成人した健康なホモサピエンスなら誰でも担げると言って良い
理由は道具と姿勢にあるんや!
背負子(しょいこ)は人類の叡智が詰まった非常に合理的な道具だったんやで!
今は道路整備されたし悪路なとこは空輸するから道具としての背負子は廃れただけ
例えば登山家はある特殊な条件が発生すると数百kgの荷物を背負って降りなければならなくなるときがある
その条件は山の上で誰かが亡くなったとき荷物と遺体を背負うことがあるんだ
まぁこれできるの登山家というそれを職業としてるプロだけだろうけどね
平坦な道なら一般人でも出来る、悪路はプロじゃないと無理やで
]]>いままで気づかなかったが、言われてみるとウイルスっぽい臭いがかすかに漂っているようだ。社長くらいのレベルに感覚が研ぎ澄まされると、ごく微量のウイルスでも嗅ぎ分けて避けることができるから、絶対に感染しない。まだ私はそのレベルに達していない。
だからいつもトルマリンペンダントを身につけて温めておけと言われている。温め続けることでペンダントから電磁波が出て身体に作用し、細胞がウイルスを殺す力が増幅される。細胞が活性化されることでウイルスへの感度も上がっていき、ウイルスに特有の臭いも嗅ぎ分けられるようになる。当然、感染のリスクも下がるというわけだ。
基本に忠実にやることなんだよ、と社長は爪を切りながら言う。これは社長の口癖のようなものだ。トルマリンペンダントを毎日使い続けるだけで、誰でもウイルス臭は嗅ぎ分けられるようになる。こんな安い投資はないと。
そのはずなのに、今のところ販売では苦戦している。先月はポスティングを使ってチラシを撒いた。かかってきたのはいたずら電話1件だった。某フリマアプリではいままでに55個売れたが、除菌グッズとして売っていたら先週アカウントを消された。
トルマリンペンダントの販売戦略どうなってるの、このままだと今月は業績、未達じゃないの。隣の席から係長が圧をかけてくる。
係長が扱っている商材は、集団ストーカー防止パッチという器具で、スマートフォンやノートPCに貼っておくと、集団ストーカーが使ってくる電波を遮断することができる。一時期は中国のメーカーから送れなくなって欠品していたが、流通が再開してからは、オンライン店舗を中心に安定して売れている。係長はしっかりインセンティブも確保しているから、こちらにちょっかいを出す余裕があるというわけだ。
そろそろ出前頼もうや、と係長がソリティアをしながらいう。だいたい私が黒電話の脇に置いてあるメニューを見ながら注文することが期待されている。
会社では最近出前が流行っている。外へ食べに出ると混んでいるわ、へんなプール臭いミストを吹きかけられて、サラダのキャベツみたいに消毒されるわで、嫌になっていたからだ。
なんとかイーツというのも使ってみたが、配達員の格好が社長は気に入らないらしい。なんだあの魚の行商みたいな大袈裟な背負子は、普通に出前にしろや、出前、というわけだ。
社長。社長。出前、何がいいすか。係長が呼びかけても、社長は自分の肩にせんねん灸をすえるのに忙しい。「もぐさ」のにおいが事務所に漂う。
社長!
三度目の呼びかけでようやく「冷やし」と返事が返ってくる。
じゃあおれも冷やしで、と係長はソリティアの画面に向かったまま言う。私は黒電話の受話器を取り、ダイヤルを回す。
「すいません、出前で、冷やしオメガラーメン二つと、天津飯お願いします。あ、お宅の四軒隣のビルの、梶田興業です、はい、よろしくお願いします」
これで今日も昼は来る。午後からは、トルマリンペンダントの売り方をなんとか考え出さねばならない。やや気が重い。
]]>TPOって言葉があるぞ
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