■もかちの部屋
知らない部屋で目が覚めた。
どこかの家のようだったので玄関を探したが見つからなかった。
家主と思われる老婆が家の外で柵を壊していた。
男性はそれを横目に新聞を読んでいた。
おかっぱ頭の若い男も家の外で柵を壊していた。
玄関ホールと思しき場所は何故か鏡の壁で塞がれていた。
その鏡が人一人入れる程度に割れており、そこから出られるのでは、と覗き込んだ時だった。
「どこ行くのもかち」
老婆と男性たちが満面の笑みで私の肩を掴んでいた。
「もかちもかちもかちもかちもかちもかちもかち」
目が覚めた。
身動きが取れない。
見回すと自分の右に誰かがいる。
光のない目で正面の壁をじっと眺めている。
彼がもかちなのか自分がもかちなのかもう分からない。
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