雪が降っていた。
雪が降っていたというのはウソで、ただ天気が悪かった。昨日の晩に雨が降ったらしく、分厚い冬の雲の下で、アスファルトが黒く染まっていた。
海に行こう、と思った。
海に行こうと思ったというのは嘘で、スーパーに行こうと思った。そのすぐ後、やっぱ天気悪いしダルいから近くのドラッグストアにしておこう、と思った。
彼女に出会ったというのは嘘で、店内にいたのは知らねえオッサン、知らねえ同世代のしけたツラの男、パツキンのヤンキーっぽいギャル、というような、いかにもどうでもいい面々で、俺はその誰とも出会うことはなかった。ただ、ちゃんぽん麺を2パック買った。
外に出ると、驚くほどに空は晴れ渡っていた。
これは本当のことだ。
というのは嘘で、天気は全然変わっていなくて、相変わらず見ているだけで鬱病になりそうな、つまらない陰鬱な天気だった。少し雨が降ってさえいた。
帰ろう、と思った。これは本当に、本当の話だ。
というのは嘘で、俺はそもそも外に出なかった。天気が悪かったからだ。
外に出るかわりに、俺は陰茎をしごいた。
陰茎をしごいたが、陰茎は勃たなかった。