まず、朝勃ちのことすら知らなかった女の子が「自分は元々斎藤真人という男だった」と暗示をかけられたところで完全に男として違和感ない存在になれるものなのかなあと。
そもそもこの暗示はだいたいこの二つの文で構成されていると思われる。
基底人格を男として塗りつぶしても、それはあくまで塗りつぶしであって消去ではないし、記憶や経験自体は女として十年余り生きてきたのが変わらず残ってるわけだから、暗示をしたところであくまでそれに基づく振る舞いになるように思う。
記憶については入れ替わり先の脳を参照しろ、という命令はおそらく無意味と思われる。なぜなら記憶を参照できる世界観ではないから。
もしそういう世界観なら主人公は入れ替わった瞬間こいつはサキュバスのハーフだとわかるはずである。ヒロインに言われたら「そんなの記憶を読んでるから知ってるよ」と答えるはずだ。
もし暗示をするための魅了が一瞬のうちに単純な命令だけでなく命令の前提となる情報もいくらでも伝えられるものだったら、それも可能だが、そこまで万能な能力に描かれているとは思えない。
そこまで万能なら番外編であんなまわりくどい方法で女子を掌握する必要もないはずだ。単に入れ替わりを発生させた後女子の魂が入った男の身体に服従するよう暗示をかければいい。作中でも「邪魔をするな」「エッチなことするな」レベルの単純な命令しかしていない。しようと思えばいくらでも高度な命令ができる、とはこういう描写をしているかぎりは考えるべきではないと思う。
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ただ何につけても気になるのは、男であるという暗示が完全に定着した後のヒロインが自分の体を見て「あの月代さんになんてことを!」と言ってるセリフなんだ。
なぜか「あの」に傍点がかかっている。これが意味することがなんなのかいまいちスジの通る考えが浮かばない。
その前でも一人称に傍点がついているのも人格誤認を起こしてることの強調と思われるが、その意図で考えるなら、暗示の影響が反映されていると考えるべきなのは「あの」ではなく、自分の身体に向かって「月代さん」と言ってるところだと考えるのが素直だろう。あのと言ってることも一応人格改変と影響と考えてもいいが、ならせめて「あの月代さん」まで傍点を振るべきだと思う。
思うにこれは単なる人格誤認の強調ではないのかなあと考える。もともとの主人公は入れ替わってすぐに無遠慮にエッチを求めるぐらい彼女に対してそこまで大事に思ってる感じはないので「あの月代さん」などというセリフが出て来るような性格をしていない。
それが主人公のクローンとでもいうべき人格になり果てた彼女の場合では、もともとの基底人格の良識を引き継いでるから、自分が男で目の前の人間はスクールカーストの高い人間と認識したからこその「あの月代さん」なのだろうと思った。あえて人格の消去でなく人格の上塗りといった何気ない台詞に整合性を持たせるならこう解釈するべきだと思うんだよな。
そもそも彼女が目覚めて一度も目の前の女性がサキュバスであることに突っ込んでないのもおかしいしね(番外編では突っ込まれてるのに)。これは基底人格内の記憶のうえでは元自分の身体がサキュバスであることは当然既知の情報だからだと思う。
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でも著者本人に台詞の意図とか聞けるのが理想だよな。でも谷口さんってビックネームだしツイッターとかやってるかもしらないししてても読者の質問に答えるほど距離の近い存在じゃないよなあと。