「エアアジア・ジャパン」を含む日記 RSS

はてなキーワード: エアアジア・ジャパンとは

2021-08-16

飛行機履歴書:「JA01VA」と2010年代ANA

飛行機には履歴書みたいなものがある、という話を anond:20210809215439 で書いたところ、少し反応があって嬉しかったのでもう1個書いてみる。

今回は2021年7月半ばに引退したばかりの「JA01VA」について話そう。JA01VAはANAエアバスA320型機で、2010年代から最近にかけてのANAの苦悩が見える機材である

https://www.planespotters.net/airframe/airbus-a320-200-ja01va-all-nippon-airways/ey1ly5

日本におけるLCCの勃興とANA

日本で本格的にLCCが登場したのは2011年であるジェットスター・ジャパンGK)、ピーチMM)、エアアジア・ジャパンJW、当時)の3社が相次いで設立された。

GKJALカンタス航空の合弁、MMANA香港会社の合弁、JWANAエアアジアマレーシア)の合弁で設立された。

かくも合弁企業ばかりなのは日本における航空会社外資規制(全株式の1/3まで)があるからだ。

このうち、ジェットスターピーチは上手くいっていたのだが、エアアジア・ジャパンは失敗してしまった。というのも、エアアジアANALCCを巡る運営方針に大きな違いがあったかである

喧嘩別れによってエアアジアマレーシア)はジャパン運営から手を引く。これにより、エアアジア・ジャパンは「バニラエア」に社名を変え、ANA100%子会社として再出発した。

(なお、その後エアアジアは非航空業界日本企業と連携して再参入を図り、名古屋に2代目エアアジア・ジャパン設立するも再び失敗した。日本での事業があまりにも下手なようである。)

このときJWに5機あったA320JA01AJ~JA05AJ)はエアアジア持ちだったようで、全機が東南アジア移籍していった。

真っ白で納入される飛行機

だが、この喧嘩別れの前に発注されていた機材がある。製造番号5844、JA01VAである

一般的航空機は、新造時にメーカーエアバスボーイングなど)にて航空会社の塗装を実施して納入される。

しかしこの製造番号5844は納入先がゴタゴタしており、エアアジア塗装でいいのか、そもそも別塗装になるのかわからない状態で納入が進められた。

結果、真っ白な状態エアバスから成田回送され、大阪伊丹空港ANA整備拠点バニラエア塗装が施されることになった。

https://flyteam.jp/registration/JA01VA/photo?sort=phototime&order=asc

エアアジア仕様で塗装しちゃう前でよかったね。

さすがに内装は着工完了していたらしくらしく、エアアジア仕様、外装はバニラエアという機体が出来上がった。

ちなみに初期のバニラエアANAから退役前の古いA320転籍させるなど、JA01VA以外にもゴタゴタした機材が多かった。

最終的にバニラエアには15機が所属していた。

バニラエアピーチ統合

こうして、ANAANAホールディングス)は自社傘下に2社のLCCを抱えることになった。

当初は「成田バニラエア関空ピーチ」「バニラリゾート路線訪日外国人に注力」などと素人目にはちょっと苦しい言い訳をして2社が棲み分けをしていたのだが、その境界線はどんどん曖昧になっていった。

LCCとしてのブランドピーチの方が強く、業績も良かったこから2018年にはピーチへの統合が発表された。

バニラエア機材の大半はピーチ仕様に改修ののち、移管された。なお、日本法令では国内で一度登録した機体番号は会社が変わっても変更できないため、ピーチ移籍後も「JA○○VA」となっている。

移籍時の余り、LCC仕様のままANA

しかし、当然ながらピーチもそこそこの規模で機材を持っており、15機全部を移管すると過多になってしまう。そこでJA01VA~JA03VAが余り物となったのである

この余ってしまった3機は2019年ANAが引き受けることになった。まだbeforeコロナ時代の話である

悪運

ここでANAの機材運の悪さに触れておかねばならない。

ANA老朽化した機材を三菱スペースジェット(MSJ、MRJ)、ボーイング737MAXなどで置き換えるプランを立てていたのだが、MSJの相次ぐ開発遅延(のちに中止)、737MAX事故による世界的な運航中止など、どちらも見込みが立たなかった。

加えて、次世代の主力機としていたボーイング787のエンジン設計上の欠陥により改修作業余儀なくされ、コロナ前の旺盛な需要の中、機材繰りがギリギリとなっていた。

余談だが、ANAコロナ直前に明らかに供給過多で時代遅れなA380も掴まされて、クソ機材によって本来被らなくていいような赤字まで被っている。機材担当チームのセンスがないか、あるいは強烈に運が悪いかどちらかであろう。

180席のANA

ここでちょうどよく転がっていたのが旧バニラA320であるピーチとの統合で余ったとはいえ、機材のリース期間満了までは当時の段階で2年ちょっと残っていた。

しかし、これをANA仕様に改修するには時間コスト、改修認可の手間も掛かる。その結果として「1年限定で、LCCの詰め込み仕様のままANA機として飛ばす」という奇策がとられた。

通常のANA仕様A320なら166席のところ、LCCは同じサイズの機材に180席も詰め込んでしまっている。これをANAは機材コード「32G」と称し、塗装だけANAにしたのちに2020年1月から一部の路線に投入した。

ちなみに料金が安くなるわけでもない。何も知らず、ANAに乗ったと思ったらこの機材に当たった人は気の毒である。実際、ANAユーザからは「ハズレ機材」と言われていた。

ANAからの退役

2021年7月JA01VAは予定通り約1年ちょっとの運航を終えて引退し、沖縄那覇空港回送された。おそらく現在那覇にあるANAの整備拠点リース会社に返却するための引退整備(片付け)をしていると推測される。

機齢は若く、まだ最前線活躍できる。そのため、リースバック後には海外のどこかで活躍するだろう(尤も、コロナの影響でどうなるかわからないが)。

次はどこの航空会社に引き渡されるかはまだ不透明だが、製造番号をキーにしてまた追いかけることができるので楽しみである。仲間のJA02VA・JA03VAもまだ国内に留まっているが、順次同じ手続きを取ると思われる。

2010年代ANALCCの動きを象徴したような1機であった。

 
ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん