広々とした店内でアジア系の店員が1人接客してくれた、客は俺1人だった。
こってり系の醤油豚骨を注文し待つこと数分、ラーメンが到着したが、レンゲがなかった。
カウンターの上にも無かった。
それらしい物が入りそうな筒にも入っていなかった。
猫舌の俺はレンゲに麺を入れてフーフーする必要がある、豪快に啜れないのだ。
店員を呼ぶ。
俺の声も小さかったのか、「すみません、レンゲください」という言葉だけが店内に響いた。
仕方ないとレンゲなしで熱々のラーメンを啜る覚悟を決めた時に気付いた。
よく見ると奴は、レンゲはラーメンに敷かれている皿と丼の間に隠れていただけだった。
ずっとそこにいたのだ。
また来よう。