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2011-01-18

問題多いTVゲーム有害指定」~編集者奈良原士郎氏の書いた本文

togetterが見難くて仕方ないのでまとめてみた。

http://togetter.com/li/90222

昔書いた記事→問題多いTVゲーム有害指定」』 完全版は左記リンクから購入できますが、5年前の記事ですが、この後どうなったのか、これからのことを考えるのに有用だと考え、僕が書いた本文だけは公開しちゃいます。

 今年5月、あるテレビゲームソフト神奈川県で「有害図書類」の指定を受けた。地方自治体条例で規定される有害図書類指定とは、悪影響となる恐れがある書物・映像作品を、18歳未満の青少年に販売することを禁止するものだ。

主に成人誌など性的表現を扱う媒体になされてきた措置で、テレビゲームソフトを指定したのは、神奈川県が全国で初となった。

有害指定」を受けたのは、米国ロックスターゲームス社が開発したグランド・セフト・オートⅢ」(GTAⅢ)。日本国内ではカプコンが「大人のエンターテインメントの形成を狙い」、

プレイステーション2用のソフトとして2003年に発売した世界で1000万本売れている大ヒット作で、国内での販売数は35万本とスマッシュヒットとなっている。

ゲームは、マフィアギャングの依頼で盗みや殺人破壊工作を含むさまざまなミッションをこなすというストーリーで、「バイオレンスアクションゲーム」というジャンルに属する。

GTAⅢが「有害」とされた理由は、これまでのような性表現はなく「暴力・残虐表現」なのである

 テレビゲームは通常、ゲームの本筋から外れる動きはできない。モンスターを攻撃することができても、それ以外の対象を攻撃したり、商店を襲って商品を強奪することは不可能だ。

しかし、GTAⅢはプレーヤー自由度が非常に高く、本来マフィアと戦うはずの主人公が、意味もなく通行人射撃したり、バットで殴りかかったりすることができる。究極的な高いリアリティーを誇っており、そのゲームシステムは当時高く評価された。

 家庭用ゲーム業界団体であるコンピュータエンターテインメント協会(CESA)は毎年、優れたゲームソフトを表彰しているが、GTAⅢは03年度の優秀賞3作品のうちの一つに選ばれたほどだ。

ところが、過激な暴力表現を含むその内容は倫理観などの観点から物議を醸し、青少年がこうした内容のゲームをプレーすることで、何らかの犯罪を誘発するのではないかとの声が一部で囁かれ始めた。

これらの声は、GTAⅢのヒットとともに大きくなり、主に児童保護団体などが自治体規制を呼びかけ、神奈川県による有害図書類指定へと結びついたのである

規制必然性は 十分に議論されたか

〝残虐ゲーム規制〝の動きは各地へ波及している。神奈川県に続いて埼玉県9月GTAⅢを有害図書類に指定。東京都大阪府京都府などもテレビゲーム規制について検討に入った。

だが行政機関による規制を問題視する意見は強い。

GTAⅢは、ゲーム業界関係者などの専門家を含まない児童福祉審議会メンバーによって、「あんな酷いもの子どもにさせるのは良くない」という、非常に観念的な基準に基づいて「有害認定」されたといえるからだ。

しかテレビゲームが与える影響について、科学的な根拠が提示されたわけではない。残虐・暴力表現を含むテレビゲームが、青少年に悪い影響を与えるか否かは、諸説飛び交う微妙なものであり、とても十分な議論を経たとは言えない。

また、わざわざ行政規制を行うことの必然性もきちんと議論されていない。

家庭用ゲーム業界は、コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)という特定非営利活動法人(NPO法人)により、ゲームの内容によって、対象年齢別にソフトを分類する「レーティング」を行っている。

レーティングによって、ゲームソフトは「全年齢対象」「12才以上対象」「15才以上対象」「18才以上対象」の4種類に分けられ、現在ほぼすべてのソフトパッケージに、その年齢以上の表現が含まれることを示すシールを貼っている。

GTAⅢも「18才以上対象」のソフトとして販売されていた。

しかし、CEROのレーティングはあくまで、その年齢層への〝推奨 でしかなく、対象年齢以外の顧客に販売することを規制するものではない。

神奈川県をはじめとする行政サイドは、この点を突き、「有効性に乏しい」として規制に乗り切ったわけだが、こうもあからさまに家庭用ゲーム業界の自主努力を無視しては、反発を招くのも当然だ。

経済的な影響もどこまで考慮されたかは疑問だ。家庭用テレビゲーム市場は、国内だけで4000億円規模の巨大なマーケットである

規制される恐れがある」という事実は、これまで、ある程度自由にユーザーニーズを追ってきたメーカーの大きな足かせとなることは明白である

任天堂ファミリーコンピュータ(ファミコン)以来20年間、家庭用ゲーム業界が年月をかけて模索してきた「面白いゲーム」が制作しづらくなるのだ。

CEROのレーティングで『18才以上対象』の指定を受けることは大ダメージ

一部の大手量販店では、『18才以上対象』のソフト最初から仕入れないところもあり、それだけで当初の見込みより販売本数が大きく落ち込むこともあり得る」。大手メーカーマーケティング担当はこう本音を語る。

「推奨」に過ぎない自主規制の枠内ですらこうなのに、行政お墨付き規制が行われたら、どのくらいの機会損失が発生するかは想像もつかない。

法的規制による「解決」で思考停止に陥る危険

拙誌の『隔月刊ゲーム批評』(05年11月号)において、お茶の水女子大学坂本教授は、テレビゲーム有害図書類指定について、以下のように問題点を指摘している。

「第一に、表現の自由侵害する。第二に、クリエーター育成の障害になる。自分仕事法律違反背中合わせの状況では、クリエーターは十分に創造性を発揮できないであろう。

第三に、思考停止をもたらす。法的規制によって、『ゲーム悪影響問題』は法律で解決するものと捉えられるようになり、多くの人々がこの問題にどのように取り組むかについて考えたり、議論することを止めてしまう」

特に注目すべきは、3点目の「思考停止である坂本教授は「ゲームに限らず、さまざまなメディア・作品とうまく付き合えるようにする『メディアリテラシー教育』を重視すべきだ」と続けている。

規制に伴う思考停止は、こうした教育の機運も損なわせる恐れがある。もう一度考えておきたいのは、「暴力・残虐表現のあるテレビゲームをプレーすることは、本当に青少年に悪影響を及ぼすのか」ということだ。

ゲームの悪影響」を叫ぶ動きはファミコン時代からあった。凶悪な少年犯罪が発生するたびに、テレビゲームマンガアニメなどと共に槍玉に挙げられてきた。

容疑者の部屋からは、残虐表現を含むテレビゲーム発見され、さらにそのゲームを好んでプレーしていたという「事実」がマスコミ報道される。

GTAⅢも今年2月大阪府寝屋川市で起きた教職員殺傷事件で逮捕された少年が好んでいたとされる。

だがゲーム機を所有していない子どもは一体どのくらいいるのであろうか。家庭用ゲーム機世帯普及率は70%以上ときわめて高く、持っていて当然である

GTAⅢと同様、残虐表現を含むとして問題視される「バイオハザードシリーズは、各作品とも国内だけで100万本クラスのヒット商品だ。

家庭用ゲーム機所持者の大半は、バイオハザードシリーズのいずれかの作品をプレーしたことがあると言っても過言ではない。本当にテレビゲームソフト子どもに悪影響を与えているのなら、少年犯罪はもっと増えることになる。

議論に参加できない青少年

技術の発展によりテレビゲーム表現や描写は、現実と見まがうほどリアルになってきた。それが現実バーチャル世界の混同を招き、ゲーム世界を模倣した凶悪な犯罪を発生させる引き金となることは、可能性として否定できるものではない。

ゲーム制作するメーカーは、こうした点も憂慮し、確たる倫理意識を持って青少年に有意なテレビゲーム提供する責任について、考えていかなければならないだろう。

また、今回の行政による規制が家庭用ゲーム業界の危機感を煽り、大きな問題提起となった側面もある。

CESAといった業界団体は、GTAⅢの有害図書類指定を受けて、明らかに18歳未満とわかる購入希望者には「18才以上対象」ソフトを販売しないなど、より強制力の強い自主規制プランを発表し、その実施を販売店各社に要請した

今後、行政と家庭用ゲーム業界の間で共に「テレビゲーム有害性と規制」について、大いに議論がなされるのであれば、今回の規制は良い結果を生むことだろう。

ただし、「臭いモノには蓋をする」だけの場当たり的な規制しかないのであれば、やはり強制的な法規制はあまりにも問題が多い。

表現言論の自由の尊重という観点や、ユーザーニーズを満たせずに産業として衰退する可能性という、経済的な視点からすれば危険ですらある。

そして議論の場に、「悪影響」を受ける対象者である青少年の声を反映させなければならない。

今回の論争は、筆者のような「大人になったファミコン世代」と「ゲームを知らない世代」ばかりが熱い論争を繰り広げ、肝心の対象者が置いてきぼりになっている。

最大の問題は、当事者を無視してすべてを進めようとする感覚はないだろうか。

 
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