIMA 1」

山下いくとEVANGELION ANIMA 2」

山下いくとEVANGELION ANIMA 3」

山下いくとEVANGELION ANIMA 4」

山下いくとEVANGELION ANIMA 5」

繁田信一「平安朝の事件簿 王朝びとの殺人強盗汚職」★★★

天野 忠幸『三好一族戦国最初の「天下人」』

倉本一宏「平安京の下級官人」★★

美術館博物館

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

MOA美術館 名品展 国宝紅白梅図屏風」』

特集陳列 人間国宝中野孝一 蒔絵展」

活字 近代日本を支えた小さな巨人たち」於・横浜市歴史博物館

その他

イチゴ狩り

特に平安時代思い入れがあるわけではないが、何となく読んでいる。

千葉雅也はゲイコミュニティの様子が描写されていて面白い。ただ、作者がどちらかと言えばインテリ寄りなので、わかりやすく書いてくれているだけってのもあるだろう。

EVANGELION ANIMA」は新劇場版に流れた設定があるだろうかと思って読んだ。とはいえ、シン・エヴァンゲリオンでいろいろな感情成仏したため、考察を深めるにはいたらず。

3月

読書10冊)

高村光太郎智恵子抄」★

川田伸一郎「モグラ博士モグラの話」

ジャスティン・O・シュミット『蜂と蟻に刺されてみた 「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ』

尾脇秀和「壱人両名 江戸日本の知られざる二重身分」★★★

尾脇秀和「氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか」★★

ロブ・ダン「家は生態系 あなた20万種の生き物と暮らしている」

鈴木由美「中先代の乱-北条時行鎌倉幕府再興の夢」

ジャン=アンリファーブル著、奥本大三郎訳「完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 上」

関幸彦「刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機」。

ジャン=アンリファーブル著、奥本大三郎訳「完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 下」

映画

「シン・仮面ライダー

平安時代だけでなく。南北朝江戸時代について読んでいる。

かつて友人に「最近はあまり文学が読めなくて困る」と愚痴ると、「おっさんになると政治経済歴史生物学の本を読むことが増える」という返答が戻ってきた。

まり感情を揺さぶられたくないと感じてしまっているのか、歳月がある程度風化させたものに関心が向かうのだろうか。

現に「ファーブル昆虫記」を読み始めた。最近は何が読みたいのかがわからなくなってくると、やたらと巻数のある本を読むことが多い。昨年も「旧約聖書」を通読したし、その前は「聊斎志異」「三国志」「西遊記」、その前は「ラーマーヤナ」や「ガラン版千夜一夜物語」を読んでいる。

4月

読書11冊+α)

中村彰彦脱藩大名戊辰戦争 上総請西藩主林忠崇の生涯」

下村智恵理「AN-BALANCE:日本非科学紀行」第3話 魔の山を走れ

ジャン=アンリファーブル奥本大三郎訳「ファーブル昆虫記 第2巻 上」

梅津和夫「DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見日本人の起源まで」★

ジャン=アンリファーブル奥本大三郎訳「ファーブル昆虫記 第2巻 下」

遠藤秀紀ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」★★

日経サイエンス2023年5月号」

ジャン=アンリファーブル奥本大三郎訳「ファーブル昆虫記 第3巻 上」

嘉数次人「天文学者たちの江戸時代 暦・宇宙観の大転換」

ジャン=アンリファーブル奥本大三郎訳「ファーブル昆虫記 第3巻 下」

フレデリッククレインス「ウィリアムアダム家康に愛された男・三浦按針」

高野秀行清水克行「世界辺境ハードボイルド室町時代」★★★

美術

ルーヴル美術館展 愛を描く」展

映画

ウィリーズ・ワンダーランド

高野秀行は定期的に読みたくなる。

5月

読書12冊)

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第4巻上」

スージー・ホッグ「5歳の子どもにできそうでできないアート 現代美術コンテンポラリーアート100の読み解き」★★

スージー・ホッジ「世界をゆるがしたアート クールベからバンクシーまで、タブーを打ち破った挑戦者たち」★★★

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第4巻 下」

田中康弘「ニッポンの肉食 マタギから食肉処理施設まで」★

田向健一「生き物と向き合う仕事」☆

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第5巻 上」

渡邊大門流罪日本史」☆

笠谷和比古武士道精神史」

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第5巻 下」

堀越啓『西洋美術は「彫刻」抜きには語れない 教養としての彫刻見方

グレイソン・ペリー「みんなの現代アート 大衆に媚を売る方法、あるいはアートアートであるために」☆

漫画

映画大好きポンポさん」 *pixivで。

ルーブル展で見かけた美術書が無性に読みたくなる。

また、先月の鶏に続いて、食肉にまつわる本を読んだ。屠畜の現場についての本も読みたくなったのだが、関心がほかのテーマに移ってしまった。「昆虫記」を読んでいると、当時のヨーロッパの屠畜について書かれているのも興味深い。

6月

読書10冊)

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第6巻 上」

新渡戸稲造山本博文現代語訳 武士道

関幸彦「英雄伝説日本史」★

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第6巻 下」

安廷苑「細川ガラシャ キリシタン史料から見た生涯」

渡邊大門清須会議 秀吉下取りスイッチはいつ入ったのか?」

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第7巻 上」

武澤秀一『伊勢神宮の謎を解く アマテラス天皇の「発明」』★★

池上俊一動物裁判 西欧中世正義コスモス」★★★

ジャン=アンリファーブル「完訳 ファーブル昆虫記 第7巻 下」

美術

マティス展」

「ABSTRACTION 抽象絵画覚醒と展開 セザンヌフォーヴィスムキュビスムから現代へ」

特別展古代メキシコ

ガウディサグラダ・ファミリア

読書を休んだ日が多い割にはまあまあのペース。昆虫記は8月の中頃に読み終わるだろうが、旅行にまでに間に合うかはわからない。間に合わなくても構わない。

当時はそう書いていたのだが、なんだかんだで間に合っている。

こうしてみると美術展には毎週行っていることになる。旅行先で絵画ばかり見るのにはもう飽きたと口にしているものの、そうでもないのかもしれない。それとも、歴史神話知識で「読解」できてしま西洋古典絵画に飽きているのか? だから博物館歴史遺物により惹かれるのか。

【続き】

[読書]2023年後半に読んだ本

2023-10-23

anond:20231023102643

私が主に考えているのは戯曲ゴンドーを待ちながら」についてです。

2023-10-07

戯曲文学賞って意味わからんのだけど?小林靖子三谷幸喜候補に入るってこと?

いやありえんやろ。

アカデミー賞とかならともかくノーベル文学賞は違うだろ。

星雲賞だったらそれこそ「物凄く夢のある玩具取説」みたいなのですら入ってもいいと思う。

でもノーベル文学賞は違うだろ。

結局は演じる役者がいて、大道具がいて、現場空気があり、演出家修正した動き、音響センス監督の采配、色んなのが混ざった結果じゃん。

おかしくね?

ノーベル文学賞っていうのは、文の力だけで圧倒的な何かを叩き上げ人間に送られるようなもんだろ?

なんかおかしいよ。

2023-09-10

『橋からの眺め』@東京芸術劇場プレイハウス

を観てきた。

主演の伊藤英明ビジュアルと、数年前の大河ドラマ麒麟がくる』における伊藤氏の役どころが素晴らしかったため、今回もそれを期待して行ったわけである

あらすじは公式ホームページにあるが、

https://stage.parco.jp/program/aviewfromthebridge

ステレオタイプジェンダーロールに拘泥し家長として振る舞うエディ(伊藤氏)とその妻ビー(坂井真紀)、妻の姉の娘でエディが愛してやまず、成長してなお家に縛り付けられているキャサリン福地桃子)、そして妻の従兄弟でありイタリアから不法移民としてやってくる兄弟マルコ和田正人)とロドルフォ(松島庄汰)の物語である

で、何が書きたいかというと、よくわからない観劇体験をしてしまったという話。

 

なぜなら、伊藤英明徹頭徹尾棒読みからだ。

 

冒頭は、狂言回し弁護士高橋克己)の澱みないモノローグで始まる。その後幕が開き、幸福な頃の一家の姿が描写されるが、伊藤氏が口を開いた瞬間に強い違和感が襲ってくる。

棒読みだ。

言葉の一つ一つが、『セリフ』として意味を持たず流れ落ちていく。

キャサリン帰宅した叔父の胸に飛び込み、絡みつくように抱き合う。不穏さを感じさせる、目に焼きつくほど無邪気な愛の光景と共に、低音で棒読みセリフが流れ落ちていく。

劇が進行し、過保護に育てられ男を知らないキャサリンは、初めて目の前に現れた若い移民独身男性・ロドルフォに一目で恋に落ちる。エディはロドルフォが『カマ野郎』(ママ。70年も昔の戯曲なのだである言いがかりをつけ、そんな男に姪が奪われてなるものかと旧知の弁護士の元へ駆け込んだ。「法にできることはない」と窘める弁護士に激昂した口調で激しく詰め寄る。激昂した口調で激しく詰め寄っているのにも関わらず、セリフは相変わらず流れていく。会話が成立していないのだ。

高橋克己演じる弁護士は、本能的かつインモラル嫉妬に駆られた男を前にした常識人というより、意味を持たない言葉の奔流の前に、言語限界を知って戸惑い立ち尽くすインテリといった様相を呈してくる。

ビーを演じる坂井真紀氏は、妻として夫に寄り添い、あるいは向き合う姿そのままに、崩れがちな家庭の場面を立て直そうとしていたが、やはり圧倒的に流れていく主演のセリフ量の前には勝てない。

ドルフォとキャサリンとの会話は慣れてくれば違和感がなかったが、おそらく物語構造上、その若き二人は、そもそも一人の人間として彼に見られていないためだ。だから会話が成立しなくても大丈夫なのだ

しかし今度はそのせいで、二人がエディに向ける愛や憎悪困惑に一切の重みがなくなってくる。あの純粋に不可解な言語の羅列に対し、何を真っ当に苦悩しているのだ、という感じがしてくる。

そしてその異様な不協和音を抱えたまま、劇は終盤の悲劇なだれ込んでいく。

  

失礼なことばかり書いてしまったが、伊藤英明氏はおそらく演技が下手なわけではないと思う。「演技の適性がピーキーすぎる」だけだ。正直動きだけで言えば他の役者の方が怪しいところもなくはなく、伊藤氏がそれをカバーしていたところもあった。

エディのくたびれた労働者の姿態、日常的に男らしさを意識しつけた一挙手一投足、戯れにロドルフォにボクシングを仕掛ける時の軽やかで悪意を秘めた動きと笑い、嫉妬を滾らせて部屋の隅に沈み込んでいる姿の不気味さ。舞台映えしないとは決して言わせない長身も相まって、エディという男そのものを見事に、しかも色気と悲哀を横溢させて表している。

ただひとたびセリフを発すると、演劇空間位相が容赦無くズレ出してしまう。

 

パンフレットを買えなかった(持ち帰る袋がなかった)ので薄い理解ではあるが、アーサー・ミラー脚本は、シンプルに受け止めれば、移民への差別意識問題女性の自立・連帯問題からみつけつつ、家父長としての姿にこだわる男の自尊心と、その体面の下に押さえつけられた欲望を鋭く抉り出したものだろう。

ただそんな真っ当な狙いを外れて、主演のセリフの大半が機能しない状況で、この舞台は圧倒的な不条理劇として立ち上がってくる。冒頭の弁護士モノローグで、ギリシア悲劇的な『条理』は示されているにもかかわらずである

繰り返されるエディの「尊重されたい」という言葉は発されるそばから空疎になり、なんの意味も持たずに空を彷徨う。圧倒的な空疎に対して周囲は嘆き、怒り、困惑し、愛を語り、そして悲劇を止められないことをなぜか勝手に悟る。

そしてその空を彷徨うような言葉で表される自尊心に怒りを掻き立てられ、エディはあまりにも無意味で不可解な死へと突っ込んでいくのである伊藤氏の怒りの演技は見応えのあるものであるが故に、その怒りの根源が空虚しかないという不条理はいや増していく。

そして唐突に死んだエディを、役者たちは無表情で見下ろす。我々の中に紛れ込んでいた全くの異分子がやっと去った、という解放感さえ浮かべて。

 

それはとりもなおさず、エディが脚本上囚われていたすべてのものの虚しさを示す、メタ的かつ正確な表現に他ならない。

あるいは、棒読みの彼こそがリアル人間であり、周りの役者たちを「芝居がかった偽物たち」と捉えることさえできる。

人間感情言葉で表すことなど到底無意味であり、根底にあるのは超言語的な(本能的な)愛と嫉妬憎悪だけだ。それでも周囲の「芝居がかった偽物たち」とエディは、無意味空疎言葉コミュニケーションする他ない。そして彼は己のものでない空虚言葉で己を取り繕い、縛り、孤立し、ついには偽物たちに殺されてしまう。

この姿が、あらゆるイズムに囲まれ現代人の戯画でなくてなんだろう。

 

まりこの劇を伊藤英明の演技が不条理劇に昇華することによって、今回の舞台は一応の成立を見ているのである

 

幕が降りた後、私はい観劇体験をしたのかどうか一考した。期待していたものではなかった。しかし無ではない。あのエディは間違いなく、ただ達者な役者が演じるよりはるかに深みのある造型をしていた。よくわからない観劇体験だったが、今私にこれほどの長文を書かせるほどの体験ではあった。

それが演出家の狙いだったかはわからないが。

2023-08-29

パウリナ・サラスロベルトミランダを殺したのか?(1)

 この度、岩波文庫からアリエルドルマン(昔は、英語風にドーフマン表記だった)の戯曲作品『死と乙女』が刊行された。90年代に一度、英語から日本語翻訳されたものが劇書房から刊行されたが、その後は長く絶版品切状態だった作品である

 「過去に読んだが岩波文庫から復刊したことは知らなかった」という人は、書店に急いで欲しい。

 読んだことの無い人も、やはり書店に急いで欲しい。

 もしかしたら、作品を読んだことは無くても、朴璐美真木よう子などが主演した舞台を、日本国内で観たという人もいるかも知れない。または、ポランスキーによる映画作品を観た人もいるかもしれない。

 ちなみに、これを書いている増田は、ど田舎生活低所得者なので、演劇文化とは縁が無いことから舞台を観たことはない。

 今回の岩波文庫版は、著者の母語であるスペイン語で書かれたバージョンから翻訳となる。翻訳者による詳細な解説があるので、作品執筆の背景となった70〜90年代チリ内外の政治事情を知ることも出来ることから、一読者として有り難い。

 これを目にしている貴方が、書店に赴いて『死と乙女』を入手して読んでくれるならば、もう以下の駄文を読む必要は無い。

 この増田が読むことを勧めている『死と乙女』とは、どのような作品なのか、読んだことは無いが少しだけ興味が有るという人に向けて、以下を記す。

 ただし『死と乙女』の結末に触れる部分があるので、未読で結末は自分で知りたいという人は、ここで一旦、この駄文を読むのをストップしてもらいたい。

 また、直接的ではないものの、性暴力言及する箇所もあるので、精神的な苦痛を喚び起こされる虞がある人は、ここで読むことを止めてもらいたい。

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 物語の大雑把な時代背景と、粗筋を述べる。

 1970年南米チリで、サルバドール・アジェンデ大統領とする政権誕生した。俗に、史上初の民主主義選挙により誕生した社会主義政権とされる。

 しかし、アジェンデ政権を皮切りに中南米地域社会主義国がドミノ倒し的に増加することを怖れた米国ニクソン政権は、チリへの介入を決定する。かくして、米国の後ろ楯を得たピノチェトが起こした軍事クーデターによって、チリ独裁国家となる。

 この独裁政権時代チリでは、多くのチリ国民政治犯として弾圧され、不当な身柄拘束、拷問虐殺対象となっている。

 チリ国外亡命した人間もいる(亡命はしたものチリ国外暗殺されたという人間もいる)。映画『イル・ポスティーノ』の主人公詩人も、そのような逃亡者であったことを、記憶している人もいるかもしれない。或いはまた、ヨーロッパ亡命していたチリ映画監督ミゲル・リティンが、ピノチェト支配下チリへ潜入して取材する姿を、コロンビア出身ノーベル文学賞受賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスルポルタージュ戒厳令チリ潜入記』(邦訳岩波新書)として著したので、それを読んだ人もいるかもしれない。   

 本作『死と乙女』の著者アリエルドルマンも、チリ国外亡命した人間の一人である

 そして『死と乙女』の主人公パウリナ・サラスもまた、ピノチェト政権下で筆舌に尽くし難い苦痛を味わい、生還したチリ国民の一人である

 本戯曲題名は、音楽家シューベルトの曲に来する。

 パウリナの夫ヘラルド・エスコバルは、ピノチェト政権下で、弾圧されている人々をチリ国外亡命させる手助けをしていた。そのためにヘラルドは、ピノチェト政権当局から弾圧対象とされた。

 しかし、ヘラルドが当局の手を脱して逃亡したので、彼の居場所を吐かせるために秘密警察は、彼の妻であるパウリナの身柄を拘束し、彼女拷問した。その時、拷問者は、目隠しされたパウリナをレイプしながら、シューベルト作品『死と乙女』をBGMに流したのである

 時が流れて90年代に入ると、チリ民主主義国家へと移行する。ヘラルドが逃亡する必要も、パウリナが夫の隠れ場所を吐かずに耐える必要も無くなり、二人は夫婦として、堂々と暮らせるようになった。しかし、パウリナの心には、拷問による拭いきれない大きな傷が残り、それが二人の暮らしに暗い影を落とし続けていた。

 民主主義政権となったチリ政府は、ピノチェト独裁時代に行われた弾圧について、調査究明を行なう国民約束し、そのための調査委員会を任命する。今やパウリナの夫ヘラルドは、その調査委員会のメンバーの一人である。これが、物語の開始の時点で、主人公の置かれた状況である

 物語の冒頭、或る晩、ヘラルドは、パウリナの待つ自宅へと自動車で帰る途中、タイヤパンクにより立往生していたところを、通りがかった医師ロベルトミランダに助けられる。ロベルトミランダの車で自宅に送り届けられたヘラルドは、夜も遅いし助けてくれたお礼にと言って、ロベルトに自宅へ泊まっていくことを勧める。

 結局ロベルトミランダヘラルドの申し出に甘えることにし、ヘラルドが寝室に居るパウリナに声を掛けて、彼女にも客人を泊まらせることを了承させる。

 翌朝。

 ロベルトミランダは、椅子に縛られている。パウリナが、彼にリボルバー拳銃を突き付けている。

 それを見て驚く夫ヘラルドと、狼狽する医師ロベルトミランダに対して、主人公パウリナは告げる。

「昨夜、この男の声を聴いて気づいた。この男、ロベルトミランダこそが『死と乙女』をBGMとして流しながら、あたしを拷問し、レイプした人間だ」と。

 ロベルトミランダ拳銃を突き付けて「洗い浚い罪を吐かせる」と主張する主人公パウリナに対して、夫ヘラルドは思い止まるように説得する。

 チリピノチェト独裁体制を脱して民主主義国家となったとはいえ、いまだピノチェトを支持するチリ国民も決して少ないとは言えない(現実世界2023年現在でも、ピノチェト支持者が残っているのだから民主政権に移行したばかりの90年代前半を時代設定としている物語の中では、尚更である)。独裁政権時代弾圧活動に関与した人間たちの全てを、罪に問うて処罰しようとしたならば、親ピノチェト派の有権者からの反発を招き、まだ体制も盤石とは言い難い民主主義政権が倒れることになりかねない。最悪の場合内戦が勃発して、更に血で血を洗う国民同士の殺し合いともなりかねない。

 そのため、現実世界チリで行われた調査も、調査対象事件を「被害者殺害されたという重大なケース」に限定し、尚且つ、真実を綿密に明らかにした調査報告書を作成する代わりに、弾圧関与者の氏名公表や厳しい処罰免除するという、謂わば折衷案の形をとらざるを得なかった。

 処罰免除するという条件を餌にした、一種司法取引によって、ピノチェト独裁政権時代弾圧に関与した人間に、己の罪を自発的告白するように促したとも言える。

 しかし、もしも調査委員の一人であるヘラルドの妻パウリナが、ロベルトミランダ殺害してしまったとしたら、いや、殺害せずとも、拳銃を突き付けてロベルトミランダ自白強要したこと世間に知られたならば。

 民主化した政権も、真相究明も、全てが水泡に帰すことになりかねない。

 パウリナは、ロベルトミランダの命までは取らないことを条件にして、今ここにいるパウリナ、ヘラルド、ロベルトミランダの三人で"裁判"を行なうことを強引に承諾させる。かくして、現実チリで行われた真相究明の動きを追体験するような、緊迫の一夜が、舞台上で演じられることとなる。

 以下では、物語の結末に触れているので、未読の人は一旦ここで増田駄文を読むのを切り上げて、まず『死と乙女』を読んでもらいたい。

 ロベルトミランダに罪を告白させること(供述テープレコーダーに録音した上で、ロベルト自身の手で文字起こし原稿を書かせ、さらに「自発的真実を語った」と宣誓する署名までさせること)が出来たミランダは、ロベルト監禁する前に家から離れた場所へ移動させておいた彼の車を、返すために取りに行くようにと夫ヘラルドに頼む。

 そして夫ヘラルドが家を出て二人きりになると、パウリナはロベルトミランダ銃口を向け直す。

 「真実告白すれば命を助けると言ったのに、約束が違う!」と抗議するロベルトミランダに、銃口を向けるパウリナ。

 パウリナは、ロベルトミランダの語りを聞いて、心の底から反省や悔悛が彼には見られないと判断したのだ。

 ここで演出として、舞台には幕が降り始め、パウリナとロベルトミランダの姿を隠すとともに、その幕は鏡となっており、演劇『死と乙女』を観ている観客たち自身を映し出す手筈になっている。

 再び幕が上がると、物語ラスト場面であり、パウリナとヘラルドは、二人で連れ立って、音楽演奏会に出掛けている。演奏の休憩時間では、他の観客と、調査委員会による調査の成果について、夫ヘラルドは語り合っている。

 休憩が終わり、演奏が再開される。

 すると、その演奏会の会場にロベルトミランダが入って来て、主人公夫婦から離れた、ずっと後方の客席に彼は座る。

 夫ヘラルドは気づいていないが、パウリナはロベルトミランダ存在に気づいて、しばし後ろを振り返り、ロベルトミランダを見る。ロベルトミランダは、何も言葉を発すること無く、ただ、主人公パウリナに視線を向け続ける。やがてパウリナも、ロベルトミランダから視線を外し、前方(演奏会舞台があると設定されている方向)を向いて、物語は終わる。

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 パウリナ・サラスは、ロベルトミランダを殺したのだろうか?

 この増田は、殺したと考えている。(続く)

2023-07-09

映画監督脚本家俳優としても活躍するクエンティン・タランティーノ(58)は、作家になる夢を応援してくれなかった母親に対し、今でも経済的な援助をしていないという。ハリウッドの大物監督の1人に数えられるタランティーノは、12歳の時、来月75歳になる母親コニーさんから自身作家になる夢を馬鹿にされたこから成功したとしても何も買ってあげないと心に決めたのだそうだ。

 ドラマビリオンズ』の共同クリエイターブライアン・コッペルマンポッドキャスト番組『ザ・モーメント』に出演したタランティーノは、学校で書いた戯曲問題となった時に母親教師の味方をしたことを振り返った。

 「(母は)それについて僕をバカにしたよ。その延々とした批判の途中に『ところで、あなたの小さな作家キャリア』って言いながら、指で引用符の形をつくって『あなたがしている小さな作家キャリア、そのバカたことは終わり』って言ったんだ」

 「それを皮肉っぽく僕に言ってきた。僕は『OK、ご婦人。僕が作家成功しても、あなたはその成功からペニーも見る事はない。ママは家も、旅行も、エルヴィスのようなキャディラックももらえない。何ももらえないよ。そんなこと言ったからね』ってなった」

 そして、その誓いを今も守っているか質問されたタランティーノは、「そうだね。税金のことで助けたことはあるけど、家もキャディラックもない」「子供に向けた言葉にはその結果がある」「子供達にとって意味あることに向けた皮肉言葉は(好ましくない)結果を招くということを覚えておくべきだ」と答えている。

 タランティーノには、昨年2月22日に妻ダニエラ・ピックとの間に第1子(男の子)が誕生している。

2023-06-28

anond:20230628102557

cinefuk 「赤毛の女」にアレンジされたアニメ版を「原作」と思い込み絶対視する人たちの問題戯曲というのはその時代演出家時代に合わせて脚色するもので、「このアレンジは嫌い」ならともかく「間違っている」は… 映画 差別

実写版リトルマーメイド」の話なのに人魚姫持ち出すのもズレてるかな…

だーかーらー、この場合の「原作」っていうのはアンデルセン童話人魚姫じゃなくて

あくまディズニー映画リトル・マーメイドだっていうのが何故分からないの?

仮に『アナと雪の女王』の実写版でございと言って、アナもエルサもクリストフも出てこない、アンデルセン童話雪の女王の通りにゲルダがカイを取り戻す話にしてたらおかしいでしょ?それは雪の女王だけどアナ雪ではないでしょ?

アンデルセン人魚姫原作だと言い張るならば、ちゃん原作通り主人公王子への恋に破れて死んで空気の精になるオチしろ

ハッピーエンドにしている時点でこの場合の「原作」はアンデルセン童話じゃなくてアニメ映画なんだよ

https://b.hatena.ne.jp/entry/4738509448889218885/comment/cinefuk

cinefuk 2023/06/27

赤毛の女」にアレンジされたアニメ版を「原作」と思い込み絶対視する人たちの問題戯曲というのはその時代演出家時代に合わせて脚色するもので、「このアレンジは嫌い」ならともかく「間違っている」は…

2022-11-17

謝ってほしくなかったわがままはてな左翼ちゃん梯子外されて今どんな気持ち

https://anond.hatelabo.jp/20221117054344

既に指摘あるけど北村先生草津町フィクションに準えただけで侮辱誹謗中傷もしてない。この謝罪で十分。むしろ北村先生を叩きたいがために過大な責任要求して、謝罪や退任を訴えてるほうが「民衆の敵」では?

はてな左翼には何を言っても無駄だなと思わされるすごいブックマークコメント

この人たちってまじでその場のフィーリングで生きすぎだろ。

程度でいえば呉座先生よりよっぽどきついと思いますが、呉座先生オープンレターボコボコにして辞職に追いやったんですよね?

バランス感覚どうなってんのこれ

それはそれとして、北村先生ちゃんと謝ってるわけで、北村先生は立派だと思います

謝ってほしくなかったわがままはてな左翼ちゃん梯子外されて今どんな気持ち

https://twitter.com/Cristoforou/status/1592857816267894785

2020年の末くらいに、報道にのってイプセン戯曲草津の状況を結びつける発言をしていまいましたが、その後に自分ネットで虚偽による誹謗中傷を受ける経験をして、軽い発言でもいかに人を傷付けてしまうかを身にしみて感じました。そういう発言をすべきではなかったと非常に後悔しています。なお、これについて私が草津町民を民衆の敵だと言ったというようなことを拡散している人がいますが、これはデマです。アーカイブ見ればわかりますが、私が言ったのは草津イプセン戯曲民衆の敵』みたいだということで、本作で民衆の敵認定されるのは告発した人です

anond:20221116194713

なるべく客観的にみると

というのが事実であり、性被害を訴えただけでリコールされるのは、

まるで、エプソン戯曲民衆の敵」に描かれたシチュエーションのものだねって話でしょ。

2022-10-16

四畳半タイムマシンブルース』は最高のファンムービーであった

とても良かった。

うん、本当にいい映画であった。

映画スペクタクルはそんなにないものの、ファンとして見たかったものが十二分に見れたので、非常に満足度が高い。

作品概要簡単説明すると、森見登美彦原作TVアニメ四畳半神話大系』の世界観上田誠戯曲サマータイムマシン・ブルース』をやったら……というものである

上田誠森見登美彦作品映像化で何度も脚本を務めてきたこからまれた奇妙な企画だが、「キャラクターが魅力的な四畳半神話大系物語構成が秀逸なサマータイムマシン・ブルースを掛け合わせたら最高なものになるんじゃね?」という、同人誌的で短絡的な発想で組まれたように見える計算式が、なんとまあ見事に成立していた。

とはいえ、『サマータイムマシン・ブルース』を見ていたらある程度話の筋がわかってしまうので、一番楽しめるのは『四畳半神話大系』視聴済みで『サマータイムマシン・ブルース』未見の人かもしれない。

まあ、『四畳半神話大系』についても、視聴済みの人は知ってのとおり1話1話独立したパラレルワールドで、今作も別に「続編」ってわけじゃなくパラレルワールドなので、全くの未見でも見られるものになってるのだけれど。

とにかく、キャラクターが魅力的で愛おしい映画であった。

四畳半神話大系』では憎たらしい役回りだった城ヶ崎先輩や相島先輩も、今作はキャラはそのままなのになんだかとても愛おしく思えた。

とりわけ明石さんが魅力的であった。元々魅力的なひとではあったのだが、今作で最高のヒロインになって帰ってきた。12年ぶりに惚れ直した。

四畳半神話大系』は「私」と「小津」の物語で、明石さんはある種立ち位置あやふやヒロインであったのだが、今作は明確に「私」と「明石さん」の関係スポットが当たっている。

そして、それに合わせるように今作は演出方向性を少しだけ変えている。世界観を崩さないまま。

四畳半神話大系』では、登場人物の心情については割とさらっとした描写であったのだが、今作では少しだけウェットに心情が描写されている場面がある。

登場人物ドタバタしたコメディが繰り広げられる中に時折「青春」の甘酸っぱい香りが漂う。

その描写が、見終わってからじわじわと効いてきて、後になるほど愛おしさが増していく。

四畳半神話大系』にしても『夜は短し歩けよ乙女』にしても、いわゆる腐れ大学生モノは「性欲」的な表現何気なく散りばめられていたのだけれど、今作はそこが抑えめなのも甘酸っぱさに拍車をかけていると思う。

あと、「ブルース」の名を冠しているだけあって、「青」が印象的な映画でもあった。

その「青」は、黄昏時の青である日没を迎える前のほんの一瞬の青。四畳半紀の終わりの青。

エンドロール流れる主題歌出町柳パラレルユニバース」では、こう歌っている。

「少しずつ影が背を伸ばしても まだまだ終わりじゃないさ 今日

うん、本当にいい映画であった。

2022-09-04

anond:20220904115507

かに北村紗衣氏が、お詫びして削除しつつ相手を最低だとdisってたのはクソダサいとは思ったが、「民衆の敵」についてはイプセン戯曲みてえなことやってるな、という意見差別ではないと思うよ。

2022-08-14

20220814[アタック25]2022年8月14日20代大会 2022-08-14結果

BSジャパネクストで日曜昼などに放送

8月からは1時「半」から

BS1からボタン2回とか

ケーブルテレビSTBでは見られない場合が多いようなのでBSパススルーとか

地域によってはSTBで見られるようになったかもしれないので最新情報確認

 

今日の答え(放送とは表現が異なる場合があります

・01 [ある建物名前]ケルン大聖堂

・02 パイナップル

・03 10の)8(乗

・04 歌川 広重 うたがわ ひろしげ

・05 [すべて]成人の日 海の日 敬老の日 スポーツの日

・06 木村昴 きむらすばる

・07 人中 じんちゅう

・08 175

・09 あずき

10 鳥谷敬 とりたにたか

11 壬申(の乱 じんしん

12 [3択]2番

・13 パナマ 運河

・14 ラパルフェ

・15 [戯曲]真)夏の夜の夢

・16 [2択]昭和

17 スタッカート

・18 イカ

・19 森山直太朗 もりやまなおたろう

20 テアニン

・21 クラーク

・22 ジャーニー

23 カモメ

24 [AC]ショパン(国際ピアノコンクール

・25 イカゲーム

・26 [3択]フランス

・27 松田丈志 まつだたけし

28 ゴディバ

・29 レディー・ガガ

・30e 鶴屋南北 つるやなんぼく

・xx [ある国の名前]マダガスカル

2022-08-09

あんさんぶるスターズ立ち食いそば

仕事帰り、駅のホームに降り立つと、ガタガタと騒がしく走る反対車線の電車を横目に疲れた足取りを進める。やがて正面に見えるのはホーム雑然と建てられた小さな建物。『あんスタ』とだけ書かれたシンプル看板一瞥すると、横開きのドアをスライドさせて中に入る。入り口横に備えられている薄汚れた食券機で「ぶっかけひいあい」の食券を購入すると、カウンター向こうにいる店主へ無言で受け渡す。
注文品が出来るまでの少しの合間、半分閉じかけた瞼で店内を見渡すと、大方いつもいるような層ばかり。一人でなにかぶつぶつと呟いているくたびれたコートを着たらびおじ、イヤホンで何かの音楽を聴きながら涙を流している流星隊Pの女子大生、高いヒールをカツカツと不機嫌そうにならすOL風のUNDEAD担。
何かを考える気力もないまま立ち尽くしていると、ドン、とカウンターに丼が置かれる。その丼を手に取って、私も無気力有象無象の一人になることにする。
ただ木の板が壁から張り出しているだけの席へ着くと、備え付けの割り箸から無造作に一本選ぶ。たいした力も入れなかったため、割り箸は綺麗に割れなかった。
ささくれた木の棒を手に、ひいあい攻略を始めることとする。僕の行為を気に留める誰かもいない今、わざわざ食事挨拶をする必要もない。
箸で一つまみひいあいをすくい上げると、湯気が出ているわけでもないのに、なんとなく食べるときのくせでふうふうと息を吹きかけてしまう。そして口元へ運ぶと、ずるりと音を立てながらすすり上げる。
しょっぱい、と感じる。おいしいおいしくない以前に、味付けが濃くて判別できない。こんなもの、きっと家でゆったり家族団欒を楽しみながら口にするものではない。
ただ、座る席もないような立ち食いの店で、時間をかけずに食べるにはちょうどいい。疲れた心、疲れた体ではきっと舌も麻痺していて、繊細な味付けなんかされたところでどうせ今の僕には理解できないだろう。
僕は無心でひたすらひいあいを口に運んだ。



ーーあんさんぶるスターズを一言で表すと何? と友人から聞かれたとき、僕の脳裏によぎったのはありもしない立ち食いそば屋での記憶だった。
ありもしないという通り、実際には立ち食いそば屋なんて一度も入ったことがない。すべて妄想であるため、立ち食いそばの実情と大分食い違う点があるだろうことをご留意いただきたい。

そもそもどうして友人があんさんぶるスターズについて僕に聞いてきたかというと、僕があんスタに沼ってるからとか、推しいるからとか、そういう類の理由ではない。
しろその逆で、仲間内では「あんスタアンチ」で通っているためである

僕はことあるごとに「最近オタクが軟弱なのはあんスタのせい」と口にしている。
友人は、逆にあんスタ沼へ落ちている人と話す機会ができたから、僕のあんスタに対する意見も聞かせて欲しいという塩梅だった。
その質問に対して僕はこう答えた。

一言で表すならあんスタは立ち食いそば、と。

あんさんぶるスターズの味付けは濃い

僕があんさんぶるスターズを初プレイしたのはリリース当日だった。キャラクターデザインも美麗で見目が好みのキャラもいたため、プレイ前は期待を抱いていたように思う。
けれど実際にサービスが始まりプレイして感じた違和感


どいつもキャラが濃い

奇抜な口調、過剰な趣味人間味のない受け答え。
まあでも、多キャラものを通ってきた身としてはキャラが尖るのはよくあることだよなと思う。
そのときの僕は、まあ自分向けじゃないよな、程度に収めてプレイを止めた。

ただし、皆さんご存じの通りあんさんぶるスターズの勢いはすごいもので、周囲にあんスタ好きの人は多数いたし、積極的摂取しなくとも副流煙ストーリー理解できる程度には定期的に何かしらの情報が流れて来ていた。
また、同居人あんさんぶるスターズのとあるカプに沼ったことで、身近に触れることにもなった(当の同居人現在あんスタと袂を分けている)。
僕もmusicが始まった際は再びインスコしてALKALOIDにうつつを抜かしたりもした(今でもたまにカプ検索はする)。

けれど人間関係と一緒で、一緒にいる時間が長くなればなるほど嫌いな側面というのは見えてくるもので、嫌な部分が過剰に見えてくると耐えられなくなってくるものだ。
やがてただの一ジャンルから嫌悪対象へとあんスタを昇格させた僕は、自分あんスタを受け入れられない理由を求めて考察するようになった。

実際に以前よりあんスタに触れてみて、考察してみて分かったことは、濃いのはキャラクターだけではないということだった。

ストーリーは大味で、基本的に繊細さはない
まずそもそも、改めて考えてみるとどうしてみんなアイドルを目指しているのかが分からないストーリー上で明かされない。さらに、アイドル活動らしいことをストーリー中でほとんどしていない
ライブステージが始まったかと思えば、急に時空が歪んだのかと思うくらいステージ上でめちゃくちゃ喋ってる

女性向けゲームといえばキャラクター同士の人間関係も重視されるかと思うが、その人間関係においてもカレーケーキを乗っけたみたいな料理提供される
あんスタ制作人はどうもカップリングを乱立させるのが好きなようで、いたるところで男同士を絡ませて地雷持ちカプ厨の息の根を止めていく
新しく形成された二人の関係精巧に描かれていればまだいいものの、実験を楽しむマッドサイエンティストみたいな気分でシナリオ提供されるため、キャラクターを元あるグループと別ユニット所属させるなど、ファン不安にさせることに余念がない。

また、新しく激重感情が交わされる人間関係が構築される場合基本的他の人間関係をすべて無視した上で行われるため、一人の人間が人によって仮面を使い分けているというよりは、パラレルワールド二重人格様相を呈する。

まりあんさんぶるスターズは細かな調味料の調整によってストーリーが作られているのではなく、砂糖唐辛子と塩を混ぜ合わせて作った味付けの濃いコンテンツ、だと僕は認識している。

けれどその大味のコンテンツが、流行しているのも事実だ。

あんさんぶるスターズは戯曲である

視点から見るとクソみたいなコンテンツだったとしても、見る人によってその価値は変わってくる。

例えば、あんさんぶるスターズを舞台上で演出される戯曲だと解釈する。<br<br>>ストーリーが大味なのも、会話がやたら長いのも、キャラクター設定が繊細でないのも、すべて舞台から観客に届けるための演出である

細かな仕草で伝えても見えない観客もいるかもしれないし、細々した心理描写を入れるのは舞台には適さないため必然と会話は多くなる。俳優藤原竜也は演技が過剰でそれがネットミーム化することもあるが、あの演技は舞台で育ったからに他ならない。

我々は舞台上の彼らのやり取りを鑑賞しているのだ、と考えれば過剰な演出おかしくはない。

時代に適した形態ではある

ではどうして戯曲的な大味コンテンツ流行しているかという問題になってくる。

結論から言うと、あんさんぶるスターズは今の時代に適した形態提供されているからこそ、人の心を捉えているといえる。

時間がなくても楽しめる

今の時代、世の中にアニメゲームをはじめとしたサブカルチャーコンテンツなんていくらでも溢れていて、一つのコンテンツに多大な時間集中力意識を割けないと考えている人は多い。
他にも、ストレス社会と言われる現代ジャンルに沼っていたとしても私生活問題時間が取れないこともある。

そもそも立ち食いそばの味付けが濃い理由は、立ち食いそばは舌の上に食材がのっている時間が短く、一瞬でも満足感を得られるようにするためだ、と記憶している。
あんスタも同様に、味付けが濃いので舌の上にのっている時間が短くても満足感が得られる

深く味を吟味するには向いていないが、短時間で楽しめるアトラクションではあるといえる。

②すべて追う必要がない

あんスタは基本的に、一人のキャラクターが他のキャラクターとフラグを建てているときに、他のフラグをすべて忘失する傾向にある。
例えば、真白友也は氷鷹北斗の前にいるとき日々樹渉の存在が消えるし、逆に日々樹渉の前にいるとき氷鷹北斗存在消失する。瀬名泉において、月永レオと遊木真をそれぞれ相手にしているときも同様である

逆に捉えれば、例えば特定カップリングを追っているだけであれば、他のキャラクターとの関係性を一切履修する必要がないのだ。

その分他のコンテンツ時間をさけるし、キャラ理解を深めるために地雷カプへ突入する必要がない(公式PV爆撃で地雷を踏むことはあるが)。

二次創作自由

あんスタくんは公式が常に二次創作してるようなものなので、よく燃える。それゆえに、ファン二次創作するにあたって公式以上に悪目立ちすることはあまりない

また、キャラクター性は特に味付けが濃いため、二次創作する上で多少の改変が行われても紛れて悟られづらい

要するに、公式キャラクターに見た目や口調が相似していれば全部そのキャラクターっぽくなる、という二次創作における最大の強みを持っている。

ただしnot for me

極論、つまりあんさんぶるスターズは今の世間に向いたコンテンツではあっても、僕向きではないという話である

以前、僕は運営会社を同じくするエリオスライジンヒーローズに片足突っ込んでいたこともあるのだけれど、ジャンルを離れた理由「設定が雑」「運営が信じられない」「キャラが守られていない」だった。

まり詳細に書くと長くなるので割愛すると、つまり自分が求めている作品には、世界観がしっかりしていて噛めば噛むほど味が出るようなキャラクターやシナリオ必須である認識している。
カップリング前提で見ているのではなく、そのキャラクターや仲間、背景を知りたいと思うしさまざまな関係性によってその「推し」が形作られていく過程吟味したいと思う。

自分オタク志向的に、あんスタは合っていない、と感じた。

ただ、not for meなだけなら、ここまであんスタアンチに近い発言を繰り返すこともなかった。

すべてあんスタのせい

あんさんぶるスターズは確かに現代に適した形態コンテンツ提供されているだろう。一瞬舌に乗っただけでアトラクションが楽しめる大味なあんスタというジャンルは、簡単に「オタクしてる」感が味わえる。

ただしそれは同時に、味音痴」を作り上げる結果になっているのだ、と僕は主張したい。

あんスタは一大ジャンルなわけで、あんスタを通ってきた人は非常に多い。
ただしあんスタに慣れてしまった人にとって、作品キャラクターを吟味するという行為推しを推すために必要行為ではない。濃い味付けに慣れきってしまって、自分から味わいに行くことはしない。味わわなくても楽しめるし、そもそもよく噛んでも良い味がしないという学習をしてしまっている。むしろ二次創作においてはセルフで醬油やわさびを足して自分好みに都合よく改変しても、元がカレーケーキを乗っけてるようなものなので違和感を覚えない。

周囲を観測したり、色々なジャンル渡り歩いていると、明らかに味音痴オタクが増えてきたと感じる。繊細な味付けがからないため、その作品キャラクターに対して食レポができない。二次創作しても、キャラクターの見た目や名前や特徴的な口調だけが一緒の何かになりさがってしまっている。

ジャンルキャラ乖離が激しい・キャラ解釈がない人の過去ジャンルを見てあんさんぶるスターズがあったとき、何とも言えない気持ちになる。
そんな周囲の状況を見ていると、僕はどうしても「すべてあんスタのせい」と言いたくなってしまのだ。

作品推し方、作品との接し方というのは人それぞれだと思う。こうしろ強制するつもりはない。時代の移り変わりであり、この流れを受け入れるべきなのかもしれない。

ただ、一オタクとして小言を許してもらえるのなら、たまにはその作品あなたなりに深く味わってみてほしいと思う。
そしてその料理がなにで構成されているのか、自分なりに考察してあなた解釈を深めて欲しい。他人と同じ解釈にならなくて良い、正解なんてない。人の数だけ解釈があり性癖がある。

大多数のオタク味音痴にならないで欲しいと、強く願う。

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