2022-05-25

中学生だった私とキリンジの思い出

中3の夏、私は友野先生が好きだった。

通っていた個別指導塾は、大半の講師大学生アルバイトだった。

友野先生は他の講師よりよりちょっと年上だった。

一度就職をして、地元に戻ってきたという。前の職業は、コンサルタントだったらしい。

白く華奢な手でノートメモしてくれた数式は、そのページだけ切り取って筆箱の中にしまっていた。

先生のインスタを見つけた。ID本名誕生日だった。

身体が熱くなるのを感じながら、メッセージを送った。

話しているうちに、先生の車の話になって、ドライブに行くことになった。

金曜日の授業後、お母さんには友達の家に泊まりに行くと嘘をついて。

お父さんの運転以外で初めて乗った助手席は、少し窮屈な感じがした。

新車匂いが少しだけ残っている、星のマークの車だった。

全然知らない曲ばかり流れていたけど、高速道路の明かりに溶けて心地よかった。

かっこよくない男の人が二人、ナビのオーディオ画面からこちらを見つめていた。

どこかで聴いたことのあるようなメロディーに、「誰の曲ですか?」と聞いたけど、先生は教えてくれなかった。

次の授業の日、先生休みだった。その次の週も、次の月も、先生が来ることはなかった。

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