2022-07-14

から家まで帰る途中に小さなタイ料理屋さんがある

普段バイクで移動するので、なかなか駅から自宅まで歩く機会は少なく

お店がオープンしてから開店にに気づくまでしばらくかかった。

その店が入る前はタコ焼き屋が入っていた。

ひげ面で丸眼鏡の痩せた小柄な日本人店長が一人で切り盛りをしている。

自分普段外食をする機会があまりない

健康に気を付けてとか、節約になるからとか外面のいい理由はたくさん思いつくのだけど、

一番の理由食事を終えて満腹の状態ですぐに寝るという悪癖を好むからだ。

から自宅の近所に気になるお店はいくつもあるのだけど

どのお店もなかなか訪れる機会がない

このタイ料理屋さんもそんなお店の一つだった。

初めてこのお店を訪れたのは、普段遣いのバイクが突然パンクをしてその修理の手配をした帰り道だった。

突然のトラブルうんざりした自分は、気分転換ランチを外で食べたくてそのお店に立ち寄ることにした。

店のドアを開け一人の入店であることを伝えると、店長こちらを見ずに

カウンターへどうぞ」

自分を席に案内した。

店内を見回すと、自分の住む6畳のワンルームより一回り狭いぐらいの広さで

二人掛けのテーブルがふたつ、カウンター席が1席のすごく狭い造りだった。

テーブル席の一つはカップルがすでに食事をしていて、一人はカオマンガイをもう一人はガパオを食べている。

時折女性自分の食べているカオマンガイ男性に食べさせて、男性自分の食べているガパオ女性に食べさせていた。

店内を見回すと、店内の壁にはタイ語カラフル張り紙メニューが張られていて、その下には日本語でそのメニュー説明が書いてある。

それに目を通していくとランチカオマンガイガパオこの2種類のメニューしかやっていないようだ。

どちらを食べるか思案していると、以前ネットガパオレシピというのを調べて自作したのを思い出した。

レシピりの調味料材料を集めて、それなりの金額になったガパオはとても美味しいと言えるものではなかった。

きっとプロの手によって作られたガパオは別物のような美味しいものなのだろうけど、

素人材料を集めて作れる料理を、めったにしない外食で頼むのは悔しい気がした。

ランチセットのカオマンガイを1つお願いします」

カオマンガイですね」

キッチンで何かをしていた店長に声をかけると、彼は手を止め、

こちらを見ることなく伝票に注文を書き込みながら答えた。

注文を終えて、スマホを弄りながら待っていると意外と早く注文はテーブルに届いた。

思ったより量の少ないジャスミンライスの上に、

鶏もも肉がたくさん載せられ、その横に小さなお椀に盛られたスープが添えられている。

食べてみるとこれは意外といっては失礼なのだがなかなか美味しい。

だがやっぱり量が少ないな、何か追加で食べようか。

そう考えながら壁のメニューに目を通していると、店長が突然話しかけてきた。

「うちのお店のカオマンガイは本物なんですよ」

突然の会話と、唐突言葉にびっくりしていると

日本にあるタイ料理屋さんはね、カオマンガイだけ出しているわけではないでしょう。だからジャスミンライスをほかの料理にも使えるように必要工程飛ばしてたりするんです。うちはそんなズルしないですからね」

そう早口でまくし立てるように言葉を繋げてきた。

びっくりしながら何か返答しようにも思いつかず、

自分はこんな美味しいカオマンガイ食べたことがないという社交辞令を言うしかなかった。

それから店長カウンター越しにしばらく会話をした。店長はいわゆるタイ沈没していたバックパッカーらしく

タイ料理タイでの思い出について聞くと店長早口饒舌に語り、日本にあるタイ料理はいかに本物と違うもの演説が始まった。

その日からたこのお店を訪れるまでしばらくの時間必要だった。

帰宅インターネット食べログを開くと、店長接客に苦言を呈する投稿をいくつも見つけた。

だがどの投稿料理の味は褒めている。

なんとなく自分だけではなかったのかと安心するような、心配するような気持ちになった。

店のインスタを見つけフォローした、今日も客が少ないと文句を言いながら元気に営業している。

フォロワーが数十人しかいないのが不安だが。

すごく懐が暖かいときにたまに店に行くようになった。店長演説シンハービール片手ならBGMにできる。

今日もインスタのストーリー店長のボヤキが載っている

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