2023-05-27

AI警察2027

 ChatGPTが警察捜査に利用されるようになって3年が過ぎた。

 犯罪捜査様相は一変した。たとえば殺人事件であれば、被害者プロフィール小学校卒業文集、その事件が起きたときの天気や気温・湿度風向き株価や直近の内閣支持率などを入力し、さら被疑者リストを示せば、AI犯人はこの中の誰が犯人ですと教えてくれる。待ち構えていた警察官がその人物逮捕して捜査は終わりである

 事件発生から解決までの時間は圧倒的に短縮され、迷宮入りという言葉はもはや死語になった。人々はこれを支持した。そういえば治安もなんだか良くなったような気がする。街に笑顔が戻ってきたような気がする。四六時中近隣住民に怒鳴り声をあげていた近所のおっさんもいつの間にか姿を消した。聞くところによれば「身に覚えがない、俺は無実だ」と叫びながらパトカーに押し込められて行ったらしい。おっさん行方誰も知らない

 もちろんAI完璧ではない。故人、明らかなアリバイがある人、警察関係者政治家などを犯人として挙げるといったありえない結果を出すこともある。その場合質問が間違っていたということになり、プロンプトは正しいと思われる結果を出すまで何度も修正された。警察庁の幹部はこれを「人間AI理想的協調関係」と自画自賛した。OpenAI社は当初抵抗していたが、幹部が数人逮捕された後は完璧沈黙を守っている。

 週刊誌報道によれば、警察人員削減圧力に対抗するため犯罪予測活動に精を出すらしい。これもまたChatGPTの賜物で、犯罪が発生しそうな場所と日時をAI予測させ、警察官を派遣し、犯罪が発生したところで現行犯逮捕するのである犯罪が見つからなければ、それは犯人計画性を持って犯行を隠匿しているということになり、捜査員が増員される。かくして社会ますます安全になり、また警察官はほどよく忙しい状態が保たれるというわけだ。

 近頃は裏社会改名アドバイザーが人気だと聞く。どうやら名前文字の並びに特定の特徴があるとChatGPTはそれを人名だと認識できなくなるらしく、明らかな犯人であっても――AIにそのような思考があるのかどうかは疑わしいが――ChatGPTは名指しを避ける傾向があるらしい。ニューラルネットワークに祝福された理想名前を求め、ヤクザ半グレ三顧の礼を尽くしてアドバイザー事務所に列をなしている。アルゴリズムが変更されたら彼らの顧客一網打尽にされる可能性が高いし、そうなったら彼らは生きたまま東京湾に沈められることになるだろうが、彼らもそれを知った上でXデーが来るまでは我が世の春を謳歌している。これもまた人生である

 ところで先ほど来客があった。相手警察官で、私が3日後に起きるコンビニ強盗事件犯人である可能性が極めて高いため、しばらく私の自宅の周囲を監視するらしい。強盗などする気はまったくないと一笑に付したくなったものの、AIがそう宣託を下すのであればきっとそうなのだろう――否、そうしなくてはならないのだろう。私はたった今フルフェイスヘルメット包丁Amazonお急ぎ便で注文したところだ。

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