はてなキーワード: 電波工業高等専門学校とは
http://www.sendai-nct.ac.jp/news/2016/07/13/newly-004002.php
この変更点は大雑把に言って次の3点でしょうか。
(1)入学の時点では専門を選ばないようになる(ただし、建築以外)
(2)学科名が変わる
それぞれについて見てみましょう。(筆者は広瀬キャンパスOBなので名取キャンパスについては基本的にスルーします)
(1)入学の時点では専門を選ばないようになる(ただし、建築以外)
今までは入学時点で「知能エレクトロニクス工学科に行きたい!」などと専攻を選ばねばいけませんでした。
しかし、高専志望の中学生が普通の中学生よりも工学に興味を持っているとはいえ、自分に合ってそうな専攻を選ぶのは難しいことです。
たいていの中学生は学科の名前やウェブページの雰囲気で決めると思います。
ゲームを製作したくて情報システム工学科に入学した人が、回路系の授業で苦戦したり、CGの授業が実はほとんどないことを知ったりして、「どうしてこうなった……」となることだって珍しくありません。
(もちろん、卒業後にゲーム関係の企業に就職することは可能です。)
他にも、情報システム工学科と情報ネットワーク工学科の違いが中学生にはほとんど分からない、という問題もあります。
そこで導入予定なのが科類制ですね。
建築系を除くと、とりあえず入学時点では広瀬に行くか名取に行くかだけ決めればOKで、1年間高専で過ごしてから専攻を選ぶわけです。
この1年の間に、先輩からの話を聞くなり、シラバスを読むなりして、どのコースに行くのがベストかを考えられます。
1年生の頃は専門の勉強がほとんどないし、その専門の勉強も内容は(広瀬では)学科共通だったので、特に問題はないかと思われます。
(2)学科名が変わる
広瀬の方では情報ネットワーク工学科が情報通信コースに変わります。
この学科名の変更は大したことがないように見えますが、実はそうでもありません。
仙台電波の頃には「情報通信工学科」という学科がありましたが、そちらに戻そうというわけです。
先ほど中学生は学科名や雰囲気で志望学科を選ぶと書きましたが、なんとなくパソコンやネットが好きな中学生にとって「情報システム工学科」と「情報ネットワーク工学科」はどちらの方が魅力的に映るでしょうか?
今までの入試倍率を見ればその差は歴然です。
平成23年度を除くと情報システム工学科の倍率の方がずっと高いです。
(H22が仙台高専としては初の入試で、このとき情報ネットワーク工学科の倍率がとても低かったため、H23では確実な合格を狙った層が情報ネットワーク工学科を志望した、と筆者は予想しています。)
情報システムの方がなんとなく楽しいことをやってそうに見えるのでしょう。たぶん。オープンキャンパスでCG作品の展示をしていた影響もあるかもしれないけど。
「ネットワーク」という言葉を使うと、どうしてもシステムとの違いが分かりにくいのでしょう。おそらく。(受験生にアンケート調査してみたいですね)
そこで、仙台電波の頃の学科名である「情報通信」コースにしようというわけです。
「通信」という言葉を入れることにより、このコースにはある種のブランドのようなものが生じると考えられます。
今や仙台高専という学校名になりましたが、もともとは東北無線電信講習所→官立無線電信講習所仙台支社→官立仙台無線電信講習所→国立仙台電波高等学校→仙台電波工業高等専門学校という経緯があるわけです。
各電波高専は各地方に存在していた無線電信講習所が元になっています。(電通大ももとは無線電信講習所!)
仙台高専広瀬キャンパスにとって、通信というのは花形分野なのです。
実際、キャンパスを見るとまず目につくのが大きなアンテナだったり、アマチュア無線部が強かったりします。(今も強いですか?2期性がたくさん入っていた覚えがあります)
また、かつての仙台電波高専(仙台電波高校)時代の卒業生が今やお偉いさんになっていたりするわけです。
電波という名前こそなくなったものの、愛子の学び舎で通信を学んできたというのは必ず評価してくれる人がいるでしょう。
そういった点で、この学科の名前の変更は大きな点です。(情報通信コースに優秀な学生が入ることを祈っています!)
ちなみに、情報システム工学科と情報ネットワーク工学科の違いは、電磁波工学などの通信関係をやるかどうかの違い、先生の違い、就職の強さの違い(?)などが挙げられます。
ネットワーク関係に関しては両学科ともCISCOのe-learning教材を使って学びますが、情報ネットワーク工学科の方がより力を入れている印象です。
また、通信には法規の知識が必須ですが、情報ネットワーク工学科ではそれも学べます。
目指せ一陸技!(通信を大プッシュしたわりに、筆者は一陸特しかとってなかったりします……)
「数学や理科を深く追求して,サイエンスをテクノロジーに結びつけるために必要なことを幅広く学びます。」とだけ書いてあります。
これの詳細についてここで書くのはまずそうな気がしますし、これから変更があることも十分考えられるので、具体的なことは書きません。
そこで、高専にもこういったコースの需要がある、ということだけ説明しておきたいと思います。
高専は大学と違い、本来のモチベーションは研究ではなく、技術者の養成です。
その意味で、応用科学コースのようなどことなく理学の匂いを漂わせるものは不適なのではないか、と思う人がいるかもしれません。
しかし、応用科学コースはおそらく大学工学部で学ぶような基礎的な数学や物理学程度の内容を教えるようなものになるかと思われます。
高専は若いうちから専門の教育をするのが最大のウリなわけですが、専門の内容を正確に理解するのに必要な数学や物理の授業はそれに追いついていません。
電子回路を例に挙げてみましょう。
半導体の物性を理解するためには量子力学や統計力学の知識が不可欠です。
しかし、量子力学や統計力学は知能エレクトロニクス工学科以外では学びません。(一方で、電子回路は全学科で学びます)
知能エレクトロニクス工学科でも、正確に半導体物性を理解するのに必要なところまで物理を学ぶかは怪しいです。
それ以外にも、高専ではフーリエ解析やラプラス解析を学ぶ前に交流回路網の計算を叩き込まれたりします。
数学や物理が追い付いてない以上、「それはそういうものだから原理は気にせず覚えてね」という指導にならざるを得ないわけです。
その結果、「もっと原理を深く知りたい!」という人や、「これだから工学は嫌!」という人が出始めてきます。(これで工学が嫌になって理学部に行く人もいますが、大学の工学部はその意味では高専よりずっとまともなので、工学部に行くという選択肢を簡単に捨てたりしないといいなと思います)
大学編入志望の学生が集まりそうな感じはしますが、そもそも大学編入したい人は専門をより深く勉強したい勉強好きの人が大多数だと思うので、まあ問題ないんじゃないでしょうか。