2022-08-13

同人音声の隆盛と衰退について書いてみる

同人音声について取り上げたブログが先日ホッテントリに上がっていたのもあって、同人音声沼にもう何年も浸かってる自分が界隈の変化と今を簡単にまとめてみる。

まず、音を聞いて抜く(しこる)ってのがよく分からない人もいると思う。AVエロ漫画と違って視覚的な刺激がないので、物足りなさを感じるかもしれない。可愛い声の女の子エロい台詞を喋ってくれればそれはエロいのだが、同人音声はエロい台詞というよりシチュエーションで抜く文化になってる。目を閉じてイヤホンヘッドホンをはめて、女の子が隣にぴったり座って耳元で囁きながら手コキしてくれるような妄想で聞いて抜く。エロい台詞があったらもちろん抜けるんだけど、ぶっちゃけ耳元で吐息があればいいし、随所で「おっきくなってきたね」とか「我慢汁でてるよ」とか「そのままいっていいよ」とか簡単台詞があればそれだけでもいい。エロい台詞朗読じゃなくて、どっちかというとバーチャル女の子がすぐ隣にいるシチュエーションで抜くわけ。VRAVもかなり一般的になってきたけど、同人音声のバーチャルは本当にすごい。だって想像から。とても可愛い二次元美少女世界最高峰モデリングで出てくる。だって妄想から。それを可能にしてくれるのが音の存在感っていう作り。映画ちょっと音響のいいシアターで見ると音がすぐ隣にあったり後ろから来たりしてビクッとすると思うんだけど、それをすごくミニマムエロに特化させたのが同人音声ということ。シチュエーションバーチャル二次元美少女を成立させるための演出に特化してる。

それで、2010年代後半に爆発的に発展したのが、バイノーラマイク。それまでは正面位置の音を左右にパンするのが一般的だったけど、バイノーラルで細かく位置や高さや距離演出できるようになった。音だけで女の子が近づいてきたり、離れたり、手前に移動して乳首を舐めてくれたかと思ったら、左耳に回って囁いてくれて、今度は右に移動して耳を舐めてくれたりする。さっき上に書いたシアターの音響に近づいた。今ではバイノーラルの音声作品が主流になって、そうじゃないのは市場の一割くらいになった。それくらい、バイノーラルで爆発的に発展した界隈。

そういう背景もあって、同人音声はMと相性がよかった。目を閉じて、バーチャル二次元美少女イメージしながら抜くから自分から腰を振るのはちょっと動きとして違うよねっていうのがずっと強かった。エロ漫画を思い出してほしいんだけど、エロって普通、責める方が喋るの。言葉イニシアチブを取ってる方が発する。陵辱ものは竿役がべらべら喋るし、痴女ものヒロインが喋る。だから、お姉さんが優しく手ほどきしてア・ゲ・ル(はぁと)、みたいなのが同人音声には多かった。受け身のMが二次元美少女に手ほどきされるのが同人音声のメディアと相性よかった。だから同人音声といえばM向けって印象を持ってる人も多いんじゃないかな。これは音を聞いて抜くっていうスタイルを重視した結果で、1人でしこしこオナニーするには受け身の内容がぴったりだった。でもバイノーラルの発展と共に、スタイルじゃなくって、音そのもの勝負する流れが生まれてくる。マイク技術が上がってきたのもあって、女の子の喘ぎ声をクリアな音声で収録して、それにぐちゃぐちゃぱんぱんって腰振りの効果音を合わせると、男が動く内容でも音として抜けるようになってきた。技術スタイルや相性を上回ってきた。

また、同人音声は当たり前だけど竿役が喋らないから、「〜ってこと?」っていうちいかわ構文みたいなオウム返しを使って竿役の台詞を代弁させるのが一般的だった。これも変わってきていて、巷の噂では声優オールアドリブをさせて収録させていたりと、より自然に、シナリオではなく臨場感や音の質やリアリティで抜かせる方向に進化してきた、ってこと。

ASMRっていうのも今では一般的になって、YouTubeでもよく見るようになった。これはぞくぞくする音の快楽を求めるものなんだけど、もちろん、同人音声とも相性がよかった。R15あたりのちょいエロASMRが出始めて、今ではASMRと同人音声をひとつ作品パッケージするものも多くなってきた。これも上の流れと同じで、アニメチックでM向けとされてきた同人音声が、音の質というガラパゴス進化を遂げてきた背景がある。だから今は環境音に凝るサークルも多くって、実際に街中で街の雑踏の音を録ってきたりもよくある話。腰振りパンパン効果音も、金と機材のあるサークルマイクの前でオナホとローション使って声優の声にあわせてパンパンして録り下ろす。よりリアル臨場感のある音が仕上がって、妄想の中で二次元美少女が喘ぐ。実際に腰みたいな大型オナホを買う人もいるだろうけど、ほとんどそうじゃないと思う。本当は腰を振ってないけど、音で腰を振るイメージができる。AVエロ漫画みたいに、映像や絵の刺激と同じように、音そのものの刺激という根源的なところに戻ってきた。それができる技術が積み上がってきたのね。だからほとんど受け身コンセプトだった市場はがらりと変わった。

女の子が喘ぐ声と音の質を重視する流れは、ASMRと合体して、耳舐めという文化を作った。女の子が耳を舐めてくれるエッチプレイ。ただ浅いところでぺろぺろするんじゃなくて、本当に舌をねじまれているようなぐぽくぽしたやつが今の流行り。そのまま吐息混じりに淫語を囁いてくれる。それもバイノーラマイクで。そして今の流行りはオホ声。これはエロ漫画アヘ顔の音声版みたいなやつで、女の子が濁点がついた お゛っ て喘ぎ声をはしたなくあげるというもの。一歩間違えるとゴリラのウホウホ声になっちゃうんだけど、上手い声優さんはとても上手い。しかもこれはいわゆる種付けピストンみたいなごりごり男が責める内容と相性がいい。オホ声の流行は、古くから続く同人音声=M向けが決定的に覆されたわかりやすい例だと思う。

でも、ここまで盛り上がっている市場は衰退しつつある。粗製濫造のターンに入ってきた。それまでは個人サークルが細々と作るまさに同人文化だったが、そこから成り上がった大手サークルや、資本力のある企業が、どんどん数を出すようになってきた。

同人音声って、実は簡単に作れる。まずエロアイデアを出す。そこからライター仕事を依頼する。これで3万くらい。声優に読んでもらう。多めに見積もって10万。絵師に依頼する。これも10万だとする。編集だってネットで探せばやってくれる人は山ほどいる。これに5万としよう。あとはデザインとかロゴとかをフリーデザイナーに依頼して2万として、合計30万。これだけあれば立派な見てくれの作品は作れてしまう。これを1000円で売ったとして、プラットフォーム(例としてDLsite)の取り分が4割なので、600円が利益。500本の売上が損益分岐点だ。500人に買ってもらえばいい。そしてこれは、有名な声優と有名な絵師を使えば、ほとんど簡単に達成できる。そして流行りがとても顕著でユーザーもすぐそれについていく市場なので、今であればとにかくオホ声主体作品を作ればいい。損益分岐点を越えれば、あとは補充不要自販機として延々と売れていく。有名サークルほとんどFIREしていくだろう。年に数千万は固い。だから参入障壁がとても低い。同人で家が建つの漫画だとイメージやすいと思うけど、絵はそう簡単に身につかない。練習必要。でも同人音声は簡単。全部人に依頼しても作れてしまう。最初の元手さえあれば回るだろう。コロナもあって副業で音声サークルやる人が増えて、実は近年、同人音声の作品リリース数は過去最高を更新し続けている。完全に市場は飽和。そして利益が落ちたエロ会社もどんどん資本を投入してきていて、個人同人)では作れないクオリティの音声をすごいスピードリリースするようになった。今、音声市場は完全に供給過多になった。でも、それでも売れている。もうほぼギリギリで、そろそろ表面張力限界のような気がする。

あとはプラットフォーム問題。現状はDLsiteが独占状態で、FANZA最近は音声に力を入れてきたけど足元にも及ばない。DLsite事実上の独占にあぐらをかいて、一部サークルを反感を買うレベル優遇したりと阿漕なことも沢山やっていた。最近ちょっとそういうのも大人しくなったけど、あまりにも一社独占なので、DLsite判断ひとつでどうにでもなる感じ。市場競争が成り立っていない。これもすごく危ない。

そして同人声優。元エロ声優が半分くらい、もう半分は同人音声の時代に成り上がってきた若手。といっても有名どころの十数人が主力で、ほとんどその人たちで回っている。上に書いたように作品リリース数が跳ね上がってるけどネームバリューのある声優はまだまだ少ないので、余裕で半年一年先の収録スケジュールまで埋まってたりもする。バイノーラマイクを扱えるスキルがあってASMRにも理解があって耳舐めできてオホ声も出せる、あまりガラパゴス進化しすぎた存在なので、替えが効かない。これもちょっと市場としては健全じゃない状態

同人音声は、聞き手想像力に頼る形で発展してきた。ドラゴン娘もサキュバスエルフスライム少女ともエッチできる。だって想像の、バーチャル存在から。どんなエロ漫画よりどんなコスプレより解像度が高くぬるぬる動く。妄想から。そしてそれに説得力を持たせられる音の技術が上がってきた。純愛NTRスカトロも欠損も拘束も催眠も、だいたいの性癖はそろってる。無い性癖を探す方が難しいと思う。視覚に頼らないから、人の想像力っていう根源的なところが占める割合が大きい。AVエロ漫画より可能性が広い。人の想像の数だけ広くなる。それが、目をつむって楽しむエロである

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