はてなキーワード: イシドーとは
帝王切開の語源の項目を数年前に執筆した当人である、雑兵ウィキペディアンが通ります。
誰も悪くないって元増田は言ってるけど、これはイシドールスが悪いよ。
カエサルという語はユリウスに由来する。内戦が勃発するや、彼はローマの貴族として最高の地位を得た。他方で彼は死んだ母の切り取られた(caeso)胎内から引き出されたために、もしくは生まれつき豊かな髪(caesarie)を靡かせた子供だったために、カエサルとも呼ばれた。それ以来、彼の跡を継いだ皇帝たちもカエサルと呼ばれることになった。そして切り取られた子宮から取り出された者は、Caeso あるいは Caesar と呼ばれることになった。
カエサルが帝王切開で生まれたってのも嘘(というか、語源の因果関係が逆)だし、フッサフサだったってのも嘘。与太話すぎるっしょ。
イシドールスの『語源』は、数々の言葉の由来について、キリスト教世界でのソースになっていて、中世においては権威そのものだったんだが、ぶっちゃけ信頼性が低いということが最近わかってきた。
『語源』のおかげで、多くの古典時代の著作の記述が断片的に散逸を免れた一方、この著作が原著作よりも重んじられることが多かったために、原著作で散逸してしまったものが多いくらい。
私はいま大学で教えてるんだけど、レポート書かせたら「ウィキペディア調べ」ばっかりなの。史料批判どころか、一次史料に当たることなんて全然しない。
あんまりひどいから、私はレポート読んでからウィキペディアを直すボランティアをしている。
ちなみに、イシドールスはカトリック教会における「インターネット利用者およびプログラマー」の守護聖人でもある。おあとがよろしいようで。
1世紀の大プリニウスは、『博物誌』の中で、カエサルの名前の由来をこう記している。
Auspicatius enecta parente gignuntur, sicut Scipio Africanus prior natus primusque Caesarum a caeso matris utero dictus, qua de causa et Caesones appellati.(母の死によって産み落とされるとより幸運である。そのようにして生まれた初代のスキピオ・アフリカヌスのように、また母の子宮を切ったことによってそう呼ばれた最初のカエサルのように。また同じ理由でカエソもそう呼ばれる)
カエサルが長じてから生母アウレリア・コッタに宛てた書簡が存在することから、実際にカエサルが帝王切開で生まれた可能性は極めて低い。また、カエサル家はカエサルが初代ではない。
7世紀のスペインでイシドールスによって記された『語源』では、因果関係が逆転して記されている。
カエサルという語はユリウスに由来する。内戦が勃発するや、彼はローマの貴族として最高の地位を得た。他方で彼は死んだ母の切り取られた(caeso)胎内から引き出されたために、もしくは生まれつき豊かな髪(caesarie)を靡かせた子供だったために、カエサルとも呼ばれた。それ以来、彼の跡を継いだ皇帝たちもカエサルと呼ばれることになった。そして切り取られた子宮から取り出された者は、Caeso あるいは Caesar と呼ばれることになった。
イシドールスによる『語源』は後世に典拠として採用されることが多かったため、caesarという単語は、本来の意味と誤りを含んだ由来を併せ持ちながら、16世紀以降成立した帝王切開の技術を追うように、ラテン語のsectio caesareaという名称へと結び付いたと考えられる。
このあたりの話じゃないの