2022-11-23

検閲とか検閲じゃないとか

朝鮮人扱った映像作品東京都が上映認めず 制作者らが批判

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221122/k10013900691000.html

こいつが検閲になるんじゃないかということでニュースになっていたわけだけど、

最初自分検閲になるんじゃ、とは思っていたが考え直して検閲には当てはまらんような気がしてきた。

ただ自分記憶あいまいなので、識者の意見を聞きたいと思ってここにメモを残しておく。

 

まず第一に、検閲とは

検閲」とは「行政権主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止目的とし、対象とされる一定表現物につき網羅一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるもの

最大判昭和59年12月12日 民集38巻12号1308頁 札幌税関検査事件

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52690

意味し、今回は東京都という行政権主体となって、発表前に内容を審査したうえで、不適当と認めるものの発表を禁止したといえるので、検閲なんじゃないかと思ったわけだ。

ただ、そこでない記憶を振り絞って思い出したのが家永訴訟で、探し出してみたら

「本件検定は、前記のとおり、一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法一条二項前段の規定違反するものではない。」

最小判平成5年3月16日民集 第47巻5号3483頁教科書検定事件

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56358

となっていて、検閲でいう発表の禁止は今後一切の発表ができなくなるような性質に思えるな、というわけで

22日、都議会議会棟で、昭和初期に精神科病院入院していた朝鮮人を扱った映像作品の上映会が開かれ、制作したアーティスト飯山由貴さんらのグループ都議会議員7人らが参加しました。

 

飯山さんは、東京 港区の「東京都人権プラザ」で開かれている精神障害者理解促進を図る企画展で都に展示内容の委託を受け、イベントの1つとしてこの作品を上映しようとしましたが、認められませんでした。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221122/k10013900691000.html

すでに対象作品は上映で来ていて、今後も別の機会でも上映できるだろうから検閲ではないんじゃないかと思うんだが、どうだろう。

  

ついでに言えば、東京都作品内容について判断をして拒否をできるかについては、拒否ができる場合もあるとは思う。

例えば、ジェンダーについての作品を依頼してTERFバリバリ作品が出てきたら困るだろうし、

女性支援作品HPVワクチン薬害をもたらした、なんてやられたら問題しか言えないし。

https://news.yahoo.co.jp/articles/02b7817b866ffd531d0fd4c1125f2ec3413b6055

  

ただし、そういった上映の拒否権も完全に自由とはならず、ある程度の裁量権範囲にはなるかと思う。

教科書訴訟でも検定の正当性は認めつつも、裁量権を逸脱した部分については違法性認定しているわけで。

「生体実験をして多数の中国人等を殺害したとの大筋は、既に本件検定当時の学界において否定するものはないほどに定説化していたものというべきであり……文部大臣が、七三一部隊に関する事柄教科書記述することは時期尚早として、原稿記述を全部削除する必要がある旨の修正意見を付したことには、その判断過程に、検定当時の学説状況の認識及び旧検定基準違反するとの評価に看過し難い過誤があり、裁量権範囲を逸脱した違法がある」

行政庁に大幅な裁量権を認めたものではなく、裁判所行政庁判断が相当の根拠資料に基づいてなされた合理的ものであるか否かを審査すべき」

最小判平成9年8月29日民集 第51巻7号2921頁

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52529

  

そういった意味

毎年行われる関東大震災朝鮮人犠牲者への追悼式典に小池知事が追悼文を送っていないことを挙げたうえで、「都知事がこうした立場を取っているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画使用する事に懸念があります」と指摘しています

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221122/k10013900691000.html

知事歴史認識と異なるから拒否をするというのは裁量権範囲とは認められにくい、とは思うがいかがなものだろう。

そんなわけで、検閲ではないが違法性が認められる余地はある、という感想を抱いているんだが、どんなもんだろう。

 

あと東京都側の主張についてだけど

メールは、殺傷事件があったかどうかというより、殺害された人数など、内容にさまざまな見解があり、その部分を確認たかった。展示しないように求めたのは、事件事実と描かれているからではなく、障害者人権というテーマから作品がずれているからだ

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221122/k10013900691000.html

残念ながら私は作品を見ていないので、障碍者人権というテーマからずれているかまでは判断できないのでなんともいえない。

仮にそれが本当ならば、裁量範囲内の可能性が高まるかもね。

ただ、本当にそうなら最初からメール記載してなきゃおかしいとも思っているよ。

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