はてなキーワード: ナゴルノ・カラバフとは
「ウクライナはジャベリンのおかげでロシアの侵略を阻んだ。ジャベリンはゲームチェンジャーだ」みたいな報道を山ほど見たんだけど、既視感があるなと思ったらナゴルノ・カラバフ紛争で「ドローンはゲームチェンジャー」、アフガン戦争で「スティンガーは……」と、マスコミお得意の「話を極端に単純化してわかりやすくする事で視聴者の感情を煽る商売」なんよな。
定期的に盛り上がる「戦車無用論」なんかも、戦車の存在理由とか効果について、素人がわかった気になりやすいからなんだろうな。 「そういう兵器がある」ってこと自体が素人によく知られているとは言えない自走砲の無用論とかIFVの無用論ってあまり目にしないもの。
ロシア生まれでCrowdStrikeの共同設立者であるDmitri Alperovitchが2021年12月22日に投降したtweet
https://twitter.com/DAlperovitch/status/1473362460673515527
Dmitri Alperovitch
この数週間、私はクレムリンが今年の冬の終わりにウクライナに侵攻する決定を下したという確信を残念ながら深めている。
プーチンが緊張緩和する可能性はまだありますが、その可能性はかなり低くなっていると思います。その理由を説明させてください。
ロシアが最近発信した数々のシグナルは侵攻がほぼ確実だと思わせるものであり、また侵攻がプーチンにとって望ましい選択である理由も相当数ある。
シグナル1
明白なもの ウクライナの国境(北、東、南はクリミア)での軍備増強。この動員は、過去とは質的にも量的にも異なっている
ロシアが保有する大隊戦術グループの75%が移動した。また大砲、防空部隊、戦車、装甲兵員輸送車、橋梁敷設装置、地雷除去機、装甲掘削機、工学装置、給油、膨大な量のロジスティクスもだ。
これは莫大な動員であり大規模侵攻のための明確な準備でブラフではない。またこれだけの装備、部隊、兵站をいつまでも維持することはできない。
@RALee85は遅くとも夏までには撤退しなければならないと考察している。
アントン・チェーホフの劇に出てくるライフルのように、使われるからこそ存在しているのだ。
シグナル2
サイバー空間での予兆。12月上旬以降、ロシアからウクライナの政府や民間のネットワークへのサイバー攻撃が激増している。
昨日私が@SangerNYTと@julianbarnesへ話したように、 侵攻前の情報収集と戦闘準備のために、まさにターゲットとなるものです。
シグナル3
外交的な最後通牒。ロシアが先週発表した要求リストは、米国とNATOの同盟国にとって成立の見込みのないものだった。交渉開始のための真剣な提案ではない。
実際、ロシアがカリーニングラードにイスカンダル短距離弾道ミサイルを配備せずロシア西部の領土に巡航ミサイルを配備しないという相互措置を取る取引となれば、ロシア側から拒否される可能性が高いだろう。
シグナル4
要求リストを公開し(公開すること自体が前例のない外交的措置)面目を失わずに取引から降りることを難しくすることは、彼らが実際の話し合いをすることに真剣ではなく、侵攻のためのプロパガンダの口実を求めていることをさらに示す。
シグナル5
多国間交渉を拒否し1対1の米ロ協議を要求する。これは米国の拒絶を誘発するか(戦争の口実になる)、米国と欧州の同盟国との間に亀裂を生じさせることを意図している。どちらでもロシアにとって都合がよい。
シグナル6
緊急の協議を要求する。ロシアが提起している問題について本格的な交渉を行うには何年もかかる。それをすぐに解決することは非現実的でありロシアもそれを承知している。米国が自分たちの懸念に真剣でないと主張することで、さらに別の侵攻の口実を与える。
シグナル7
レトリック的には事態は沸点に達している。外交的な言葉は窓から投げ出され、日ごとに新たなエスカレーションが起きています。
シグナル8
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相がアメリカのPMCがドンバスで化学物質を使った挑発行為を準備していると発言したように。
ウクライナ、米国、NATOへ責任を負わせるための情報戦が行われている。
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理由1
キエフとドンバスの分離主義者の間で軍事的パワーバランスが変化することへの恐れ。
プーチンは昨年のナゴルノ・カラバフ紛争を観察し、トルコのTB2ドローンなど、NATOの近代兵器で武装した軍隊が領土奪還に何をしでかすか、よく理解している。
プーチンはゼレンスキーがドンバス問題を外交的に解決する気があるとは思えず、遅かれ早かれドンバスでの現状変更を軍事的に阻止する必要があると信じている。
ちなみに、ジョージア大統領であったミヘイル・サーカシビリが再軍備と南オセチアを占領し現状を変えようとしたことが2008年の南オセチア戦争の引き金となった。現在との類似点が不気味である。
理由2
NATOの拡張に対する真の懸念。NATOが本当にロシアに脅威を与えるかどうかはいくらでも議論できますが、重要なのはクレムリンのエリートがそう信じていることなのです
過去300年の間に、ロシアには現在のベラルーシやウクライナから侵入してきた壊滅的な侵攻者(ヒトラー、ナポレオン、スウェーデン人、ポーランド人など)が何度もあったのだ。
ウクライナのNATO(暗黙の反ロシア軍事同盟)加盟はプーチン、エリツィン、ゴルバチョフのようなロシアの指導者、あるいは反プーチン派であるアレクセイ・ナワリヌイでさえ、にとって受け入れがたいものであり国家存亡の危機と見なされているのだ。
理由3
プーチンはウクライナの親西側政権、ルカシェンコへの抗議、グルジアのカラー革命、モスクワでの抗議などすべてを、ロシアを弱体化させロシアの近隣に敵国連合を構築しようとする西側の秘密の試みだと見なしている。
理由4
ウクライナがNATOに加盟しなくても、NATOの武器と軍事顧問が配備されていることから、プーチンは親欧米のウクライナが深刻な軍事的脅威になると確信している。
理由5
ウクライナからモスクワへのミサイルの飛行時間が4-5分だとか、クリミアへの脅威だとかいう話は、私たちにはパラノイアに聞こえるかもしれないが、プーチンはそれを信じている。それが今、すべてなのだ。
理由6
ウクライナに侵攻すればウクライナ、グルジア、ベラルーシ、中央アジア諸国がNATOに加盟したり、ロシアの同意なしにNATOの武器や軍隊を自国領土に配備する話は永久になくなることを、彼は知っているのだ。
そうなれば、たちまちロシアの勢力圏が復活してしまう。旧ソ連のどの国も(バルトは別として)NATOやEUに再び媚びる勇気はなくなるだろう。
理由7
タイミングから言えば今が侵攻の絶好の機会かもしれない。米国は国内政治と、中国との新たな地政学的対立に気を取られている
エネルギー価格が高騰している。ヨーロッパはロシアのガスに全面的に依存しており、アメリカでさえもロシアの原油を輸入しているのが現状である。その結果、化石燃料に対する経済制裁が行われる可能性はほとんどない。
理由8
制裁は有効な抑止力にはならない。ロシアは嫌でも制裁と共存することを学びました。ロシア経済は、中国からの援助もあり、制裁に対してより強くなっている。さらにアメリカはロシアが何をしようとも制裁するようになった。
今年アメリカで制定された経済制裁の法は、SolarWinds/HolidayBearのハッキングなど従来は黙認されてきた諜報活動に対しても適用され、ロシアが何をやっても制裁するという信号を送ることになり抑止のための利用価値が損なわれています。
また、石油・ガス産業への制裁はロシアにとって経済的に壊滅的な打撃を与える可能性があるが、寒い冬の最中にヨーロッパが凍え、米国でインフレが急増している今、それが起こる見通しは立っていない。
理由9
プーチンは、自分の目的は軍事力で達成できると考えている。ロシア軍は長距離火力で圧倒的な優位に立ち、数日以内にウクライナ軍を容易に圧倒し、歩兵と装甲兵力でドニエプル川まで押し返すことができる。
彼は西ウクライナに侵攻することはないだろうが、ドニエプル川に沿って国を半分に分け、ヨーロッパとロシアの間に恒久的な緩衝地帯と、クリミアへの陸橋を比較的容易に確立することができるだろう。
彼は最初の侵攻とその後の占領のいずれにおいても軍事的コストは低いと考えているようだ。ロシアはチェチェン、シリア、ドンバス、そしてクリミアで、何十年にもわたって反乱を鎮圧してきた経験がある。
西ウクライナなら話は別だが、だからこそドニエプル川を越えることはないだろう。そしてロシアはその歴史の中で1640年代、1700年代、1920-1950年代と、何度もウクライナの反乱軍と戦って成功した歴史があるのです。
プーチンはもうすぐ70歳です。政権を担うのはせいぜいあと10年程度とわかっている。彼は自分を、壊滅的で屈辱的な1990年代の後、ロシアを経済的にも軍事的にも活性化させた歴史的指導者とみなしている。
2014年にクリミアを比較的容易に奪還したことで、彼は退任/死去する前に、近隣におけるロシアの勢力圏の再確立など長期的問題を解決することを決意したようです。そして今がそのための絶好の機会である。
これは非常に悲観的な見方だが、残念ながら侵略の可能性が高い理由についての現実的な見方でもある。そして、西側諸国がそれを阻止するためにできることは、ほとんどないだろう。
半分正解であると思える。残り半分は「当たり前でしょう」という話。
戦車を活かせたのがアルメニアではなくアゼルバイジャンであった、という点で
だがそもそも、領土を奪い合う地上戦において戦車が重要なのは当たり前の話である。
占領とはそれ即ち軍事力による領土の確保であり、地上における軍事力の最たる物が装甲戦闘車両の王である戦車だからだ。
なので「地上戦で重要だったのは戦車だった」と言われると「当たり前でしょう」としか言えない。
肝心なのは戦車を活かすことができた要因であり、そこにアルメニア・アゼルバイジャン最大の差があったのだろう。
近年のアゼルバイジャンの軍事費増大により、軍事バランス的にはアゼルバイジャン側が優勢であった。
対するアルメニア側はナゴルノ・カラバフ自治州東部に対アゼル陣地を構築していたが
↓
航空偵察により陣地の位置・陣容が露見し航空爆撃や砲撃で陣地が無力化、または放棄を余儀なくされる
(後述する杜撰な運用による陣地の脆弱性も無力化に寄与したものと思われる)
↓
といった具合で徐々に都市を失い、最終的に自治州の首都ステパナケルト直前までアゼル軍が迫る事態となっていた。
なお、アゼル軍は当初ナゴルノカラバフ自治州の北部と南部から攻勢を開始したが
北部の高山地帯では陣地に阻まれ思うように進軍できなかったものの、比較的平野部の多い南部で突破に成功していた模様。
詳しくは戦況の変化を調べてもらいたい。
本戦争において最も注目すべき点であり、アゼル軍進撃最大の立役者が無人戦闘航空機(UCAV/ドローン)の活用だった。
(アゼル軍はMiG-29戦闘機、Su-25攻撃機を十数機程度。アルメニアに至っては戦闘機ほぼ0、Su-25攻撃機が数機程度)
アルメニア軍はS-300長距離地対空ミサイル、SA-8/SA-15短距離地対空ミサイル等のロシア製地対空ミサイル複合コンプレックスを保有・形成しており
これら防空ミサイルをアゼル軍が保有する少数の航空機で破壊するのは困難であり、アゼル軍側は航空作戦を実行できないと戦争前なら予想されていただろう。
ところがアゼル軍は外国から多数のドローンを購入し実戦に投入した。
アルメニア側は当初健在であった地対空ミサイルシステムにより、投入されたドローンの大半を撃墜したものと思われるが
それでもアゼル軍はドローンを投入し続け、ついにはアルメニア防空網の破壊に成功したのである。
活躍が目立ったのは次のような機種だ。
遠隔操作または自律飛行が可能で、対戦車ミサイルや誘導爆弾等の各種対地兵器を運用できる。
カナダ製の高性能なイメージセンサを(勝手に)搭載しており、偵察機としても優秀な性能を持つ。
※勝手に搭載しているのがバレたのでカナダからトルコへは輸出停止に。現在はトルコ製国産センサに切換中らしい
→イスラエルIAI社製の「カミカゼ特攻ドローン」。1機辺りの値段:諸説あり(1000万円~1億円程度?)
ステルス形状の機体そのものに爆破弾頭を内蔵し、自律飛行により目標近辺を徘徊・滞空。
対空ミサイル等の電波発信源を探知すると機体ごと突入し自爆攻撃する。
またイメージセンサも搭載し遠隔操作も可能。目標を識別して攻撃する事もできる。
バイラクタルTB2は射程10km以上の誘導爆弾が運用可能であり、
ハーピー/ハロップは地対空ミサイルのレーダーが稼働していればそこに向かって突っ込んでいく。
レーダーを漫然と運用していれば、これらのドローンには容易に探知されてしまうし、ドローンが近くにいる事に気付かずレーダーを起動してしまっても探知されてしまう。
特にSA-8/SA-15短距離防空ミサイルはレーダーと発射機が一体型の車両なので、ミサイルごと破壊されてしまえば戦闘続行は不能である。
これらドローンの攻撃により空いた短距離ミサイル防空網の穴に入り込み、長距離防空を担うS-300までも破壊に成功し
さらにアルメニア地上戦力をドローンで一方的に攻撃することができたのだろう。
前述の短距離地対空ミサイルはそもそも、地上付近を飛行するヘリコプターや巡航ミサイルの迎撃を目的として運用されるものだ。
それが何故、同じく地上付近を飛行するドローンの探知に失敗し攻撃を受けたのか?
ここからは予想されている事に過ぎないが、防空システム運用の失敗として
・防空ネットワークが存在せず、ミサイル発射機ごとに単体で運用されていた(=ミサイル部隊の連携ができていなかった)
・電波管制(EMCON)が徹底されておらず、逆探により位置が容易に露見していた
・ミサイル発射車両に偽装がされておらず、ドローン搭載のイメージセンサで容易に発見できた
等が考えられる。
いくらドローンとはいえ、それよりも小さくて速いミサイルを探知できるレーダーがドローンを探知できないという事はないだろう。
(低速すぎて探知できない、あるいは探知するが閾値以下の反応でノイズとして弾かれる場合はある)
形状やレーダーの種類により探知性は変化するし、迎撃ミサイルとの位置関係によって迎撃の確率も変わるので単純な比較は禁物であるが、
従来の巡航ミサイルとドローンのスペックを書いてみるとこんな感じである。
トマホーク巡航ミサイル:全長5m/直径50cm/巡航速度800km/h
バイラクタルTB2:全長6.5m/幅12m/巡航速度130km/h
山頂付近に設置されたレーダー、早期警戒機やルックダウン能力があるレーダーを持つ第4世代以上の戦闘機なら低空目標も探知できるであろうし
ネットワークを通して友軍防空部隊に位置情報を伝達、レーダー起動無し・もしくはミサイル発射直前の照準時のみレーダーを起動しミサイル発射・迎撃も可能であろう。
こうしたミサイルシステム以外の警戒網がアルメニア側には不足していたと思う。
偽装については地対空ミサイルだけでなく車両全般や陣地にも同じ事が言える。
SNSやネット上で出回っているアルメニア軍兵器が撃破される、ドローンの空撮とおぼしき映像をいくつか見てもらいたい。
その殆どが偽装をしていない、あるいは偽装はしているが中途半端でバレバレなのである。
(車輪の跡が残ってる、周囲の植生や地形に溶け込んでいない、赤外線暗視装置対策が皆無)
電波管制や偽装はアメリカやロシア、中国、そしてもちろん日本の自衛隊においても、現代の軍隊における基本中の基本であり
ネットワーク化は現代の高度化した戦争において優位性を保つための必須条件である。
これらが徹底されていなければ、敵部隊の偵察により自軍の存在は容易に発見されてしまい
逆に言えば、これらを徹底することで偵察に対する被探知性は低下し、
ドローンの画像センサ/赤外線センサに対しても発見される確率は低くなる、
もしくは発見するために接近しなければならない距離は短くなり、自軍がドローンの接近に気付く機会も増えるというものである。
自衛隊の演習で隊員がヘルメットや服に草をボーボーになるまで貼り付けたり、車両が草にまみれすぎて草そのものが動いてるような写真や映像を見た事があるだろうか。
あれらはふざけているのではなく、偽装という戦闘に必要な技術を実践しているのである。
また最近では偽装網(バラキューというらしい)にも赤外線放射を抑える物があり、これを使用すれば赤外線暗視装置にも効果があるようだ。
今回のナゴルノ・カラバフ戦争ではドローンの活躍が華々しく喧伝された。
だがその活躍も、一つ一つ紐解いてみれば軍事的には常識と思える要素の集合体であり
それらの対策を強化していくことでドローンへの対処は可能だと考えられるのである。
懸念しなければならないのは、ドローンは戦闘機よりは安価で数を揃えやすく
アゼルバイジャンのように多数を集中運用することで十全な防空網でも突破されてしまうかもしれないという事だ。
ドローンばっかり注目している人が多いと思うが
今回の戦争で戦線を前進させる原動力となったのは戦車だと考えている
シリアから騙して連れてきたような傭兵を最前線に立たせていたのに
それでも前進できたのはアゼルバイジャン軍が一方的に戦車をもっている状態で
アルメニアが歩兵携行火器で戦車を潰すのにも敵の位置を正確に把握する必要があって
航空優勢は無理でも偵察用ドローンをアゼルバイジャンに負けずに飛ばすくらいは
できないと行けなかった(そして、これができても戦車なしで逆襲で土地を奪い返すのは厳しい)
まぁコインの裏と表ではあるが