2022-10-13

破壊衝動

 わたし知命をとうに過ぎた会社員です。3才年下の妻とは、学生時代に当時の趣味を通じて知り合い、それなりの紆余曲折を経て三十路前に結婚しました。彼女はある事情で、わたしとの結婚前に当時の職場退職していたので、結婚と同時に専業主婦となりました。

 わたしも妻も子供ができにくい体質で、わたし子供にあまり執着がなかったのですが、妻は子供を欲しました。夫婦で数年間不妊治療に励み、その後子宝に恵まれました。当時まだ珍しかった育休を取得し、職場の近くに居を移したわたしは、専業主婦だった妻をできる限りサポートして、妻と力を合わせて一人娘を育ててきました。

 40の声を聞くころから、妻は夜の生活拒否するようになりました。面と向かって理由を聞いたことはありませんが、あるとき「そういう気分じゃない。その気になったらこちらからうから」と苦笑交じりに拒絶されたことをよく覚えています。以来、今日に至るまで、妻との性交渉はありません。

 同じころ、妻はMLMに嵌まり、その関係者と出歩くようになりました。時を同じくして、アロマセラピーハンドマッサージなどの資格取得を始め、当時の当家貯金の8割ほどを使い込みました。

 事態が明るみに出たのは娘が中学に上がるころでした。説得が功を奏しMLMから足を洗った妻ですが、他に収入を確保する術はなく、使い込んだ金銭を返済することは叶いませんでした。わたしにできたのは、以来現在に至るまで、家計の一切を自分管理することだけです。

 妻は反省したそうです。MLMの仲間とは絶縁し、アロマハンドマッサージ趣味範囲自分ができるパート給与でまかなえる範囲)で今も続けています。特段の職業的スキルを持たない妻が稼げる給与たかがしれており、彼女自分収入を家に入れたことはありません。

 10年ほど前、仕事ストレスが原因でうつ病発症しました。1年と少しの休職を含む長い通院を経て、先ごろやっと服薬を卒業しました。3年ほど前から始めた趣味を通じて、友人が増えました。自分の半分ほどの年頃から年代まで、さまざまな人がいる、緩いつながりの集まりです。

 そんなメンバーのひとりに恋をしました。利発で機転が利き、素敵な発想を披露する、だれにでも明るく優しく接する彼女を、本来趣味活動とは離れて、個人的に遊びに誘うようになりました。最初ダメ元だったのです。わたしのようなおじさんの誘いに応じてくれるはずがない、そう思っていました。ですが彼女は快く提案を受け入れてくれ、一緒に遊ぶのが楽しいと喜んでくれました。以来、個人的な付き合いが続いています。もちろん肉体的な関係などあろうはずもありません。博物館展覧会、夕食会、日帰りの小旅行。手を繋ぐことさえ叶わない、中学生の初恋のような他愛のない付き合いです。それでもわたしは舞い上がりました。もしかしたらその人はわたし特別感情を抱いてくれているのかもしれない。

 わかっています。そんなはずはありません。親子ほども年の離れた、さしたる魅力もない中年、いや老人がばかなことを考えるな。自分でもそう思います。今の、親子のような、友人のようなふんわりした関係を、できるだけ長く続けることが、わたしにとっての最良の選択なのです。所詮は邪な、実らぬ恋です。

 夫婦仲は悪くありません。ですが、わたしは妻を恨んでいます10年以上、貞操義務を盾にわたしの性生活を奪い、台無しにした妻を、わたしは許すことができない。わたし自分より二回りも年下の女性を、己の恋する人物として妻に紹介したら。妻はどんな顔で、わたしになにを言うだろうか。そのときわたしは、この積年の恨みを晴らすことができるのだろうか。もちろんそんなことをできるはずはない。わかっています

 これが、叶うはずもない、わたし破壊衝動です。

  • 再投稿ということは、ガチなの?

  • せっかくブクマついてたのになぜ再投稿を? http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache%3Ahttps%3A%2F%2Fanond.hatelabo.jp%2F20221013064423&rlz=1C1TKQJ_jaJP1024JP1024&ei=SAVIY7GaD7rf2roP3oKIiAY&ved=0ahUKEwix3uaUm93...

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