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2019-09-07

温泉、独り旅、そして濃霧

休暇を取ってください、と職場から言われた。

休めるのなら迷わず休むのがポリシーなので喜んで三日ほど休んだ。

さて、どう休もうかと悩んだ。引きこもりお盆で味わい尽くしたし、

予定を入れなければうっかり自宅で仕事をしてしまいそうだ。

そうだ、温泉へ行こうと思い立って旅行サイトで予約した。

さて、車で二時間ひたすら山を登る。

残暑が厳しいだろうから高地へ行って涼もうと思っていたのだけど、麓も涼しくなっていた。

山を登りきると、そこは涼しい温泉地。どこか浮かれたような雰囲気が漂っていて好き。

ホテルへのチェックインにはまだ時間があったので、スーパーへ寄ってビールつまみを購入。

口コミサイトにはフロント対応が最悪と書かれていたが、妙齢マダム淡々手続きをしてくれただけだった。

雰囲気が良ければあまり接客態度は気にしない。チェックインを済ませると部屋へ行った。

事前にわかっていたとは言え畳にベットは味がない。ベットだと布団の上げ下ろしがないからないから安いのか。

まあ、旅館の部屋につきものの「あの部分」があるからいか。早速「あの部分」の椅子腰かけくつろぐ。

瞑想くらいしかない。景色は開けているが、山しか見えない。夕食まで時間があるので、温泉に入ることにした。

事前に純粋温泉を楽しみたい人におススメとあったので、ワクワクしながら温泉に向かう。

ああ確かに温泉はしっかりしている。酸性度が強いので傷口が痛い。全身で温泉を感じた。

温泉に入ったから、何かが変わるわけでも魔法がかかるわけでもない。ただコンクリートの壁を前にして身体温泉に浸す。

なんとピュア温泉体験なんだろう。そうか、温泉っていうのは絶景とか解放感とか

そういう非日常こそが温泉だったんだなという気づき

ゆっくり風呂に入ったら、もう夕飯か。夕日を見る間もなく夜になっていた。事前の評判では冷食バイキングと聞いていたが、

実際に得られたモノもそう表現するしかない。宿に泊まっている全員の食事時間が90分しかない

というのが何となく窮屈に感じるけれど、その正体がわかった。コレ寮生活みたいなんですわ。

行列に並ぶことが何よりも嫌いなので、15分ほど遅れていったら部屋に内線電話がかかってきた。

現場に向かうと、部屋番号の指定席。なんかさらされているようで気恥ずかしい。

料理は大しておいしくないが、別に文句を言う理由もない。そんな食事なのに、

ビュッフェスタイルだったか無駄に食べてしまって2泊3日で2kgの大増量。

バカなことをしてしまった。

食事にはお酒がついてきた。あまり食事時に酒を飲むのは好きではない(回るのが早いから)が、

セットでついてきたのだから、ついつい飲んでしまう。欲張りモノは損をする。

酔いが回ってくると、気が大きくなってくる。隣席は同じく独り旅と思われる中年男性哀愁漂う晩餐を取っていた。

ものすごく、話しかけたくなった。目的もなく一人で来たからやることがないのだ。どうしようか。

どこか観光地について聞こうか、このへんにはおいしいものがあるのか、そんなことも知らずにここにいたから知りたかった。

しかけるのは簡単なんだ。でも、相手が会話を望んでいないときどうやって終わらせるかがむずかしい。

そういう責任取れない会話は辞めとこう、という気持ちがわいてきたので彼に結局話しかけることはなかった。

食事を終え、部屋に戻ると「あの部分」に腰かけビールを飲んだ。ああ、なんでこんなことしてんだ。

カーテンを開けると眼下には、昼間には森だった暗闇が広がっていた。何にもねえや。

いよいよアルコールがキツくなってきた。ドキドキと鼓動は早くなり頭はぼーっとする。そして気づく。

ああ、実は酒なんて好きじゃないんだな。

普段酒が好きだと思っていたのは、飲酒で気が大きくなって会話を楽しんでただけだったんだ。

無音の部屋で畳にゴロンと横になり、座布団を二つに折って枕にする。天井の木の模様を観察して、微妙な気分になる。

畳のにおいが心地いい。何も考えない、楽しい訳でもなく悩むわけでもなくただ時間が過ぎていく。

そうやってどれくらいの時間が過ぎたのだろう。酒が抜けてきたので再び温泉に入った。

いつ行っても風呂場がバラバラだけど、大丈夫だったのか。お湯の中で瞑想する。

風呂から上がると、ロビーは消灯していた。ほとんど真っ暗なロビーで放心状態だった青年が一人。

彼は何を思っていたのか。そんな彼を横目に部屋へ戻る。どうも隣室がうるさい。酒盛りだ。

ホテル入口にXX大学OO部と書いてあったけど、ひょっとしてこいつらか。でも、体育会系キチガイじみた盛り上がり方でもなかったので、仕方なしと思って布団に入った。その後もドンドンバンバン隣室からは音がしていたが、朝飯の時間は決まっているので彼らもじきに寝たようだった。

朝飯も同じ。何も語ることはない。卵やきをたくさん食べた。部屋に戻るとカーテンを開けた。濃霧で真っ白で視界ゼロだった。ふと、若い時に行った東北旅行で遭遇した吹雪を思い出す。バスの窓はすべて白く染まり飛行機が遅れて大変だった。吹雪の中にいると、建物の中にいても現実感が失われる。果たしてここはどこか、私はだれか、そんなことを疑いたくなる。次は吹雪が吹く冬に来ようという気持ちになった。

特に何もなかった。でも、何もないって贅沢だな。

 
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