はてなキーワード: 中村佳子とは
僕らの社会においてセックスは、金銭とはまったく別の、もうひとつの差異化システムなのだ。
そもそも金銭のシステムとセックスのシステム、それぞれの効果はきわめて厳密に相対応する。
経済自由主義にブレーキがかからないのと同様に、そしていくつかの類似した原因により、セックスの自由化は「絶対的貧困化」という現象を生む。
何割かの人間は毎日セックスする。何割かの人間は人生で五、六度セックスする。そして一度もセックスしない人間がいる。
何割かの人間は何十人もの女性とセックスする。何割かの人間は誰ともセックスしない。
解雇が禁止された経済システムにおいてなら、みんながまあなんとか自分の居場所を見つけられる。
不貞が禁止されたセックスシステムにおいてなら、みんながまあなんとかベッドでのパートナーを見つけられる。
完全に自由な経済システムになると、何割かの人間は大きな富を蓄積し、何割かの人間は失業と貧困から抜け出せない。
完全に自由なセックスシステムになると、何割かの人間は変化に富んだ刺激的な性生活を送り、何割かの人間はマスターベーションと孤独だけの毎日を送る。
同様に、セックスの自由化とは、すなわち闘争領域の拡大である。
「そうだとも。ずっと前から駄目なんだ。最初から駄目なんだよ。ラファエル、
自分はこういった物事に縁がないことを受け入れることだ。
いずれにせよ、手遅れなんだ。
いいかい、ラファエル、セックス面における敗北を君は若い頃から味わってきた。
十三歳から君につきまとってきた欲求不満は、この先も消えない傷跡になるだろう。
たとえ君がこの先、何人かの女性と関係を持てたとしても――はっきりいってそんなことはないと思うけど――それで満たされることはないだろう。
もはや、なにがあっても満たされることはない。
君はいつまでも青春時代の恋愛を知らない、いってみれば孤児だ。
君の傷は今でさえ痛い。痛みはどんどんひどくなる。
容赦のない、耐え難い苦しみがついには君の心を一杯にする。
君には救済も、解放もない。そういうことさ。」
-ミシェル・ウエルベック『闘争領域の拡大』(中村佳子訳、角川書店、P111-112,133)より
nenesan0102
男性には風俗があるけれども、もてない、とことんもてない男に縁がない女性には風俗すらないので、女の人のほうが切ないんじゃないかなと私は思っています。。。 2014/01/17
でしょうね。「もてない男」は可視化されてるけど「もてない女」はサバルタン。
dagama
hal9009
トラバにもありますが、性の再分配とか性の公共事業なんて明らかに人権侵害ですからね。
経済の自由化は倫理的に批判されますが、性の自由化は絶対善、だからこそラファエルは救われないのです。
wdnsdy
金は生きるために誰でも絶対にある程度は必要だけど、セックスの場合必要ない人はゼロでも全然普通に生きてられる(心の貧困も産まない)んだが、その点はどうなんよ? 2014/01/17
もちろんノンセクの人たちは異性愛が満たされないことで心が貧困になったりしないでしょう。
ここでは「強制的異性愛のワナに絡め取られた(上野千鶴子『発情装置』より)」あわれな人たちの話をしています。
plusqplusq
「強制的異性愛のワナ」から脱出すればいいじゃん。それができないなら自由恋愛市場にて満たされるよう動くしかない。 2014/01/17
上野千鶴子ほど聡明で自らのセクシュアリティに自覚的な人でさえ「ワナに絡め取られている」と認めるのですから、