はてなキーワード: しーちゃんとは
小熊はそう思ったが、顔には出さなかった。
そんな事を言ったらコーヒーに毒薬を混ぜられるかもしれない、そう思った。
もし毒入りコーヒーを飲んだら、半身不随になってカブに乗れなくなるかもしれない。
小熊は想像力旺盛だった。自意識過剰気味な方向にメーターの針が振り切っていた。
自分のためだけにトリカブト(推定)を入れるような真似はしない。
そんな想像力も働かなかった。
トリカブトがそこらへんを通り過ぎたり、ひょっこり暖簾をくぐって挨拶しかねないと思った。
小熊はそれではまずいと思った。
襲ってくるトリカブトと恵庭にチェーンを振り回して応戦しようと思った。
雪道のタイヤにチェーンなんてもうどうでも良かった。
チェーンは振り回すものだ。
小熊の中にイノベーション起こった気がした。
素晴らしい万能感だった。
ふと我に返ったとき小熊は思った。
バカみたい。
後日、礼子と小熊は高いテンションで雪道を跳ね回った。
小熊は内心雪道はスキーやスノボのほうが良いと思ったものの、礼子が楽しそうなので許してあげた。
小熊は常に心の中では上から目線だった。
昼休みになると麻婆豆腐に似たあんかけもどきを食べさせたが、鈍い玲子は麻婆豆腐だと思ったまま気づかなかった。
礼子は笑った。小熊も笑った。両者の笑顔の意味はまるで違っていたが、そこに青春の一コマがあるような気がした。
楽しい?
うん、楽しい。
この会話の意味もだいぶ違っていた。麻婆ドッキリに気づかない礼子、という嘲笑を含んでいた。
冬の寒空のように心が冷え切ってゆくのが分かった。
チッ。
と心のなかで舌打ちする。
彼女はひとしきり雪が降り注いだ後、こう思った。
バカみたい。
礼子が泡を吹く姿は見られそうにない。
小熊は衝動的にチェーンを振り回したくなったが、マグマのような衝動のほとばしりをすんでのところで抑えこむことに成功した。
小熊は思った。
そこでトリカブトですよ、と小熊は意味不明に言いかけたが口をつぐんだ。
すでに8日ですが書きます。
・最も繰り返し読んだマンガ
「あたらしいひふ」 高野雀
本当に繰り返し読んだ。購入直後に何回も読んで、しばらくたってからもまた読んだ。「新刊で面白いのないなー」と思ったとき、キンドルのリストからクリックするのはコレだった。
高野雀は「さよならガールフレンド」からわりとずっと好きで、出てるものは一通り買ってるかんじ。
「It’s your (new) ID.」の構成が楽しい。統一されたテーマを持ちつつ独立して展開する作品の間にインタールードぽく入ってくるしーちゃんとゆみちゃん。そして最後のやり取り。
冒頭も説明的にならずにテーマを説明していたり、ホントよくできてるよなあと思う。何度読んでも楽しい。
「あたらしいひふ」の後書きにあった「くそおしゃれ」って評価は当てはまっていないと思う。この人の作品はたぶん「気が利いている」んだと思う。少なくとも自分にはそう見える。
それが波長が合わない人には「おしゃれ」に見えるんだと思う。
この人の作品は全般に、日常+もう一歩ぐらいのサックリした踏み込み具合に見える。深い何かを求めて読んだ人の辛口レビューをたまに見かけるけど、たぶん楽しみ方を間違えていると思う。
少し踏み込んだあたりで、面白い/新鮮な言い回しで表現して見せてる感じ。
画も好き。顔、人体、背景、どれもうまいし統一された世界を構成していると思う。
会話とモノローグで引っ張るところが多いのでバストアップが増えがちだけど、全身とかも多くて楽しい。構図が実写っぽい気がする。
・最も引っかかったマンガ
以前読んだ「ビーンク&ロサ」がちょっとひっかかっていたので読んだんだけど、良かった。
荒さやチープさもあり、ややダルイ話もあるんだけど、それでもグッとくる作品だった。
世界のあり様について「そういえばそうか。。」と思わせられた。
世界はあるレイヤではウィザードたちを排除し、しかしその外部レイヤでは彼女らを包含し続けているという、言われてみれば当たり前なんだけど、言われないと意識しない世界のあり様を見せられてハッとさせられる。
そしてその世界の在り方は、その中で生きるウィザードたちは俯瞰することができず(クリスタルには見えていたが)、そのためガーゴは誤った範囲で世界を壊しかけ、スペクトラは世界に背を向けようとする。
スペクトラとガーゴは世界を見誤ろうとしていたが、彼女らを直接的に取り巻く世界からすれば無理もないわけで、それがまたやるせなく切ない。
結果として世界は破滅を免れるが、ウィザードたちにとってそれは希望なのか徒労なのかはわからない。俯瞰してしまえばクリスタルの言う「変化」の一言に回収されてしまうんだろうけど、スペクトラやガーゴの目にはどのように映るのか。
それが作者の意図だとは思わないけれど、どうしても現在の人類世界にあてはめたくなる。
画は(たぶん意図的に)チープではあるけれど、上手いと思う。作品世界を効果的に見せているように思う。
・2017発売じゃないけど
2015の発売。見落としてました。面白い。ここ何年かで最も面白いファンタジー。
ずいぶん前の発売だけど、それでも取り上げたいと思わせる作品。
つばならしい荒唐無稽な世界が正統派ファンタジーに完璧にマッチしてて凄い。
現代世界を舞台にするよりずっとよくマッチしてると思う。完璧すぎる。
全体におかしみやかわいげがあって読みやすく、世界に入りやすい。説明的にならずに世界を表現しつつ、話のテンポも良くて自然に入って行ける。
テンポよく、しかし丁寧に世界を描きつつ話を展開させているんだけど、中盤以降は畳み込みのスピードとパワーが素晴らしい。
マンガ以外のメディアも含めて、これだけ良質なファンタジーはなかなか無いと思う。
作品サイズのわりに製作は長くかかったみたいだけど、展開が完璧に構成されているのが凄い。
画も良い。第七女子会彷徨はやや引いた画が多いかなという印象だったけど、この作品ではその辺のバランスが良い。
人も背景もすごく良い。背景密度高い。森とか鳥足の家が最高。
・リスペクト枠ではない
F作品を今日的な視点で評価した場合、「エスパー魔美」が挙げられることが多いが、個人的には「チンプイ」のほうが面白いと思う。
ドラえもんと比べて、話の強引な展開を上手く(面白く)消化できてる。
チンプイはドラえもんのゲス面白いところをさらに洗練させてる。
のび太をカワイイ女の子に置き換えるというアイディアが凄く今日的。
友達連中はまんまドラえもんの踏襲だけど、宇宙人の取り巻きキャラが面白い。
画も良い。スタッフがたくさんいたのかもしれないけど、全コマ手抜きなし。
人の正面アップが連続したりしない。舞台的な感じの見せ方が多くて、今見るとけっこう斬新。
ページあたりのコマが多くて一コマ一コマが狭いんだけど、適切なバランスに畳み込んでて凄い。
コマが狭いので人の等身が低いんだけど、自然に見える。状況でもう少し高く描いているところも多いけど、統一感を失うことが無い。