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2020-08-13

ボルトン本によると、文在寅大統領は嘘をついていない

山本一郎氏が書いた下記記事山本記事)では韓国文在寅大統領北朝鮮の非核化意思についてトランプ大統領に嘘をついたことを米国の前国家安全保障問題担当大統領補佐官のボルトン氏が著作ボルトン本)で暴露した、とされています

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73910

私は先日ボルトン本を読み終わったのですが、ボルトン本には文大統領が嘘をついたという記載やそのような読み方を裏付け記載は見当たりませんでした。(読んだ人でそういう記載があったよ、という人がいたら、ぜひ英文引用して教えてください。Kindle検索して確かめます

大統領「嘘」とされる発言

山本記事には以下の記載があります

ところが、2018年4月27日文在寅さんと金正恩さんは南北軍事境界線上の板門店11年ぶりとなる南北首脳会談を開催します。

その翌日、文在寅さんはトランプさんに電話をかけ、金正恩さんが「韓国に対して『核実験場の閉鎖』と『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化CVID)』を約束したのだ」と伝えるのです。

これが文大統領がついた嘘で、北朝鮮はそんなことは約束していなかった、というのが山本記事の目玉です。しかし、ボルトン本が伝える文大統領発言は異なります

ボルトン本によると、文大統領トランプ大統領に金委員長が「完全な非核化(complete denuclearization)」を約束核実験場の閉鎖を申し出たと伝えてます。『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化CVID)』を約束したと伝えたとも米国側がCVID約束されたと受け取ったとも書かれていません。

なお、板門店宣言自体に「朝鮮半島の完全な非核化南北の共同目標とし、積極的努力をすること」とあるので、北朝鮮が核廃棄の意思を示したこと自体が嘘、ということはありえないでしょう。(北朝鮮のその意思表明を信用できるかは別の話で、ボルトン氏は一切信用しなかった、と書いています

「嘘がばれた米朝協議」の記載もない

つぎに、山本記事では、米のポンペオ国務長官訪朝してCVIDに付いて協議しようとしたら、北朝鮮は核廃棄を意思を表明していないのに核廃棄前提の話をされて激怒した、そしてこれにより韓国の嘘が明らかになった、との趣旨のことが書かれています

外交成果を喧伝するための、米韓朝3国会談のテレビ映えにこだわった、文在寅さんの考えや立場独善的ものでした。結果として、文在寅さんからの嘘の情報に基づき、平壌を訪れて国務長官のポンペオさんが北朝鮮非核化CVID協議をすると、北朝鮮側が「一方的強盗のような要求」と激怒してしまいました。

北朝鮮も、まさか文在寅さんが「北朝鮮核兵器廃棄の意志がある」というガセネタトランプさんに伝えていたなんて知らなかったわけですよ。

【中略】

これだけでも充分数日は思い出し笑いのできるレベル面白さなのですが、韓国に騙されたことを知った、その後のトランプ政権による韓国冷遇も、また、読んでいて「これは小説なのではないか」と思うぐらい痛快です

山本記事では、この訪朝シンガポールでの米朝会談のもの米朝会談のものかが書かれていません。しかし、どちらだとしても理屈が合いませんし、いずれの訪朝についてもボルトン本に「韓国が嘘をついていたか米国北朝鮮の態度を見誤った」とか「米国韓国に騙されたと認識した」との見方に繋がる記載は見当たりませんでした。

可能性1:米朝会談後のポンペオ氏訪朝

一方的強盗のような要求」という表現シンガポールでの米朝会談6月12日)より後、7月6~7日にポンペオ氏が訪朝した後、北朝鮮外務省報道官声明で使ったもので、これはボルトン本にも書かれています。とすると、これが韓国の「嘘がばれた」協議なのでしょうか?

ボルトン本には同協議についての記載がありますが、その中に「韓国が嘘をついていたことが分かった」「騙された」といった類いの記載はありません。ボルトン氏はむしろシンガポールでの米朝会談後の「北朝鮮対応の硬化は予想通りだが、こんなに早いとは思わなかった」と書いているところです。

なお、ボルトン本によると北朝鮮は「安全保証非核化より先」「検証は核廃棄後」と伝えているものの、核廃棄の意思自体否定していません。

そもそもボルトン本によると、このポンペオ訪朝に先立つシンガポールでの米朝会談までの段階で、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(complete, verifiable, and irreversible denuclearization)」についての協議が行われており、事前に北朝鮮が何度も同意していたものの、会談直前に「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」に反対しはじめた、と書かれています。つまり、ポンペオ訪朝よりずっと前に米国は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」について北朝鮮要求しているのです。ポンペオ訪朝CVID協議をはじめたら「韓国の嘘」がばれた、なんてことがありえないことが分かります

なお、米朝会談共同声明では「金正恩委員長朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した」「2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」などと書かれていて、北朝鮮は核廃棄の意思アメリカとの協議で表明しています山本記事では米朝会談画像が使われているにもかかわらず、本文ではなぜか米朝会談存在無視されています

可能性2:米朝会談前のポンペオ氏訪朝

さて、米朝会談後の訪朝だと筋が通らないなら、米朝会談前のポンペオ氏の訪朝、という可能性はどうでしょうか。

板門店宣言後、米朝会談前の期間にポンペオ氏が平壌に行ったのは5月8日抑留されていた米国人を引き取りに行ったときだけです。そして、ボルトン本にはこの際に協議が行われたとの記載は一切ありません。ボルトン本にはポンペオ氏が米国人を引き取りに行くことになった経緯や、戻ってきたときメディア対応の話は書かれていますが、平壌で核や米朝会談関連の協議があった、ということすら書かれていません。

この米朝会談に関する協議もあったのではないかとの推測はあるようですが、ボルトン本には記載がありませんので、山本記事根拠にはなりません。

まとめ
  1. ボルトン本には、板門店での会談を受けて文大統領が「北朝鮮CVID合意した」とトランプに報告したとは書かれてない。核放棄意思の表明自体板門店宣言にも書かれているので嘘とは考えられない。
  2. 米朝から会談にかけて米国が直接CVID要求しているので、ポンペオ訪朝で「米国が文大統領のガセ情報に騙されていたせいで、北朝鮮激怒した」とか「韓国の嘘がばれた」みたいなことは時系列的にもありえない。
  3. 米国韓国に騙された」と米国側が認識したという記載も見当たらなかった。

2018-05-04

国際卓球連盟ITTF)と「スポーツ政治利用

世界卓球南北合同チームの件でいろいろと言われているけど、

国際卓球連盟ITTF)は昔っから自らの競技の「政治利用」にわりと積極的組織だ。

国際問題調停を、競技を通して、かなり踏み込んだ立場でやろうとするとこがある。

ITTF第一次大戦後、国際的融和ムード支配的だった1920年代半ばに創設された。

初代会長コスモポリタン人物で、「スポーツを通して国の垣根を無くしたい」と公言

40年以上にわたって在職し、組織の基底的な思想を決定づけた。

たとえば創設以来、世界選手権においては長年にわたって、表彰台での国旗掲揚国歌演奏は行わないものとされていた

(※のちに五輪参加を機にルール改定)。

紳士淑女の友好的遊戯」という競技ルーツへの自負もまた、融和を尊ぶ姿勢を醸成した。

対日感情の極めて悪かった第二次大戦直後の1949年、いまだ占領下にあった日本の再加盟を、

国際競技団体としていち早く認めている。

スポーツを通して垣根をなくしたい」という理想を、

スポーツを通じて世界をつなぐ」積極的行動モデルとして結実させようとしたのが3代目会長の荻村伊智朗。

有名な米中の「ピンポン外交」を主導した人物のひとり。

会長在任中は、91年世界大会最初統一コリアチームを実現させた他、

地球ユース選手権にてイスラエルパレスチナ両国ジュニア選手に共同で宣誓させる等々、

デリケート国際問題に対して突っ込んだコミットを続けた。

アジア大会中台ボイコット騒ぎが起きた際も、

末期がんによる死の一週間前にあってなお、病身を起こして会場に駆けつけた。

そういった先人の理念と行動規範継承されていて、

その後も国際的緊張の当事者同士を共に組ませて国際親善大会をしたりと言ったことを継続的にやっている。

またたとえ、国際的承認を十分に得られていない地域協会であっても、

(極力)加盟の希望排除せず、積極的承認する。

火中の栗を拾うことをあんま恐れない。

たとえばWikipediaの『コソボ国際競技連盟への加盟』の項を見れば、

加盟の承認時期がダントツに早いことがわかるだろう。

なにせ独立宣言をする5年も前に承認している。

早いとか言うレベルではなくフライングの域だ。

2011年に当時の会長も「ピンポン外交は次の時代へ入った」とコメントしたように、

競技政治利用」すなわち「外交的融和を目指して自らの競技積極的活用してく」ことは、

ITTFにとっては継承されたレガシー自覚的ミッションのおもむきすらある。



そこら辺を踏まえた上で、例の件について言うと、

まず先だって出された板門店宣言スポーツの合同チームの結成が盛り込まれていた、という背景があり、

南北だけでなくIOCも強く後押ししていたらしい。

あとはITTF側の問題となる。

競技団体として、こういった特例を認めた場合の今後への弊害を考えることになるんだろうけど、

現実問題、ここまでの歴史的条件が揃って、大会開催期間とタイムリーに重なるということはそうそうあることではない。

前例化したとしてもそれを以ってなし崩しにはなりにくいと思われる。

そしてコソボ承認の件もそうだが、国際問題に先陣切ってコミットすることを恐れない連盟の体質。

しろ今後に続くであろう統一チームの流れに先鞭をつける機会を、

わざわざこのような特例措置を用いてまで自分たちが最速で提供することに、

使命感とか陶酔とか覚えててもおかしくない。いやまあ偏見だけど。




選手たち当事者には、やっぱりアンフェアじゃないの、という権利は正当にあると思う。

しかし現時点で報じられる限りでは女子日本代表に動揺はないという。

伊藤美誠なんか「おもしろそう」とか言ってる。

日本卓球協会側も「スポーツを通した世界平和を目指している」「歓迎したい」とか受容的コメント

本音は、とか言い出したらキリはないが、卓球界に長年育まれてきた感覚ではこんなものかもしれない。

スポーツを通した世界平和、うーん仕方ないか、みたいな。

卓球界では過去複数回統一コリアチームが結成された前例があり、心理的に受容の土壌もある。

それに実際、日本女子の実力から言えばことさら動揺する必要もない。

んなこと言ってると91年大会中国みたいに足元すくわれるけどな!

今回の合同劇が卓球界の受け継いできた流れのひとつの結実だとするなら、

荻村の母国である日本が真向からそれを受けて立つのも、ある種の本望、度量の見せどころ--なんて言うのは

ちょっと勝手が過ぎるというものだが、サポーターとしてはそういう気持ちで見届けるつもり。

ともあれ、彼女らの戦いを応援するぞっと。

2018-05-01

こういう記事もっと広まって欲しい

こういう記事、良記事なのに余り広まらないのは何故なんだろうかと思った。
第三回 南北首脳会談(2018/04/27-板門店)に於いて出された共同声明『板門店宣言』について国際関係学者の解説 - Togetter

4月27日板門店で行われた南北首脳会談で発表された板門店宣言の解読記事
テレビネットニュース等では「非核化」「朝鮮戦争終結」という所ばかり注目されているけれど
実際に読んでみると「非核化」は韓国駐留している米軍撤退を条件にされている様だし、「朝鮮戦争終結」は
国際法朝鮮戦争の休戦条約を動かす権限の無い立場である韓国が「朝鮮戦争終結させたい」と言っても無意味

この結果、一言で言えば「何の成果も得られませんでした」なのでは?

 
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