2022-09-26

親父がオンナになって出てくって話とあたし。

 昔から家族仲は良くなかったと思う。

 反抗期思春期その他諸々が収まり何とか大人(大学卒業)になったあたしと他の関係がマシになっただけで、割と衝突は絶えない。

 特に母と父との仲は最悪だった。昔からよく離婚直前まで話が進んでおり、「我が家もついにか」と思わされたことは数知れない。

 最近は父の定年退職の後に離婚、あるいは別居という形で話が落ち着いていたのだけれど、ついに先日父が直接あたしに「話がある」と切り出してきた。

 口数の少ない父がわざわざあたしに畏まって話しかけてくるのなんて初めてだった。もう何度も思った「ついにか」を本気で思った。

 子どもを作ったら一生縛られるべきだとあたしは思わない。

 多感な思春期に片親にしないで、生活の水準を落とさないように頑張ってくれたのだと思う。

 弟も今年で大学卒業だし、自由になりたいのなら暖かく送り出してやろうと意気込んだ。

 要約するとオンナになるから別居するという話だった。ちいかわみたいに泣いちゃった。

 最初頑張ってなんか言った気がするけどなに言ったのか全然覚えていない。

 もう「わァ…ア…」みたいに本当に泣いた。人間って本気でびっくりすると泣いちゃうみたい。怖くて有名なお化け屋敷とか全然平気だったのに、新発見だった。

 泣いてたけど話は続けたかったので、続けてもらう。父親の言い分は正直だった。

「昔から自分の性に違和感があった。普通に家庭を持ったら普通になれるかと思ったけどダメだった。

 もうすぐ定年の中、いつまでも自分を抑え続けて生きていくのは自分にとってどうなのかを考えて自由になりたいと思った。

 近所で噂などが立ったら迷惑をかけるから、出ていく」

 そこまで言うかと思った。

 それってつまり、あたしたちは普通になるために利用されてきたということだ。

 けれどそばで話を聞いている母さんが黙っていたから、あたしは何も言わなかった。

 性同一性障害の診断は貰いに行って、ホルモン剤は既に飲んでいるらしい。

 脂肪筋肉だろうか?が落ちて顔が細くなったような気はしていた。

 白髪交じりの髪も真っ黒に染めて、少し長くなっていた。

 二重も前はこんなにハッキリしていたかなと思う。気付かないふりをしていたけれど、気付いていた。

 でもまさかそれがオンナになるための変化だとは誰も思うまい

 言われるまであたしは会社若いオンナでもできたのかと心配していたくらいだ。

 小四からシャーロック・ホームズが大好きなのに、なんの役にも立ってない。

 親父から聞けたのはそこまでだった。

 元々寡黙寄りなひとだし、あまり説明したくなかったのかもしれない。

 「普通に家庭を持ったら~」のくだりも多分、自分が何を言っているのか理解していないまま言っている。

 親父は追い詰められているのだと思う。抑圧されてきた被害者自分解放してあげることしか見えていなかった。

 今はLGBTも性自認ホット話題だ。

 漫画芸能人ニュース記事コメントで「(カミングアウトされた側が)なんで受け入れないんだろう。その人はその人だ」という旨の意見を見かけることは、あまりそういったことを調べないあたしでもある。

 けれど当事者になってみるとそうはいかない。いかないんだよ。

 性同一障害とは別だけれど、あたしは前にちょっとしたこと大学友達同性愛者だと知ってしまたことがある。

 結構仲が良かったかネットのひとには言えてもあたしには言えないのかとちょっとだけ寂しかった。

 わざわざ打ち明ける必要なんてないのだけれど、秘密にしていることを特別に共有されることは仲良しの証だと刷り込まれたままの、心の中の中学生のあたしが寂しがった。

 けれど同性愛者だと密かに知ったところで友達を見る目は全く変わらなかった。友達友達

 授業サボって部室でソラマメ茹でて食ってるあたしの隣で見せびらかすみたいにパスタ弁当食ってる最高の友達だった。

 正直何も変わらないと思えたことに安堵した。けれど親父は駄目だった。すぐに親父は親父だって言えなかった。ごめん。

 正直ショックを受けていることにもショックを受けている。あたしはこんなにも勝手理想他人押し付けられる人種だったのかと思った。

 あたしは親父が大好きなんだと思う。

 これ書きながらホテルで泣いてるくらい好きだ。楽観的な人間特有危険高い高いをされていた幼児の頃から、親父は自慢だった。

 授業参観の中一番背が高くてスマートで、胃腸風邪病み上がりのあたしを送り迎えしてくれた時には「(あたし)ちゃんのお父さんカッコイイ!」と同級生女子たちが盛り上がっていて鼻が高かった。

 

 目付きは悪いけれど迫力があって、年をとってもそれは変わらない。

 腕組みすると筋肉が張って強そうで、すね毛やばいけどスラリと長い足の間で『スーパーロボット大戦』のプレイ画面見ているガキの頃のあたしの写真は今でもお気に入りだ。上げていけばキリがない。

 これはあえて内容を削って外見だけに拘って書いているだけであり、エピソードも色々ある。

 色々あるから、小さい頃は結婚相手理想を親父だと答えていた。

 強要されないと子育てに参加しようとしない無関心と呼べる親父であっても、無邪気なガキには眩しかったのだ。なんでか今も変わらないのが不思議である

 あたしが恋人を作ってはドライブ中に喧嘩して山に捨てられたり口喧嘩激し過ぎて警察呼ばれかけたりしたのは親父を理想としてたからかもしれないと今だから思う。もうこの話やめよう。

 ともかく、あたしはこの理想を失う。親父は今の自分でいることを捨てたいのだ。もう見れない。

 けれどそのあたしの理想勝手ものだ。

 親父はこうあるべきという押し付けに過ぎないのだから、口に出すつもりはない。

 けれどあたしたちのために父親らしくいた日々が、あのひとにとって苦痛を伴っていたのかもしれないと考えた時はやっぱり苦しかった。

 ここのところ今まで思い出さなかったことまで思い出す。

 美容院で髪を切ったら珍しく部屋から顔を覗かせ「かわいいじゃん」とニヤッと笑ったこと。

 洗面所占領して顔面作ってるあたしの隣で歯磨いてたこと。

 安いワンピースばっか入ったショッパーの中身を床に広げていた時、一瞥していったこと。

 親父にとってあたしってなんだったのかなって思っちゃうんだよ。

 図太いことに定評のあるあたしでも流石に眠る気になれなくて、捗らないけれどジャンプ小説新人賞に応募しようと書いてた小説の続きをやってみたりして、朝になった。

 親父が仕事に出掛ける。

 「いってらっしゃい」を平気なフリして伝えて、あたしは寝るのを後回しにした。

 あたしのシフトは夜番だったから、まだ起きていてもなんとかなる。母さんが四時半か五時に起床して家族分の作り置きおかずを作ってくれることは知っていた。

 母さんはやっぱり起きていて、なんだかわかっていたみたいにあたしの部屋の前に座り込んだ。

 そして親父が教えてくれなかったことを教えてくれた。

 母さんは十九年前には知っていたらしい。

 あたしが小学一年生の頃だと思う。

 当時スーツクリーニングに出そうとクローゼットの整理をしようとした時、女物のウィッグワンピース冗談ではない数出てきたらしい。

 会社忘年会に使うようなものではないことは明らかで、もしかしたら男が好きなのかもしれないと泣いたのだと言う。

 十九年前は今のように女装癖だが性自認は男といった場合もある、などと言った情報簡単に調べることはできない。

 オカマオカマ、オナベはオナベ、母さんにはその程度の知識しかなかった。

 すぐに親父に連絡して問いただしたら「ただの趣味なのだと言われたらしい。

 母さんはやめろとは言わなかったが「子どもたちはこれから多感な時期に入る。隠してくれ」と頼んだそうだ。

 おそらくその時の女装道具は親父の手によって捨てられた。

 最初最初なので母さんは女装癖が高じただけではないかと少し思っているみたいだったけれど、そこは問題じゃない。

 問題なのは、親父が自分をどう思っているかだ。親父がなりたいならなりたいんだろう。

 それから近年に入って女装はしていないが、日本では認可されていない薬(女性ホルモンの働きを促す錠剤)をネットで買って飲んでいた。

 副作用で血管が詰まりやすくなると知って恐ろしくなった母さんが正式病院に通わせるようにした。

 間にも何やらあったようだけれど、まあそうした流れを踏んであたしたちに打ち明けたらしい。

 最近は好きな男がいるかもしれないと思っているけれどそれはセクシャル過ぎて聞けないし、夫婦仲も年々悪化していく一方だから、もう限界だろうと。

 母は泣いていなかった。平気な顔して「まさか(弟)の方が平気でアンタの方が泣くなんてね」と笑った。「あんたお父さん大好きだったもんね」とまで言った。

 デカくなってから口に出したことはないのに見抜かれていたのだと思った。また泣きそうになった。

 母さんは悪い意味で凄まじいひとだ。

 我が強く元々ヒステリックな質なので、甲高い声で怒鳴る。

 大学の頃友達の家で鍋パしようとした時には帰りが遅いと鬼電掛かってきたのをとったら怒鳴り声が漏れしまって、会を一瞬お通夜にしてしまたこともある。

 “殴られたら殴り返す”を座右の銘にしていたクソガキなあたしと母さんの教育制裁とで殴り合いになったこだってある。

 もうあたしは落ち着いたものだけれど、今でも大学四年生の弟や親父との怒鳴り合いはちょこちょこ行われている。

 頭に血が上ると手が付けられない、感情で生きているひと。

 口論になった時は義務教育の敗北を感じることもあるくらいハチャメチャだった。

 話を逸らして自分の強い土俵(家事全般を未だに引き受けてもらっているので頭が上がらない)に持っていき、怒りが収まるまで口撃し続けるのをやめてほしい。

 そういう生き方からガキの頃のあたしとは最悪の仲だったし、弟と父からは嫌われている。

 それでも今までやっていけていたのは、母が狂気のひとだからだと思う。

 母は片親だった。祖母祖父が非常に仲が悪く幼い頃に離婚したため、祖母と妹と三人で暮らしていたらしい。

 苦労したと言う。

 経済的にも、色々。

 専門学校は楽しかったそうだが、大学を出ていないことを負い目に感じていた。

 親父と結婚する時には、父方の祖父母に片親なことを猛烈に批判され、別れろと言われて破局寸前まで行っていたらしい。

 片親なことで苦労してきた人生から子どもたちは決して同じ目には合わせないと常日頃から豪語していた。そこから狂気が始まった。

 十九年前からの親父の件もそうだけれど、ウチは色々問題が多い。

 あたしの場合高校生の頃に自殺未遂をしている。

 父方の祖母が首を吊って死んだから、あたしもそうしようと思った。

 クローゼットの梁にベルトを掛けて踏み台を蹴った。

 思ったよりベルトが長くなってしまって短くしたかったけれど足はつかなくて、絞まってきた辺りで母さんに発見された。

 あたしのこと抱っこするみたいに持ち上げて叫ばれた時情けなかった。

(いい話風に言っているけれど母さんはあたしが高校に登校する直前、拒否反応で発作的に吐いてしまった時本気でぶん殴った。

 掴まれ廊下引きずられて放りだされたけどゲロは片付けてくれた)

 自殺の原因はクラス男子の誤解から始まったいじめだった。

 不眠症うつ病(今は双極性障害二型)を診断されて、今も治っていない。

 時々ひどくなって寝込んだりするし、色々ある。社員には到底なれないか大学を出て数年経った今もフリーターだ。

 自殺未遂の後は申し訳ないことに常に家族に緊張感があった。

 なんとかそれが落ち着いて、あたしが一年自宅療養の末に大学に進学し、弟も続く。

 そうしたら今度は弟がアムウェイにハマり、終わったと思ったら詐欺事件を起こしてくれた。当時流行った持続化給付金詐欺だった。

 親父が封書を見つけてあたしが間に入り、母さんに伝えた。

 両親揃って弟を詰め、翌朝警察自首させた。結果前科はつかず前歴だけついたのだが、当時は弟を放り出すか放り出さないかで少し揉めた。

 弟と仲が悪いわけではないけれど、その時のあたしは自棄になってこれ以上のことをされたら困ると放り出す派だった。

 親父に至っては既に絶縁の仕方についてスマホで調べていた。ただ母さんだけが弟の味方だった。

「帰る場所がなくなるのが可哀想。見張ってないとなにするかわからない。大学卒業までは家に置く」

 この期に及んで可哀想なんて言うとは大物過ぎる。

 言っている意味はわかるけれど、弟の性格を考えると当時は本当に前科者が身内から出るリスクが高すぎると思った。

 「殺人しても受け入れるのか」と聞けば「怖いし何考えてるのかわからなくなるけど、受け入れる」と言う。母さんは涙を流して言った。

だって家族じゃん。受け入れてあげないと」

 理解できない人種だ。

 あたしは呆れた顔で「あたしは親じゃないから好きにして」とその場を離れることにした。

 母さんはその後残った親父を何とか説得したらしく、お務めせずに戻ってこられた弟は無事我が家の敷居を跨ぐことができた。

 その後もたびたび事件にはならない程度の問題を起こしては母さんと喧嘩しているけれど、無事である

 そうした出来事を思い出しながら今回の親父の件を聞いて、あたしは母さんに対する理解を越えた何かにようやく名前を付けられた。狂気だ。

 とっくに崩壊している家庭を一つの家に何とか収めているのは、このひとが“両親の揃った家庭”に“家族”に拘り続けているからだった。

 あたしが「死にたい」とこぼしていた頃に我慢して聞いて、親父の秘密を抱え込んで、弟の刑がどうなるかわからないとソワソワした頃を乗り越え、

 毎日のようにあたしか弟か親父とやり合って「お母さんもそろそろヤバイよ病んじゃうよ」「最近更年期ひどくて……」なんて言いながら嫌われ疎まれながら毎日四人分の家事こなして

 元気に犬の散歩まで行って弟に大学出てないくせにって馬鹿にされたか通信放送大学卒業して土日はパートに行っているこのひとなんなんだろうなと笑ってしまった。本当狂気だよ。

 母さんが途中で挫けていればあたしはあの日かその後の再チャレンジで死んでいる。

 帰る場所のなくなった弟はまあ間違いなく自棄になるので今度こそ塀の中に入ったかもしれないし、大学は確実に中退になっていた。

 離婚していれば今の家にはもう住めていないし、時期によってはあたしたちを支えた犬猫とは出会えなかった。

 険悪すぎる、ほぼ崩壊している家庭だけれど、今の生活繋ぎとめているのは母さんだ。

 親父は抑圧されていたのかもしれないけれど、『トップガンマーヴェリック』が本気で面白いからって語ったら元祖の『トップガン』を何度も見たという話をしてくれたのは最近だ。

 ソーシャルゲームの『マギレコード』を好きになってストーリーについて二人で話したのも最近のことだ。

 なにより親父が「お母さんは嫌いだし弟とは縁を切りたいけど、お前のことまで見捨てるつもりはない」ってある日突然打ち明けてくることもなかったかもしれない。

 今の状況は良くも悪くも本当に母さんのおかげである

「なんか偉そうになっちゃうけど言葉見つからいからそのまま言う。ちょっと見直した」

 母さんはちょっとびっくりした顔をして、シャッター押される瞬間に目つむった人みたいに笑った。

「嬉しー! アンタ滅多にひとのこと褒めないからね」

 そうかもしれないとその時初めて気付いた。

 友達相手にはできるだけ口に出しているのに、家族にはあまり言ったことがなかった。

 良くも悪くも正直なあたしが作り置きのおかずをなんとなしに「美味い」って言ったら大袈裟に喜んでた理由がようやくわかった気がする。

 イカレてると思ったことは数えきれないし色々あったので毒親チェックリストスマホで調べて確認して伝えたこともあるし、

 このひとがいなくなったらあたしはこんなにキレたり泣いたりしないで済んだのにと考えたこともあったけれど、初めて親相手に後悔した。

 親父相手にじゃなかった。なんであたし母さんのこと認めてこなかったんだろうって本気で思った。あたしもあたしで必死だったけれど、もっと報われるべきひとだった。

 「親父が『普通になるために家庭を持った』って言った時、利用されてたって驚いたけど、母さんが何も言わなかったからあたしはなにも言わなかった」と伝えたら

 「いいこと言うー! それお父さんにも言って!」と喜んだ。やっぱり感情で生きている。後先のことを考えられていない。あたしが親父にそれを言ったら完全に断絶だと思う。

 ホルモン剤で多少情緒不安定になることがあるらしいしその傾向は正直あると思う。

 元々デリケート話題なのも相まって、なにで親父が傷つくかはほぼ手探りだった。母さんほどズケズケは行けない。

 そうやって母さんのことを思い出し笑いしながら、ちょっと落ち着いてまた親父のことを考えた。

 ていうか折角好きなゲームオーケストラ聞きに来ているのに親父の下半身のことを考えていた。ちょこちょこ涙があふれた。

 おかげで始まる前から死ぬほど感極まっているひとになっていたと思う。マジで近寄りたくない。

 ともかく、枕元に性転換手術についての資料があるらしいから今すぐではないにしろ親父は本当にオンナになりたいんだと思う。

 アレがなくなって、見た目が変わって、あたしは親父を愛せるかを考えた。愛せるなって思った。

 でもあたしは涙もろいから泣いてしまうと思う。

 『ロンドンゾンビ紀行』でおじいちゃんゾンビ吹き飛ばし生還したシーンだけで泣いてしまえるタイプだ。原因は何であれ、きっと泣く。

 けれど親父からしたら涙脆いからっていうのは理由にならない。折角あたしには会うって言ってくれているのに台無しになる。

 “本当の自分を受け入れなかったひと”のくくりにあたしは入ってしまう。もう入っているけれど、その日の断絶はたぶん決定的だ。

 ひとは決断に迷った時、自分のされてきたことを思い出すのかもしれない。

 思い出すのは母さんと揉めて珍しく正義があたしにある時「オマエは間違っていない」と味方でいてくれたこと。

 僻地への合宿で一時間に一本の電車を逃して泣きついたあたしを、キレながら車で送ってくれたこと。

 二日酔い酷くて電車乗れなくてずっとゲロ吐いてるあたしをキレながら迎えに来てくれたこと。あたし最低すぎる。

 そして何より、うつ病やって“普通”になれないあたしを肯定してくれた。

 受け入れてもらったら受け入れなければならないわけではないけれど、あたしは親父を否定したくなかった。

 どう考えても時間必要だった。考えて考えて考えて考えてどうでもよくなるまで考えてからじゃないとあたしはきっと親父を傷つける。

 ひとりよがりだけれどあたしはそれがすごく嫌だ。それにあたしも答えが出たつもりになっているだけで、あとから思うことが出てくるかもしれない。

 失うことになったせいで補正が掛かっているかもしれないこと、思い出が美化されているかもしれないこともわかっている。

 そして普段にも増して涙脆くなっていることは、あたしがまだ勝手にショックを受けている証拠だった。

 親父はうちのボケ老犬が寿命を全うするまで、もうしばらくは家にいてくれる。

 だから今は「おかえり」と「いってらっしゃい」を普通に言って、落ち着いたら好きな漫画とかの話をしてみようと思う。

 少年漫画特殊能力の強い弱いとか、来週の展開の予測とかそんなオチもなんもない話をしたい。創作物ってこういう時本当偉大だ。懸け橋にも味方にもなってくれる。

 あたしは馬鹿なので不謹慎でも笑い飛ばせる人間だ。

 例えば弟が自首する時に母さんに深刻そうに「なにもってけばいいと思う?」と聞かれて「知るわけないだろ」と笑ってしまった。残念ながらあたしに自首した経験はない。

 仕方なくスマホで調べたら留置所持ち込み不可リストみたいなのが出てきてまた笑った。気が早い。

 自首することは別に拘留されることとイコールではなかった。そうやってニヤッと笑って、まあなるようになるかと気を持ち直す。そうしたら(全部母さんのおかげだけれど)本当になんとかなった。

 今回も親父の一件であたしは「対腐女子相手禁止カードを手に入れてしまった」と想像してニヤッとした。

 あたしは元々BLが苦手なので、今度から一方的に語られた時などに「親父がオンナになって出て行ってるから、生生しい話はちょっと……」とつらそうに言えると思った。

 ひとの心があれば謝ってきてそれから疎遠になる。多分一生使わない。

 そうやってニヤッとできたのだから、今度もまあなるようになる。

 あたしは両親どちらかを支持することはしないで、二人とも尊重したいと思う。

 ガキの頃言ってこなかったせいか今になってこういうことになったからか、あたしは二人が大好きだと今気付いた。お恥ずかしい話。


 けれど真面目な話。ここでお金問題が浮上する。

 文字数入りきらん記事わかれた https://anond.hatelabo.jp/20220926234949

記事への反応 -
  •  短い続き。  まだローンの残っている家は少なくともあと三十年ほど住めるので、ありがたいことに出ていく側の親父が払いきってくれることになった、らしい。  これはあたしの...

    •  昔から家族仲は良くなかったと思う。  反抗期思春期その他諸々が収まり何とか大人(大学卒業)になったあたしと他の関係がマシになっただけで、割と衝突は絶えない。  特に母と父...

    • なんか読んで「女(じぶん)の体をゆるすまで」を思い出した。 根詰めて働きすぎないようにね。

    • https://happygenkiman.hatenablog.com/entry/2022/09/25/213346 これ本人さんに許可とって全文ノーコメント転載してんの?

      • ごめんこれあたし。情弱だから匿名ダイアリー?って一個記事だけ書けるとのブログ作るのの違い理解しないまま書いちゃったから非公開にして移動してきた。転載心配させてごめんね...

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