2023-03-16

パンチラ動画カリスマ撮り師の起訴に寄せて(1)

はじめに

筆者は以前に表題に似たような日記投稿し削除された増田である。(以降、当該記事を削除稿とする)

削除された内容について、まず以下にお詫びを申し上げると共に、続いて各人に投げかけたいテーマがあり投稿した。コミュニティガイドラインを改めて確認し、内容を沿わせたつもりである

第1のお詫び

第1には内容があたか反社会的行為である盗撮助長するような内容となっており、はてな社のサービス利用規約に反していた。そのため、はてな運営の方には削除のお手を煩わせることとなった。申し訳ありませんでした。ご指摘の点を踏まえ本稿では容易に作品に到達できるような情報を含まないよう注意して書いた。そこまでして伝えたいポイントは令和5年度3月14日閣議決定された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案法務省提出)」について議論の土台となる題材を提供したいためである

なお表題には名誉棄損の語が入っているが、初めて盗撮犯罪名誉棄損が援用されたのは福岡地裁判決H29-03-22とされる。この事件では約2年半で10億円の売り上げがあったとされており、対象パンチラ盗撮だけではなく公衆浴場からトイレまで様々であった。表題カリスマ撮り師(以降、単にカリスマ撮り師とした場合は彼を指す)は被害女性の出演を「フィクション」としたが、福岡地裁同意を得ている旨が名誉棄損になると判断した。念のため補足すると恥ずかしいパンティ丸出し姿を公開されたことが名誉棄損となるわけではなく、「盗撮ではありません」と記載したことにより「この女性有償でのパンティ撮影に応じてくれる人物」という風評が成立することで名誉棄損となる。福岡地裁の当該事件については別途補足する。

第2のお詫び

第2には増田説明中途半端だったことによって不正確な情報拡散してしまった点である。紙媒体も発行中の伝統写真週刊誌Web媒体増田日記を底としたと思われる記事掲載された。当該記事では有識者に尋ねた鍵カッコつきの取材調で被告行為糾弾するように報じられている。増田カリスマ撮り師への直接取材などは行っておらず、削除稿は公開情報のみで構成した。そのため誰でも同じ情報にたどり着くことが可能だが、記事において「(パンティ撮影するため)わざと商品を落とした」という記述があった。これは削除稿を残している方であればわかると思うが、増田パンチラ撮影手法一般論として記載したつもりである。そのためカリスマ撮り師がそうしていた等とは書いていない。被告のすべての作品を精査し直せば確かにわざと商品を落とすシーンがあるかもしれないが、おそらくかなり少ない。そのため9割方は増田記事を底にしたものと推察する。削除稿と異なり、web記事と言えメディアが報じる形となったため、被告足跡不正確な形で数多くの人に伝わってしまった。その片棒を担ぐ形となってしまたことを申し訳なく思う。

ちなみに「タイトルに〈ガチ盗撮〉などうたっていた」とされる表現についても不正である。撮り師が自らつけたものではない。後述するが、パンチラ転売転載は深い関係にあり、その拡散過程で誇張された題名を誤解したものと思われる。この失態はAERA dot.の記者がこの界隈の事情もよく知らないのに適当にググったことによる炬燵記事が元である。それを更にパクった記者いたことによる二重の事故であると言えよう。

訂正のついでに申し上げると、2月カリスマ撮り師の逮捕報道の初報に合わせてITジャーナリスト三上洋(みかみ・よう)氏がTVで「パンチラは顔が映っているほうが価値があり、ワイプで見せる方法が多い」などと語っておられた。総論として正しいが、実はワイプ作品というのは主勢力ではない。理由は単純であり、撮影者が一度ワイプに加工してしまったものは再加工ができないが、顔・全身パートと逆さ撮りパートが分割されている動画から自分ワイプ再生して楽しむのは簡単からである。わざわざ1ファイルに合成までしてしまわずとも、2つのプレイヤー自分で重ねるだけで事足りるわけである。世の中には画面を任意位置で仕切ることのできるフリーソフトがあるため、縦横3x3の9区画に仕切りを設定し、周囲8区画で好みの部分をA/Bリピート再生しながら、中央パンティを鑑賞する「曼荼羅再生」「マトリックスマシンガン再生」等と言われる技法もあるようである。このあたりスマホの料金値下げから身代金ウイルス程度であれば十分に解説できる万能ITジャーナリストであっても、間違えてしまうのは仕方のない専門性の高い話題であったように思う。

第3のお詫び

第3にはパンチラAV女優といった表現キモいなどのお申し出であった。この点は私自身がそのような単語を好んで使用している訳ではなく、実態をお伝えするために匿名掲示板などから拾ってご紹介したまでであったが、私の言葉足らずで不快な思いをさせたとすれば、お詫びしたいと思う。

第4のお詫び

第4には用語集および盗撮ジャンルの分類の部分が文字数規定の超過により切れてしまっており、一部より続きが見たいとのご指摘があった。しかしながら気づいた時点で300ブックマークを超えており、ブクマ増加が落ち着くまで様子を見ようと思っていたところ最終的には800ブクマちょうどで打ち止めとなり、間もなく削除されてしまった。続きをお見せしたいと思いながらも第1にお詫びした点との兼ね合いで難しかった。


盗撮罪の新設について

まず、削除済みのエントリにおいて映像を「影像」と記載した。このあまり使われていない単語にこだわる感じがキモいというご指摘があったが、この語は刑事法(性犯罪関係部会から総会に対して報告された要綱(骨子)案での「性的影像記録」に合わせたものである。本稿では単に映像記載する。

第14回会議(令和5年2月3日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi06100001_00083.html

本部会ではニュースなどで知られる通り、不同意性交罪などがもっと時間を割いて議論されている。議事録最後の第14回を除いてすでに公開済み(第14回も近いうちに出るだろう)であり、盗撮も含む「撮影罪」に関する本質的議事はほぼ数回分に集中している。撮影罪については2つの観点から議論されている。

暴力系の盗撮

1つ目の観点は、強姦など性犯罪と聞いてだれもが思い浮かべるような身体的な暴力と地続きに行われる撮影である。例えば強姦の事後通報を困難とするために被害者の同意を得ずに撮影までして脅した等であれば、現状もその映像没収可能であるしかし隠しカメラによって強姦の一部始終を盗撮しており、それが被害者にも気づかれておらず脅し等を構成していない場合強姦盗撮は別個の罪であるしか迷惑条例などによって盗撮が罪となる条件は、公共の場であるなど限られている。公開を意図していなければ、リベンジポルノともならない。そのため例えば加害者の自宅などにおいて強姦盗撮が同時に行われた場合に、その盗撮映像押収・破棄できない場合があり、問題となっていた。(※いわゆる宮崎ビデオ事件など)

部会ではこの法の抜け穴を埋めるための議論が行われた。このような撮影犯罪について「出来心強姦してしまったが、ついでにビデオも回してしまった」ということは男女を問わず考えにくい。すなわちこの盗撮に関する規制強化は国民のほぼすべてが文句なく受け入れやす罪状であると考える。今期の国会においてもスムーズに成立するだろう。

映像没収に関する規定の不備は現行の刑事訴訟法において原本対象となっている点が時代遅れであるためだ。映像の複製が加害者の手を離れて拡散してしまうと心理的被害だけでなく以後の生活への影響も大きい。そのため刑法だけでなく刑事訴訟関係法律手続きなども修正していく案となっている。

ただし問題がないわけではない。こうした映像北斗の拳の敵キャラのような、いかにも悪人という加害者の仲間が、下卑た笑顔を浮かべて鑑賞するばかりではないだろう。善良なる第三者として普通に購入した強姦シチュエーションアダルトビデオが、ある日突然本物だと判明し、削除を求められるという可能性がある。そうした場合金銭補償が行われるのか?あるいは購入者リストが追跡された場合に、善良なる第三者にまで警察が来訪したり、弁護士から削除依頼などが配達されるのか?家族に対しての秘密は守られるのか?それともフィクションとはいえ強姦シチュエーションアダルトビデオを見るような人間にはそれくらいの社会罰は必要なのか?といったあたりは国会で細部が議論されるだろう。強姦だけではなく「時間停止AV」と謳っているが、実情は睡眠薬で眠らせた準強姦被害映像をそれと気づかず購入してしまった場合ではどうだろうか?このあたり増田は賛成も反対も材料を持たないため、男性陣が過去AV購入・視聴の経験を思い出して議論すべきだと思っている。

なおリベンジポルノ防止法では公表した加害者に加えて、加害者が別の人物を経由して公表させた場合にも処罰が行き渡る仕組みである。また、公表されてしまったものプロバイダー等を通じて削除できる。ただし、ネット上に掲載された情報プロバイダ等が削除するまでとしており、その対象にはLINEtiktokなども含まれるのだが、購入済のデータを各家庭に立ち入ってまで削除することは想定されていない。リベンジポルノ防止法でも立ち入っていない領域に対して、今回の刑法改正案での「性的影像記録」に関しては拡散への対処が強化されている。

盗撮罪の内訳

具体的にはこの5種類1セットが案文である

1.撮影

1.撮影撮影罪について、パンチラは後述するとして、強姦などに伴うものであれば反論はないだろう。

2.提供罪・公然陳列罪

2.提供罪・公然陳列罪も1.と同様である

3.保管罪

3.保管罪は2.の提供公然陳列のための保管が対象であり、これも予備罪の位置づけとしては異論はないと考えられる。

4.影像送信

4.影像送信罪はどうか?なぜ提供罪と別かというと、どうやらストリーミングのように垂れ流す行為や記録しないビデオ通話法律上は提供と言い切れない可能性があるためと思われる。それであればこれも賛同は得やすいだろう。

5.記録罪

5.記録罪はどうか?何も知らずに送り付けられたファイルで即逮捕されてはメールボムになってしまうため、「情を知って」という条件が加えられており、盗撮映像であると知りながら敢えて記録した人物犯罪とする内容となっている。ある日突然にパンチラAV女優になってしま被害者の感情を思えば理解できるものの、「情を知って」が曖昧な点である点は問題に感じる。法制審議会議事録を読むと、昨今の盗撮カリスマ撮り師のような事件ばかりではなく、むしろLINEでのいじめや悪気のない冗談によって身近に被害が出るものも相当数あるとされる。

とすればリベンジポルノ防止法は適用できないのか?リベンジポルノはその名前から交際関係からリベンジが条件となりそうな印象を受けるが、実はそのような条件はない。しかしながら「衣服の全部又は一部を着けない人の姿態」が対象であるため、衣服をつけているが下着盗撮しているとか、着衣だが水に濡れて透けているといった映像は法の対象である。そのような映像拡散しても誰にも止めることができない。

リベンジポルノ防止法に関する補足

リベンジポルノ防止法は平成25年10月に発生した殺人事件を契機とし、事件直後に自民党女性局が活動を開始したことが出発点である高市早苗(当時は政務調査会長)の命によって翌2月に特命委員会を立ち上げ、事件の13か月後の平成26年11月スピード成立している。もちろん野党も早期から成立に尽力し超党派での活動が見られた。

リベンジポルノ防止法と盗撮

本題に戻ると、6条からなるリベポル法は成立のスピードを優先したことで世の中に重大性を提起し、類似犯罪を抑止したという点で大きな意義があった。しかしながら、上記のようなケースの他、例えばコンドームの空き袋を咥えた「事前」の映像や、ベッドでシーツに包まれて眠りこけている「事後」の映像対象であるし、法成立後に写真週刊誌が何度か男性の浮名を報じる記事字義としてはリベポル法に抵触する写真掲載したが発動していないなど完成度が高くない面も見られる。また、今回の撮影罪の議論でもたびたびリベポル法との重複を回避しなければならない意識言及されており、中途半端法律を作るとその次の一歩が大変になることを体現している。盗撮撮影罪や記録罪においても、同様の轍を踏まないための議論必要だろう。

記録罪と「情を知って」の関係

また、記録罪のそれ以外の論点として、知り合いが被害にあったことを知りつつ、それが拡散されてきたときについ保存してしま行為(※男のエロい気持ちだけでなく、ゴシップ感情や、いじめっ子的マインド、その後にその女性が有名になった場合に高く希少価値が出る期待感などから女性らも行う可能性が十分にある)を法律規制するものと言える。しかしながら送られてきた映像が気に入ったから保存したまでだが、知り合いとは気づいていなかった場合もあるだろう。その場合であっても警察から後日「情を知って」いただろうと問い詰められるようなことがあり得る。このことは単なる一例であるが、「エロい姿を撮影して公開してしまう」というような他の4つの犯罪はうっかりで起きる可能性が低いのに対して、意図せずして巻き込まれ可能性が高い条項である。老若男女を問わず国民が広く議論し、その声が国会議員に届き、国会で記録罪まで刑罰に含めるべきか否かがしっかりと議論されるべきと考える。

技術進展における記録・送信等の定義の困難さ

ストリーミングキャッシュといった技術の進展に合わせ、どこまでが記録かというのを法律的に正しい文面として構成する難易度の高さも懸念したい。すでに「提供」「公然陳列」「保管」「送信「記録」とあるが、果たしてtiktokのように放置していればいつまでも流れているようなアプリに流すのは何に該当するのか?Instagramストーリーズのように24時間で消える動画は何に該当するのか?女性Youtuberローアングルライブ配信しながら立ち上がったところパンティが見えてしまうような、いわゆる配信事故が起きた場合撮影罪なき記録罪が成立し得るのか?といった点を国会議員が正確に理解して議論できるかどうか怪しいため、その点も注意深く見守りたい。ただし男性実名で「盗撮罪に反対」と言おうものなら即刻会社などに犯罪助長しているなどとタレコミされるであろう。

純粋盗撮系の撮影

強姦等が性暴力系の撮影罪だとすれば、パンチラ純粋盗撮系の撮影罪とでも言えようか。まず撮影罪の全般定義は以下となる。

(続き)

パンチラ動画カリスマ撮り師の起訴に寄せて(2)

https://anond.hatelabo.jp/20230316084129

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