はてなキーワード: 国立国語研究所とは
去年、「日本語の原郷」についての論文(Robbeets et al. 2021)が話題になった。増田は専門外の素人ながら疑問を持ったのでツッコミを入れたんだけど(anond:20211121124146)、今年の6月に入って専門家集団から「あの論文は取り下げろ」という反論論文が出ていた(Tian et al. 2022)。といっても、プレプリントサーバのbioRxivに置いてあるだけで、学術誌に掲載されたわけではないんだけど、まあいずれどこかには載るよね多分。
そういうわけで、反論論文の内容を(素人なりに)紹介していくよ!
ふええ……知らない人ばっかりだよぉ……
22人の共同著者による論文だけど、その多くは中国人研究者。ほかは数人のヨーロッパ人。中国人研究者については全然わからない。漢字で書かれれば一人か二人は名前を聞いたことがある人がいるかもしれないけど、ラテン文字で書かれているので誰が誰やらさっぱりなんだよな……
ヨーロッパ人研究者のうち、ラッセル・グレイ氏は聞いたことがある。20年くらい前に『ネイチャー』に印欧語族の起源に関するレター載せてた人だ(Gray and Atkinson 2003)。ホセ・アロンソ・デ・ラ・フエンテ氏は以前ロベーツ氏の著書に辛辣な書評書いてた人で、去年の増田でも引用した。
そしてトマ・ペラール氏は、日本では有名な研究者だ。彼は宮古島の北4キロに浮かぶ人口数十人の離島大神島の方言について博士論文を書き、それが「母音あるいは声帯を震わせて出される音を含まない単語がある」という世界でも珍しい特徴を持った言語であることを明らかにした(Pellard 2009: 80–85;ペラール 2011: 28–29)。ペラール氏は母語のフランス語だけでなく英語や日本語でも論文や共著を発表していて(最近だとペラール 2021とか)、琉球諸語の言語復興についても発言しているので(ペラール 2013; 2015)、琉球諸語に関心を持って調べたことがあれば一度は名前を聞いたことがあるはずの人物だろう。
要するにこの反論論文には、そのへんの日本人よりはるかに日本語に詳しい研究者が参加しているってこと。
反論論文は、ロベーツ論文で挙げられている同根語(cognate words)が少なすぎると指摘する。
同根語というのは、「起源を同じくする単語」のことだ。ある言語から分かれた娘言語たちは、いずれも共通した同根語を(二次的に失ったのでなければ)持っているはずだ、というのが比較言語学の基本的な考え方だ(生物学でいう原始形質/祖先形質にあたる……と思う。多分)。もちろん、偶然の一致とか、言語の場合は借用語とかがあるので、言語学的な検討を行って「これは祖語から受け継がれた同根語である」というのを確定させて、それをもとに言語の系統関係を判断していく。
たとえば印欧語族だと、次のような対応関係が見いだせる(例はウィキペディアの「印欧語彙」のページから持ってきた)(*がはてな記法の一部と認識されちゃうっぽいので*で代用)。
- | 印欧祖語 | 英語 | ラテン語 | サンスクリット語 | トハラ語 |
父 | *pH₂tér- | father | pater | pitṛ́ | pācar |
2 | *dwóH₁ | two | duo | dvā́ | wu |
足 | *ped- | foot | pēs | pā́d- | pe |
馬 | *ék̂wos | 古英語eoh | equus | áśva- | yuk |
複数の語派(語族の下位区分)にわたって対応する語彙が存在することがわかると思う。これらの同根語が存在することで、「英語とサンスクリット語は親戚なんだなぁ」というのがわかるわけだ(お墓に卒塔婆って置いてあるじゃん。あれに書いてあるのがサンスクリット語)(足で操作する機構を「ペダル」といったり歩行者デッキを「ペデストリアンデッキ」といったりするのは、英語のfootに対応するラテン語pēsからの派生語なんだよね)(「父権主義」が「パターナリズム」になるのも、英語fatherに対応するラテン語がpaterだから。これがポルトガル語でpadreになり、そこから日本語に入って「ばてれん」になるわけですよ)。
ついでに日琉語族の表も示しておく(Vovin 2017)。基礎語彙において規則的に音韻が対応しているのは、これらの一致が偶然ではなく日本語と沖縄語が親戚であることの動かぬ証拠だ。
- | 標準語 | 沖縄語(首里) |
これ | kore | kuri |
鳥 | tori | tui |
米 | kome | kumi |
場所 | tokoro | tukuru |
しかしロベーツ論文は、ひとつ以上の語族でみられる同根語が317、2つ以上の語族でみられる同根語がわずか50、そして5つの語族で共有されている同根語はたったの2つに過ぎないという(Tian et al. 2022: 2)。思い出してほしいんだけど、ロベーツ論文はテュルク・モンゴル・ツングース・朝鮮・日琉の計5語族が同一の起源を持つと主張しているのね。なのに5語族で共有されてる同根語はたったの2ってどういうこと? って話になるでしょ。全然「トランスユーラシア語族」の証拠になってないじゃん。
っていうか、その50個の同根語リストの中には、ロベーツ氏自身が「これは借用語だよ☆」って書いてる単語が入ってるんだってさ。借用語は除くというのが比較言語学の基本なのに(借用語だと気づかずにリストアップしたならまだしも)借用語だとわかった上でリストアップするのヤバくない? そんなこと言ったら日本語が英語の親戚になっちゃうよ? 大丈夫?
反論論文の著者たちはこれに激おこぷんぷん丸になっていて、ロベーツ論文の「著者たちは彼ら自身の歴史的言語比較の原則を無視し、証拠を彼らの必要にあわせて歪曲している」(Tian et al. 2022: 3)とまで断言している。そりゃ、借用語混じりのたった数十の同根語で「トランスユーラシア語族は、ありまぁす!」って言われたらそう言いたくもなるわな。
遺伝学的にも、ロベーツらの論文は「不当な仮定(unjustified assumption)と、移民についてのありえそうな他の仮説を排除した選択的モデリング」に基づいているとバッサリ。考古学的証拠も「弱い」と切り捨てている。このへんは遺伝学や考古学に詳しいはてなーに解説をお願いしたいところ。
ロベーツ論文の結果を再現しようという我々の試みは[言語・遺伝・考古の]3つすべての面で重要な不一致をみた。さらにいえば、ロベーツ論文はこれら3分野の研究成果を統合するために「三角測量」を用いたと主張するが、その「三角測量」とやらの手法を定義も記述もしていない。したがって、彼らの手法に従って3つの分野に関する訂正を組み合わせることも不可能だ。つまるところ、我々が行った3つのデータセットすべての再検討は、ロベーツ論文の主張を完全に崩壊させた。トランスユーラシア仮説は未実証である。私たちはこの論文を取り下げるよう謹んで勧告する(Tian et al. 2022: 7)。
要するにアルタイ語族2.0は失敗したってことっすね。ロベーツ氏は「民族主義的な議題を持つ人々にとっては、自分の言語と文化の起源が国境の向こうにあるということは不快な真実だが、すべての言語と文化、人間は混じりあっている」って言ってたらしいけど、まずはご自分の仮説がボロボロだという不快な真実に向き合ってほしい。
こんなガバガバ論文を載っけちゃった『Nature』については、まあ……仕方ないところもあるのかな? ちょっとでも言語の系統とかに関心を持っている人なら「これアルタイ語族2.0じゃん」と気づける内容だけど、理系の雑誌の編集者にその目利きを求めるのも酷かな……査読者選ぼうにも誰がこの分野の権威かすらわからんだろうからな……ただし『トランスユーラシア語族ガイドブック』なんてものをホイホイ出版したオックスフォード大学出版会テメーはダメだ。お前んとこは人文系の研究書いっぱい出してるんだからアルタイ語族2.0くらい見抜けるだろうが!
なお、ペラール氏のツイッター(@ThomasPellard)を見たら「そもそも論証の基盤になってる語彙の出典が書いてないやんけ。これスタロスチンが作ったデータベースからのコピペじゃね? っていうかいくつかの言語が対応表に載ってないから同根語を検討できないんだけど?」という趣旨のツッコミをしていた(https://twitter.com/ThomasPellard/status/1536288665936306176)。あっ……(察し)
そろそろ凱旋門賞ですが、タイトルホルダーくん楽しみですね。天皇賞(春)と宝塚記念の圧勝劇(+お姉ちゃん)ですっかりファンになりました。ロンシャンでも逃げ切ってほしいですね。ただ背負ってる期待が大きすぎるドウデュースくんにも勝ってほしい……武豊を凱旋門賞に勝たせるために生まれてきた馬になったら胸熱すぎるでしょ……
あと先日のセントウルステークスは感動で泣きそうになりました。桜花賞のころから推してたので……(ソングラインちゃんも安田記念戴冠おめでとう。BCマイル頑張れ!)。スプリンターズステークスで今度こそ待望のG1制覇を成し遂げてほしいですね……
ユキノビジンは! 引けませんでした!(すり抜けで夏服メジロドーベルとサクラチヨノオーが来たのでまあ良し)
これ見落としてましたわ。教えてくれて感謝。こちらの方がわかりやすいのでみんなペラール氏の解説動画を見てクレメンス。
博士号って持ってないからわからないんですけど食べられるんですか? ご飯粒よりおいしいんですか?
ここでもいくつか紹介されているようにトマ・ペラール氏は日本語でもいろいろ書いているしTwitterやAcademia.eduなどでも積極的に情報や研究を公開していて我々素人にとってはとてもありがたいです
ペラール、ヴォヴィン、ローレンスの3氏は色々academia.eduに上げてくれてて助かりますよね。ところで素人とはいったい……うごごご。
有り難い要約だけど、最後の「アルタイ語族2.0」だから胡散臭い、という部分はやや迂闊かと。当該論文はそうでなさそう、というだけで真に画期的な論文によりアルタイ語族が復権することは可能性としてはあるよね
もちろんそれはそうです。ちゃんとした比較言語学的な手法で「アルタイ語族」の存在が実証できるのならそれは歓迎すべきことで、その可能性は残されています。ただ、これまで数百年にわたって研究が続けられてきて熱心な擁護者も大勢いるのにまだ確固たる同系の証拠が出てきてない、というのは相当に重い事実ですよね……。ロベーツ氏は「民族主義的な議題を持つ人々」のことを揶揄してますけど、日琉語族の分類というのはまさにその「自分たちの言語はどこから来たのか」というルーツ探しの情熱に取り憑かれた人たちがいっぱい研究して、それでもなお結論が出ていないテーマなわけで(cf. 日本語の起源 - Wikipedia)。
増田はドシロートなんでなーんも独自の見解は持ってないですが、古代ロマン的な観点からはanond:20211121124146でも言及した大陸倭語仮説が面白そう(「大陸倭語」の存在はまだ定説にはなってないことに注意)。島嶼倭語(仮に「大陸倭語」の存在が実証されない場合は日琉語)のUrheimatは五十嵐氏の指摘に沿えば近畿地方のあたり(多分四国ではない)。日琉語族が列島と半島にまたがって分布していて、そのうち大陸倭語が南進してきた朝鮮語族に同化されたと考えると古代の日本と朝鮮半島との関わりに色々納得がいく(繰り返すように素人が古代ロマンといくつかの論文に基づいて妄想したものです)。では仮に対馬海峡をまたいだ日琉語族の存在が実証されたとして、そのUrheimatは……どこでしょうね? なんもわからん。
あ、トラバでやたらゲノム研究のURL貼ってる人は、(もし同一人物なら)去年の議論で血統と言語系統を混同したり(anond:20211121201022)、論文や増田の内容を理解できてなかったりする(anond:20211121224311)ような人なので、マトモに相手する価値はないっすよ。一応ご忠告。
↓↓
ギラヴァンツ北九州のサポーターが横断幕や旗、チャント(応援歌)に使用していた「ぶちくらせ」という言葉だ。クラブとサポーター団体の双方に言い分はあり、その溝は非常に深い。
そもそもこの「ぶちくらせ」とはどんな意味があるのだろうか? 方言学者に語ってもらった記事を引用させてもらおう。
【国立国語研究所の木部暢子教授(方言学)によると、「くらす」には「倒す」だけではなく、「殴って倒す」という意味も含むという。「不良が『くらすぞ』と言うときは、『ぼこぼこに殴るぞ』という意味合いで使っている」。強調語の「ぶち」が、「くらす」をさらに強めており、木部教授は「応援にはふさわしくないのでは」。】
「『日本語の原郷』についての論文を読んでみた」(anond:20211121124146)を書いた増田です。思ったより多くの反応があって嬉しいので、調子に乗ってはてブの反応に対して補足説明みたいなのをしてみます。
そもそも言語学では分かりようがないところを考古学と遺伝学の視点からも補正したっていうのがあの論文の眼目だと思うので、言語学の面だけ否定しても…
こういう意見がみられましたが、少なくとも考古学や遺伝学の成果からは言語については何もわからない、ということを強調しておきます。
極端な例を挙げると、100年前にアメリカに移住した日本人の子孫で、ご家庭でも英語しか使っていない日系アメリカ人のことを考えましょう。彼もしくは彼女は遺伝的には日本列島に遡ることができます(おうちを探すと日本列島由来の品が出てくるかもしれません)。では言語的には? 彼もしくは彼女が話しているのは英語であり、英語というのは印欧語族ゲルマン語派西ゲルマン語群アングロ・フリジア諸語に分類されるイングランド発祥の言語であるわけです。どれだけ遡っても日本列島には行き着かない。「この人は遺伝的には日本列島の出身なのだから、英語の起源も日本列島にあるんだ!」なんて話はおかしいでしょ?
古代にどのような人口の変動があったのかはわかっていません。移民や同化が起きたのかもしれない。婚姻によって遺伝子が混ざりあった可能性もある。その場合、遺伝子の伝播と言語の伝播が異なるルートである可能性もあります。遺伝子はヒトの移動について詳しく教えてくれるけど言語の移動についてはなんも教えてくれないんですよ。せいぜい傍証になるだけ(「言語学の観点からは○○語は××地域あたりが原郷だと思われるが、遺伝学で調べてみたら××地域からの大規模な人の移住があったっぽいので、このときに言語も広まったんだと思われる」みたいな)。
様々な仮説があるのはいいけど、定説化とか定説がエビデンスによって覆されたとか以外はニュースバリュー無いと思うんだが、なぜ報道されたのか。
いやー、Natureにマックス・プランク研究所の研究者が載せた日本に関する斬新な論説をニュースにするな、という方が無茶じゃないでしょうか……
正直、これメディアを責められないと思うんですよね。実は著者のロベーツさん、去年オックスフォード大学出版会から『オックスフォード版トランスユーラシア語族ガイドブック』なんて本を出してるんですよ(Robbeets and Savelyev 2020)。天下のオックスフォードUPから『~語族ガイドブック』なんて出てたらその語族の実在は学界の定説になってるって勘違いしちゃうのも当然っていうか……これ、今回は日琉語だから気づけたけど、パプアニューギニアの言語とかでやられたら引っかからない自信ないです。
なおその『ガイドブック』には辛辣な書評が出てます(Vovin 2021)。掻い摘んで批判の内容を紹介すると、「分析されてるのが現代語ばっかりやんけ」「系統関係があるって言うなら明確な対照表を示してみろや」「中期朝鮮語の再建がおかしいけどちゃんと韓国語の先行研究読んどるんか?」「“leading international scholars”が書いたガイドブックって謳ってるけど著者のうち6人は院生じゃねーか」みたいな感じです。さらには、
We move now from the bad quality of research to the realm of science fiction in Table 39.1 that is supposed to present core Koro-Japonic etymologies. But there is at least one mistake and/or data fabrication on every line. (Vovin 2021: 126)
これは元増田でも書きましたが、大野晋は、少なくとも日本語の起源という点については完全にトンデモです。
タミル語はドラヴィダ語族というインド南部の語族に属する言語ですが、大野は「日琉語族とドラヴィダ語族はより大きな語族に内包される」というありえそうな穏健な主張ではなく「日本語の起源はタミル語である」という主張をしています。しかし「なぜドラヴィダ語族全体ではなくタミル語と比較するのか」「ドラヴィダ語史がまったく考慮されていない」「語義の解釈がおかしい」「サンスクリット語からの借用語に気づいていない」などのツッコミに対して有効な反論ができていない上、ツッコミを受けた箇所をしれっと書き換えたりツッコミを入れた人たちに人格攻撃を加えたりしています(長田 1998;児玉 1996;山下 1996; 1998)。やり口がもうきちんとした学者のそれではありません。
大野の語源論が誤っている一例として、amarar「不死なる者」という単語について挙げておきます。大野はこれを日本語「あま」と関連付けて「天上界の人」の意だと解釈するのですが、これはサンスクリット語amara「不死の」からの借用語です。これはさらにa-maraと分解でき、a-は否定の接頭辞、そしてmaraの語根mrは英語murderやmortalとも関連しています(つまり、印欧祖語に遡る語ということであり、どう考えてもタミル語起源の単語ではない)(山下 1996: 204–205)。
日本祖語から琉球語、もう片方の枝が本土語と八丈島語に分かれた系統図を覚えてたんだが、あれからずいぶん研究が進んでるんだなあ。/20年前に既にずいぶん版を重ねた本で得た知識だから当然か…。
五十嵐(2021)の説は発表されたばかりなので「定説」といえるほどではないですが、きちんとした分岐学的手法に基づいて系統解析してるんで個人的には信用してます。
で、従来説における八丈語の位置づけですが、正確には、「上代東国語の唯一の生き残りが八丈語」というものです。つまり、「本土日本語派」がまず上代日本語(OJ、奈良など当時の首都で使われていた言語)と上代東国語(『万葉集』の東歌と防人歌に痕跡が残る)に分かれ、後者が八丈島(&青ヶ島)以外では滅んだ(=上代日本語に同化された)ため、現代では八丈語が日本語と対立するひとつの語派を形作っているということです。
系統樹にするとこんな感じ(樹形図をどう書けばいいのかわからないんでとりあえず「うんこするの?」の樹形図からコピってきたんですが、見づらかったらすみません)。
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この樹形図から絶滅した言語を取っ払って現代語にのみ注目するとこうなります。
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├─八丈語
それに対して、五十嵐(2021)は、上代東国語は滅びたわけではなく、表面上は関西からの影響を受け続けたものの、現代の関東・東北地方の方言として生き延びていると主張しています。つまりこういうことです。
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八丈語が際立って特殊に見えるのは、この言語が失われた東国語の唯一の生き残りだからではなく、他の東国語の末裔(茨城弁とか)と比べて中央からの影響が少なかったため東国語の特徴が保たれたおかげだ、とするのが五十嵐説です。
要するに、「東国語は滅んだ(=東国語話者が完全に同化された)」のか(従来説)、それとも「東国語は生き残っている(=東国語話者は中央からの影響を受けたけど完全に同化されはしなかった)」のか(五十嵐説)、という違いです。個人的には後者が妥当じゃないかなーと思うんですが、どうでしょうか(だってそんな大々的な言語置き換えはどうやって起きたの? ってなりません?)。
なお、五十嵐(2021)だけでなく、元増田でも言及したローレンス(2013)も、八丈語には他の東日本の諸方言と共有される要素が見つかり、それは西日本の諸方言には見られず、したがって八丈語は東日本の諸方言の内に位置づけられる(=八丈語と本土日本語が対立する系統であるとする旧来説は誤り)と主張しています。
”日本語に興味のある&研究手法を学んだ”素人には、この論文の言語部分はとても怪しい。増田の指摘以外に日本語の粟を他言語の大麦の借用としたり、味噌(未醤)を漢語ではなく朝鮮祖語からの借用にしたりしてる。
実は増田もそれを見たとき「えっ……?」って思ったんですが、否定できるほどの根拠を持ってないので書きませんでした。確かに先行研究では意外な言葉が朝鮮語からの借用語だとされてることがありしょっちゅう驚いているので(たとえば「つち」とか)、「味噌」が朝鮮祖語からの借用というのをありえないと即断することはできないんですが……。
いちおうここで論文の内容を紹介しておくと、『鶏林類事』に[mitsu]という語があって、そこから朝鮮祖語*micuを導き、平城京の木簡にみえる「末醤」から上代日本語の*misoあるいは*misəを再建し、それは朝鮮祖語*micoもしくはその交替形*micʌからの借用である、という議論になってます。これだけじゃ門外漢の増田には当否がわからんのですが国語学的にはどうなんです?
なお、該当箇所に、
...This fragment preserves the following inscription: 御末醤一石二斗, i.e. HON-“bean paste” reads as miso. The Wamyoshō, a Chinese to Middle Japanese dictionary compiled in the mid Heian period has the same kanji (末醤) glossed as miso (美蘇)...
とあるのですが、「一石二斗」の部分いらなくね? とか、転写するならWamyōshōじゃね? とかはケアレスミスの範疇だろうから突っ込まない方がいいのかな……
マイルCS、グランアレグリアが有終の美を飾ってくれて最高でしたね……あとはコントレイルがジャパンCで有終の美を飾ってくれれば……実はまだ「三冠馬が勝つ」ところを見たことがないので、一度は見ときたいなぁと(にわかですいません)。
本当に素人なんだけど何でみんな信じてくれないんです……?
高級食パン店の「銀座に志かわ」が気に入らない。気に入らないのは食パンやお店のサービスなどではない。店名の表記だ。なぜ「志」だけ漢字なのか。
このうち、現代でふつうに使われるひらがなには「あ~ん」の46字とそれらに濁点/半濁点をつけたもの、促音や拗音を表す小文字がある。
現代仮名遣いではあまり使われないが、ワ行の「ゐ」「ゑ」もひらがなとして認知されているだろう。
「現代でふつうに使われるひらがな」などと持って回った言い方をするのには理由がある。「変体仮名」という種類のひらがながあるからだ。
実は明治時代以前にはひらがなは約50字+それらのバリエーションなんてものではなく、とてもたくさん種類があった。
ひらがなが漢字を崩したものからできたということは国語の授業で教わった記憶があるかもしれない。
現在使われる「あ」は「安」を、「い」は「以」を崩してできている。
明治時代以前には「ア」のバリエーションとして「安」を崩したものの他に「愛」や「阿」などを崩したものも使われていた。
「こんなにたくさんひらがなの種類があると学校で教えるのが大変だし、ひらがなの種類をたくさん教えるよりはもっと他のことを教えるべきだ」ということで、1900年に小学校令という法令の施行規則を改正し、ひらがなを現在の1音1字に整理した。
これ以降、学校教育ではひらがなが現在の約50字+αに制限され、整理されてしまったその他大勢のひらがなたちはだんだんと忘れられていってしまった。
そば屋ののれんで「生そば」とよくわからない筆文字で書いてあるなと思ったことがあるかもしれない。これは「そ」と「ば」がそれぞれ変体仮名で書かれている。
現行の「そ」は「曽」を、「は」は「波」を崩したものだが、よく見かけるそば屋ののれんは「楚」を崩した「ソ」と「者」を崩した「ハ」を使っている。
「者」を崩したというのはやや分かりにくい気もするが、「楚」を崩したというのは「言われてみれば『楚』かな」というくらいに原形をとどめていると思う。
長々と講釈を垂れてきたが、いよいよ「銀座に志かわ」の話に入る。
ここまでの説明でうすうす気がついたかもしれないが、「銀座に志かわ」の「志」は漢字の「志」ではなく、変体仮名の「シ」だと思うのだ。
現行の「し」は「之」を崩したものだが、変体仮名の「シ」には「志」を崩したものも含めてやはりバリエーションがある。
そば屋ののれんを文字に起こすとしても「生そば」とは書いても「生楚者゛」とか「生楚ば」とはしないだろう。
「楚」も「者」も特に意味があるわけではなく、単に音を表している記号だからだ。
漢字は一字一字に意味がある表意文字だが、ひらがなは単に音を表す表音文字だ。
要は「銀座に志かわ」には「銀座にしかわ」と表記してほしいのだ。
「銀座に志かわ」の店名の由来は社長の名前が髙橋仁志(ひとし)で、名前の「仁志」を「にし」と読ませて、水にこだわっているから「川」をひらがなでつけた、ということらしい。
https://www.ginza-nishikawa.co.jp/company)
そしたらせめて「銀座仁志かわ」にしてほしかった。ちなみにひらがなの「に」は「仁」を崩したものだ。
店名のロゴをデザイナーか書道家に依頼したら、上の由来を含めて「シ」を「志」の変体仮名で書いてきたけど、志の崩し方が漢字の原形をとどめているので「ふーん、志だけ漢字にしたんだ」という感じで「銀座に志かわ」の表記になったのではないか。
パン屋としての「志」を込めて、というよりは近代の国語教育の敗北のような気がするのだ。
余談だが、同じ高級食パン店に「乃が美」という店もある。こちらも「変体仮名を知らずに漢字にしたのか」と気に入らなかったのだが(「の」は「乃」を、「み」は「美」を崩したひらがなだが、「乃が美」のロゴは漢字の原形をとどめた崩し方になっている)
「乃」~それは、「すなわち、まさしく」という意味。
「美」~それは、「姿、色が美しい、感動、美味い」という意味。
その揺るぎない信念を、『乃が美』の社名に込めております。
という由来があるらしい。
https://nogaminopan.com/about/
こちらには「乃」と「美」を漢字で表記する意味があるのかもしれないと思って納得した。
ちなみに乃が美は2013年、銀座に志かわは2018年の創業だ。
変体仮名はその経緯もあって、いわゆる老舗の屋号によく見られる。
高級食パン店が変体仮名(と思われる)表記を使いがちなのは、なんとなく高級感を演出する道具として変体仮名の筆文字を使っているからなんじゃないかと思っている。
日本語の表記には寛容でありたいと常々思っているのだが、どうも変体仮名を中途半端に漢字で書くのは気持ちが悪いと思ってしまう。
「銀座に志かわ」そのものが嫌いということではまったくないし、おいしいパンをどんどん売ってほしいと思っている。
こんな釣りみたいなタイトルの記事にして申し訳ない気持ちもあるが、ずっとむずむずしていたのだ。許してほしい。
変体仮名については国立国語研究所のYouTubeがわかりやすい解説動画を公開している。3年前の動画なので、パソコンでの文字入力についての内容はやや古くて、現在はもう少し話が進んでいる。
独立行政法人情報処理推進機構と国立国語研究所がパソコンで変体仮名を入力するために整備した事業の成果も公開されていて、変体仮名の一覧が見られたり検索できたりする。
https://cid.ninjal.ac.jp/kana/home
初学者向けの変体仮名学習アプリもここ数年でいくつか登場した。早稲田大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校が開発したもの(https://www.waseda.jp/top/news/34162)は洗練されていてかっこいいし、大阪大学が中心になって開発したもの(https://kula.honkoku.org)は練習問題など機能が充実している。
変体仮名に慣れるとお店の看板だけでなく、美術館や博物館の展示などでも読める範囲が広がる。某大佐ではないが「読める!読めるぞ!!」となるのはとても楽しいので気が向いた方はぜひ挑戦してみてください。
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所の『国語に関する世論調査』平成25年度版報告書では、平成14年度、平成20年度、平成25年度の比較として、各年齢別に一か月に本を一冊も読まない者、いわゆる不読者の調査結果を問10に載せている。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf
これを見ると、分かることの要点は4つ。
その1、不読者は一貫して60歳以降の高齢者が多い。
その2、全体的に不読者の割合は平成14年度から増加している。
その3、10代後半と高齢者世代は平成20年度と比較すると不読者割合が低下している。
その4、平成14年度で不読者の少なかった20~40代は、その11年後の平成25年度調査で30~50代になっているが、不読者の割合が10パーセント以上増えている。特に平成14年度の40代は高齢者世代よりも増加幅が大きい。
毎日新聞社と全国学校図書館協議会による歴史ある共同調査『学校読書調査』においても、小・中・高の児童生徒の不読者割合は低下し、平均読書冊数は増加している傾向がみられる。20代以降の場合は労働時間が、児童生徒の場合は学校での「朝の読書」の影響が第一に考えられるが、原因が何であれ変化は変化である。
最近は誤用とも言わなくなったとwikipediaにも載ってたような
誤用と言われなくなり使われるようになったって載ってたと思う
話は違うけど
はてなは書き方がめんどくさい
コピペしてトラックバックしなきゃならないの、何とかならないのかな
wikipediaは、好ましくないとか誤用の指摘とか書かれながら、倫理の欠如として用いられてる報告も書いてあります。
ここのキーワードのページにwikipediaへのリンクもありましたね。上でできたリンクはキーワードのページ直接じゃないのでそれも貼っておいた方がいいかな。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%a5%e2%a5%e9%a5%eb%a5%cf%a5%b6%a1%bc%a5%c9
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/asia/1266414530/251,320,342,344,359,369n
251 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 01:00:15 ID:4KTNNJ3G
ttp://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100218-OYT1T00028.htm
320 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 01:35:41 ID:HJoXvsnm
»251
全部廃止ですか・・・
342 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 01:46:45 ID:jtAsPC8B
»320
ソースありますか?
上田泰己さんのところですね。
344 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 01:51:00 ID:HJoXvsnm
»342
いやいや、ソースも何も、
359 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 02:00:23 ID:YS0taX5i
独立行政法人一覧
ttp://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/dokuritu_n/dokuhou_ichiran.html
でもって、
»251
>国が直接行う事業に移管する考えを示した。
>新たな形態の法人や独立行政法人として存続させることもあり得るとした。
分かります_________________
369 :日出づる処の名無し:2010/02/18(木) 02:16:08 ID:YS0taX5i
なんかワクワクしてきた_________