はてなキーワード: 仕業とは
「今日は増田さんのシフトの間にドリンクの補充をしてもらいたいので、上着を持ってきてください」
普段は夕勤の時間はバイトの人数が少なく来客は多いので、ドリンクの補充はあまりやらない。やるとしてもAさんが大体やってるので、私はほとんど手をつけないのだが、この日はBさんとのシフトだったので、私に仕事が回ってきたのだ。
ところが、出勤してみたところ、ドリンクはそんなに減っていなくて、補充はしなくてよさそう。申し送りのときに昼勤のパートさんに聞いたところ、昼間はあまりお客様が来なかったので、ドリンクもほとんど減っていないのだが、ウォークインに入ると「うっ……!」ってなるほど庫内がぐっちゃぐちゃになっているので、たぶんオーナーは補充というより庫内の片付けをやって欲しいのではないか? とのこと。
オーナーの指示通りに、夕方のピーク後にウォークインの片付けに入ったが、庫内に足を踏み込んだとたん、「うっ」というより「ひえぇ!」ってなった。すげえごちゃごちゃだった。
幸い、ドリンクの在庫はそんなに多くなかったが、中途半端に開封されたケースがそこかしこに積み上がっていた。たった三本くらいを取り出すために箱の蓋を半分だけ開ける。これはAさんの仕業以外の何物でもない。そういえば、Aさんは週末に連休を取らせてもらう代わりに、ここ数日は三~四連勤だと言っていた。
数本抜いただけの箱を乱雑に堆く積むことによって、積んだ箱のバランスが崩れて落下し、大惨事が起こることがある。だからそういう半端な仕事はやっちゃダメだと何度も言われているのに、Aさんはやる。それを「効率がいい」とAさんは思っているのだ。
半端に開封されているのは、フルーツティーやレモンティーの高さの低くてぶっといボトルのやつで、これは当店では売れるほうの商品ではないのだが、Aさんはこれらを「全然売れない」と決めつけている。それで、夜勤の間に欠品させてもオーナーから怒られないだろうと踏んで、わざと二、三本しか商品棚に補充せず、残りを在庫棚に仕舞うこともせずに、適当に放置する。それが三日か四日連続で繰り返されれば、庫内はぐっちゃぐちゃだ。しかも今週から夏休みなので、昼のパートさんの人数が減っており、ウォークインの片付けにまで手が回らないのだ。
夕方のピーク時も、ドリンクの売れ行きは今一つだったという印象だが、それでも少しは商品棚にスペースが空いた。まずはそこに在庫棚に置かれた商品を移し、在庫棚に隙間を空けてから、商品の位置を商品棚に対応した位置に並べ直しながら隙間を拡げる。パッと見では在庫棚には隙間なくギチギチに商品が詰まっているように見えるが、実は小さな無駄な隙間がそこかしこに空いていて、ちょっと商品を移動しただけでも、半端に開けられた数ケースぶんを全部仕舞い込めるだけのキャパがある。
幸い、Bさんが早めに出勤してきてくれて、フリーター女子バイトさんと二人でレジを担当してくれたおかげで、15分くらい私は片付けに専念できた。トータル30分ほどで、作業完了。みごとに放置されていた半端ケースの中身を全て在庫棚に仕舞いきっただけでなく、翌日のために必要なぶんのスペースも確保することもできた。
見違えるほどにスッキリしたウォークインの中。きったない場所を片付けるのは誰にどう誉められるよりも満足度が高いので、私はドリンクの補充とウォークインの片付け作業が嫌いではないのだが、Aさんに言わせれば私みたいなのは「無能の働き者」なのだそうだ。
けど、Aさんの独りよがりの「効率的な仕事」の尻拭いは全部他の時間帯にシフトに入っている誰かがしている訳で、Aさんは実質「無能のサボり人」だと私は思う。
昼勤午前に入っているベテランのパートさんはAさんに会っても挨拶すらせず、Aさんはあの人感じ悪いと言うのだが、おおかた、普段Aさんの雑な仕事の始末をしているのが彼女なのだろう。
他国で日本人が何かをやらかした時(記憶に新しい話題だと、トルコで猫食った日本人)、それを日本人の仕業だと素直に認めず、まず中韓の成りすましを疑う人たちが多すぎる。youtubeのコメントを眺めていると、一部とかでなく、4割くらいいる気がする。
これが自国内だけの閉鎖的なコミュニティでされる身内話ならまだしも、youtubeという世界にオープンな場で、それなりの数の日本人がそれをやってしまうという羞恥。しかも他国籍のコメントに対して直接「中韓の成りすましかもしれないんです!」とか言ってしまうこの有様。
あまりに感情的。恥ずかしすぎる。他国の日本人に対するイメージ悪化を心配する割に、そうした自らの行いがイメージ悪化を齎すとは思い至らないのだろうか。
疑いを持つことは自由だけれど、「犯人は日本人」という情報を現状確たる事実と信じるしかないのに、単なる疑い程度で「私たち日本人は悪くないんです!」なんて他国の人に言わないでくれ。頼む。そんな事言うの、たぶん日本人くらいだと思う。
他国の自国アゲの動画もコメント欄翻訳して見ることあるけど、他国民ってナショナリズムをちょっと忌避しがちな傾向で、自虐的だったりシニカルだったり、そうでなくてもとりあえずトピックに対して持論を冷静に述べているコメントが多いと思う。
それに比べて日本人、圧倒的に感情的自国アゲ。恥ずかしい。簡体字の荒らしコメントをバカにできない。せめて世界から見られる場所でそれをやらないでくれないか。
youtubeには外人による日本人アゲ動画が無数に蔓延っているけれど、そうした動画のコメント欄での日本人は特に振る舞いが恥ずかしくて見てられない。
ざっくり言うと、動画内での日本アゲにドヤ顔&日本アゲ&他国サゲをよくする。日本っていいよね、程度なら別にいい。しかし彼らは「自分たちも逆の立場にならないように省みないとね」「これからも恥ずかしくない振る舞いをしていこうね」といった風な俯瞰的視点から見た”学び”はほとんど持たない。自国アゲ動画は自身を肯定してくれる道具でしかない。
「日本人って謙虚で優しい!」みたいな動画のコメント欄にそんな高慢日本語コメントが蔓延っていると動画タイトルの否定の体現を秒で見せられた気分になる。何を隠そう、自分も日本人は謙虚で優しいなあと思っていたからこそ、コメント欄を見て「これのどこが謙虚?」と衝撃を受けた。
はじめは日本アゲの動画なんてさらさら興味なかったが、そうしたコメントをする日本人の多さに興味がわいて、コメント欄漁り目的でそれらを巡るようになった。明らかにウヨ向けなものは無視するけど、(比較的)普通のニュースでも他国と関わる且つ日本アゲの話題があるとご機嫌なコメントであふれかえる。SAN値と日本人としての尊厳がゴリゴリ削られる。いっそ気持ちいいくらい恥ずかしくなる。Mなのかもしれない。
この傾向はyoutubeだからこそだとは思う。はてなやTwitterには左右どちらも居るし議論も頻発する。youtubeの日本関連の動画にわざわざコメントする日本人は、他人の目を気にする割には、他人から自分がどうみられるか考えられない人が多いような気がしている。
捜査員がガルテン室内に入ると、その異様な臭いと光景で暫し立ち尽くした。
懐中電灯で照らされた暗い室内には、三つの乳幼児らしき死体が転がっていた。
腐敗が進み、白骨化が進んだ死体を見届けた後、奥の部屋から聞こえてくる打鍵音の方へ向かう。
奥の部屋には、物凄い形相でラップトップのキーを叩き続けるハンチング帽の男がデスクに座っていた。
捜査員員が声を掛けようとした刹那、ハンチング帽の男は突然金切り声で笑い始めた。
狂っている、そう感じつつもハンチング帽の男に語りかけた。
つづく
捜査員はハンチング帽の男に語りかけたが、男は不気味な笑みを浮かべたままキーを叩き続けるだけだった。
ラップトップの画面を覗くと、そこには何度も同じ文字が書き連ねてあった。
ーー何故、ぼくを置いて出て行った?
周囲には空の日本酒のビンが散乱し、ぷーんと酒の臭いが漂ってくる。
改めて懐中電灯で男を照らす。
崩れ落ちた男は白いシャツに花柄のスカートという異様な出で立ちをしていた。
「XXさんでよろしいですね?」
捜査員の問いかけに男はビクッと一瞬反応したが、そのまま動かなくなった。
顔を確認するため、ハンチング帽を取ろうとしたが何かで固定されているのかビクともしなかった。
少し力を入れて更に引っ張ると、鈍い音と共に大量の髪がハンチング帽と共に引き千切られた。
男の頭部が懐中電灯に照らされ、満月を思わせる煌々とした光を放った。
男はぶつぶつと呟き始める。
「ぼくの言う通りにやれば、サクッと月商百万は行きますねぇ。今ならこのnoteも貴方に百円で売ってあげましょう。
どうです?安いものですよ?」
つづく
ガルテンに捜査班が到達したのは、捜査員が連絡した1時間後だった。
ハンチング帽の男は、衰弱が激しいため救急車両に乗せられていった。
証拠品ではあるが、致し方ないだろう。
ハンチング帽の妻には直ぐに連絡が取れた。
麓の宗教団体の宿舎に世話になっているらしく、他の信者の付き添いがいる形での面会となった。
「あの人は家族を省みずパソコンに没頭していました。お酒が入ると豹変するんです。耐えかねた私は家を飛び出し、ここにお世話になりました。半年前くらいのことです。」
彼女は薄っすらと笑みを浮かべて、傍らの信者と寄り添っていた。
つづく
捜査員に鑑識からの連絡があったのは、宗教団体の宿舎を出て直ぐのことだった。
ハンチング帽の妻によると、娘が三人いるとの話だったが、おかしなことになった。
ーーーもう一人の女児がいない?
捜査員は意外な展開になったなと、急ぎ車を走らせた。
「春さん、遺体の検死結果はどうだった?」
袈裟春は神妙な表情で答える。
「ああ、遺体は三体とも他殺だった。
乳児は高いところから床に叩きつけられたようだ。死因は脳挫傷。
残る女児と男児は、共に斧の様なもので切りつけられたようで、死因は失血死だ。」
「他殺……ですか。」
捜査員は肝心の男児と居なくなっている女児について聞いてみた。
今、捜査班で手分けして女児の行方と男児の身元を聞き取り調査しているって話だ。」
袈裟春はそう伝えると、慌ただしく動く鑑識に指示を与え、部屋を出て行った。
捜査員はハンチング帽の男の様子を伺うため、取り調べ室に向かった。
つづく
取り調べ室の隣の部屋から、捜査員はハンチング帽の男の取り調べを眺めて居た。
ハンチング帽の男はうって変わって饒舌に取り調べに答えていた。
「やっこさん、ずっとあの調子なんですよ。
子供のことは全く知らぬ存ぜぬって感じで、自己責任とかよく分からないことを言うばかりで。」
ハンチング帽の男に依ると、子供は妻が連れて行った、自分へ全く知らないとのことだった。
男児のことも長女のことも全くわからないようで、ひたすらに自分の仕事の自慢を続けている。
「狂人ですね……。」
つづく
クラインガルテンから更に奥地にある荒地に建てられた小屋に、闇の中で蠢く何者かの姿があった。
人影が鈍く光る斧を翳すと、目の前の青年は驚きの形相でそれが振り下ろされるのを待つしか術はなかった。
あっと声をあげる間も無く、斧は青年の喉笛に一文字の醜い傷跡を刻みつけた。
その刹那、鮮血が宙を舞う。
崩れ去る青年は何かを掴もうとするように手を伸ばし空を握りしめた。
瞬く間に、物言わぬただの肉塊と化した青年を見下ろす人影。
ーーーこれは復讐……。プロブロガーは存在してはならない……。
そう呟いて、人影は返り血を拭いもせずに小屋を離れ、森の中に消えていった。
そして、荒地に再び静寂が訪れた。
つづく
その一報が入ったのは、捜査員がまだ寝室で静かに寝息を立てている時だった。
けたたましく携帯の鳴る音で安眠を妨害された彼は、不機嫌な声で応答した。
例のクラインガルテンの更に奥にある荒地の小屋に惨殺された遺体を発見したのは、同じNPO職員である森という男だった。
「猿さんが朝になっても戻って来ないので、探しに来たんです。
まさかこんなことになっているとは思わなくて……。」
彼の話によると、前日の夜にお世話になっている猟師の男のところに行くと言って出掛けたという。
死因は大量出血による失血死。
鑑識の話では凶器は周囲になく、犯人が持ち去った可能性が高いとのことだった。
念のためNPOの職員らのアリバイを聴取するも、時間が時間だけにアリバイがあるものはいなかった。
つづく
ハンチング帽の男は正気ではなかったし、その妻も他人事のようだった。
捜査線上に挙がった関係者のうちアリバイが成立したのはハンチング帽の妻のみであった。
三人の乳幼児の殺害方法について、まず脳挫傷の乳児は、ロフトの上から叩きつけられた可能性が高いことが分かった、
残る二人の幼児は、切り口に残った金属粉が荒地の小屋で殺害された青年の切り口のそれと一致したため、同じ凶器であると断定された。
しかし、誰が殺害したのか、行方不明の女児の行方や殺害された男児の身元については一向に掴めなかった。
荒地の小屋の事件の翌日、捜査員は殺害された青年が会いに行った猟師の家を訪ねたが長い間不在のようで彼の足取りも掴めなかった。
その後も、山奥の殺害現場では当然ながら目撃者もなく、徒らに時間が過ぎ去るのみだった。
つづく
衰弱はしていたものの、地下室には食料や水などが十分に用意されていたようで命に別状はなかった。
女児は血まみれの服を着ていた。
照合の結果、その血痕は殺害された三人の幼児のものと一致した。
しかし、女児の体力では斧を扱うことには難しく、殺害に関与することは難しく思えた。
「おとうさんが、みんないらないって。
おおきなぼうでみんなをたたいたの。」
女児の証言能力について認められ、ハンチング帽の男は緊急逮捕された。
彼は呟いた。
ぼくはずっとブログを書いてたのです。
早く、PCを返してください。
つづく
鬱蒼とした森の中、木の枝にぶら下がる人影が静かに揺れていた。
足元には黒光りする斧が投げ捨てられていた。
人影の顔が月明りに照らされると、そこには苦痛に歪んだ老人の顔があった。
その遺骸を見上げる人影が一つ。
彼は老人が確実に絶命しているのを確認すると、そこから離れた位置に落ちている猟銃を拾いその場を離れた。
男は猟銃を抱えたまま、また森の中に消えていった。
つづく
袈裟春は発見人の遺留品から唾液の入ったペットボトルを取り出して、軽くうなづいてみせた。
【作者からの挑戦状】
犯人は誰か?
解決編につづく
解決編1
「またお話をお聞きしたいことがありまして、お邪魔させて頂きました。」
ハンチング帽の妻は、少し怪訝そうな顔で捜査員の顔を見ていた。
ハンチング帽の妻はビクッと僅かに反応したが直ぐに冷静を取り繕った。
「我々がDNA鑑定したところ、長女はあなた方ご夫婦のDNA型と一致しませんでした。
貴女はご存知だったのでしょう?」
「あなた方夫婦に三人の娘がいるというのは、周囲でもよく知られたことだった。
しかし、何故か遺体には男児が含まれ、彼もDNA鑑定からはあなた方の子供である事実が判明しました。
ゴクリと息を飲む気配を感じる。
「多分ですが、生まれた時から女児と男児は入れ替わって暮らしていたのではありませんか?
一瞬の静寂の後、捜査員はこう告げた。
そう言って彼が目を合わせたのは、ハンチング帽の妻に寄り添う信者の男だった。
つづく
解決編2
捜査員は話を続ける。
そして、取り違えが起こった。
信者の男は少し怯んだが、直ぐに元の表情に戻った。
しかし、長女と男児が成長するにつれて違和感を感じるようになった。
そして、奥さんがDVを受けクラインガルテンから逃げ出してここに来た時に気づいてしまった。
そこに事件が起こったのです。
それをもう一人の娘が見ていた。
信者の男は不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「馬鹿馬鹿しい。では、男児も私が殺したと?私が殺す理由がない。」
捜査員は少しうなづいてこう返した。
奥さんと一緒になるにはハンチング帽の男の分身が邪魔だった。」
信者の男は凄い形相で睨み付けた。
「彼女は関係ない!私が彼女の安息のために自らの意志でやったことだ!」
ハンチング帽の妻が何か言おうとしたが、男がそれを遮る。
「神の啓示だ。プロブロガーがいる限り、私達家族に安息はないのだから……。」
つづく
解決編3
信者の男は告白するや否や、入り口のドアを開け部屋の外に飛び出した。
部屋を出た時には、別の部屋に男が飛び込むところだった。
彼が部屋の前にたどり着いたその刹那、部屋の中から銃声が響く。
扉を開いたそこには、猟師から奪ったと思われる猟銃で自殺を図った信者の男の骸があった。
しばらく立ち尽くしていると、ハンチング帽の妻がよろよろとその骸にしがみつき嗚咽し始めた。
つづく
<エピローグ>
事件の残る被害者については、ハンチング帽の妻から事情を聞くことができた。
NPO代表理事は、長女がハンチング帽の男の実子でないことに気づいたらしく、信者の男とハンチング帽の妻を強請ろうとしたために殺害されたとのことだった。
また、猟師の男については、罪をなすりつけるために自殺に見せかけて殺したようであった。
長女は責任能力のない年齢のため、当然罪には問われなかった。
また、ハンチング帽の妻も殺害に協力した訳ではないため、共犯の罪に問われることはなかった。
しかし、気が触れてしまったようで、クラインガルテンの周りを徘徊するのを度々目撃された後、ある日崖から転落してその人生を終えた。
つづく
<リ・プロローグ>
漆黒のクラインガルテンの中で、ハンチング帽の妻は自分の人生について悲壮感を感じていた。
まるで飯炊きの女中のような扱いが続き、自分の一生はこのまま終わるのかと思うと、涙が止まらなかった。
いつか白馬の王子さまが彼女を颯爽と救い出してくれる、そう願っていた。
そして、あの日。
ハンチング帽の男は一人で外出していた。
「この指とめよう」の野望は潰えた。結局のところ、運営に名を連ねる面々が「この指」を止められなかったのだ。津田、はあちゅうらが「この指」に対する批判に我慢しきれず、批判者をSNSで晒上げて口汚く罵りはじめた。それを大手まとめブログが面白おかしく取り上げ、炎上を煽り「この指」がまとめブログに対して裁判を仕掛けそれを他のまとめブログが取り上げる。地獄のような泥沼の様相を呈してきたあたりで「この指」からアドバイザーが一人消え、二人消え、そして代表の小竹が捨て台詞のような文書を公式ページにアップし「この指」の活動は終了した。
ところが「この指」の活動が終わってから数週間後、おかしなことが起こり始めた。始まりはこんな記事がネットニュースに掲載されたことだ。
「会社員男性、暴漢に襲われ指を切り取られる。SNSなどでトラブルか」
記事の内容はおおむねタイトル通り。和歌山県で30代の男性が会社から帰宅中に突然、黒ずくめの服装をした複数人に取り押さえられ両手の人差し指と親指を切り取られ持ち去られた。被害者男性は「元カノ」をSNS上で激しく批判しており警察はその線で捜査している、といった内容だ。
小さなネット記事だったためあまり大きな関心は集めなかった。オカルト、怪事件好きのごちゃんねらーの間で少し盛り上がっただけだ。
しかしコトはそれだけでおさまらなかった。そのニュースの翌日、広島県と新潟県で同様の事件が起きた。被害者は年齢も性別も違うが黒ずくめの人物に両手の親指と人差し指を切り取られ持ち去られた。共通点はSNSでトラブルを抱えていたことだ。
事件の奇怪さにネット上は大きく盛り上がった。複数のネットニュースが3つの事件の関連性を報じ、それを実況するスレッドを大手のまとめサイトが取り上げた。曰く、恨み屋のような復習代行業者がいるらしい。曰く、SNS被害者の会が結成されており交換殺人のような形で輪番で指を切り取って回っている。曰く、妖怪の仕業である。曰く、宇宙人の仕業である。曰く、フリーメイソンの仕業である。議論は紛糾した。
その翌日には同様の事件が5件、その翌日は6件。その6件の中に2人、ネット上の有名人、インフルエンサーが含まれていた。社会風刺を盛り込んだネタで注目を浴び、批判者を苛烈に攻撃することで有名なお笑い芸人、それなりの実績を持ちつつも自信を批判するものに対して子供っぽい罵倒を押さえられない研究者。本格的な有名人に被害が及び、騒動は加速し地上波でも取り上げられるようになった。『令和の指切り魔』。マスコミらしいクソダサネーミングが浸透し始めたある日、とあるTwitterのアカウントのウオッチがごちゃんねるに投下される。
「その指とめ隊」
アイコン画像もプロフィールも設定されていないそのアカウントは毎日一回。記号だけを投稿していた。アカウント開設は初めての指切り事件が起きた前日。初投稿は事件の当日で投稿内容は「|」縦棒が一本だけ。その翌日は「|||」、その翌日は「/|||」。事件の数を表しているに違いない、と話題になった。ネットニュース等に報道される前、事件が起きた当日の夜11時59分に決まって投稿されていた。