2022-02-06

映画夜明け前のうた ― 消された沖縄障害者』について

映画夜明け前のうた 消された沖縄障害者

https://yoake-uta.com

 なんの予備知識もなく鑑賞したがガッカリな内容だった。ただただ薄っぺらい。意味のない無駄カットが多すぎる。そして、やたらナレーション説明が多い。NHKノーナレ』千本ノックしてほしい。

 「狭いところに閉じ込められてカワイソウ」以上のメッセージわたしは受け取れなかった。さらに、アフリカ精神障害者は野外に鎖で繋がれているだけなので開放的というエピソードは一体なんのために挿入されたのかも意味不明。

 この映画にはたくさんの精神障害者顔写真名前が出てくるが、ご本人やご遺族の許可が取れているのだろうか? 遺族の上映許可なく「この人は精神障害者私宅監置されていた」と映画にしたなら、これは大規模な公衆アウティングであり重大な人権侵害だ。

 事実、一部の遺族から無許可および事実誤認について異議申し立てがあったそうだ。原監督は「公表したのは名前だけで苗字を含まないか特定不可能」だという。地方部落では同姓も多いからお互い名前で呼び合うのが普通だ。都会の人には想像すらできないだろうけれど、そこには隣近所のプライバシー匿名性のない濃密な社会存在する。映像内で第三者の「帰りたくても帰れなかった」という表現事実誤認)は、インタビュー形式であればその発言の責を逃れられるという意味でそのまま残したのか? (わたし初見だが、このインタビュイー発言事実として受け取った)

 こうした遺族の異議申し立てによって、文化庁の上映会が延期されたそうだが、かかる人権侵害申し立てがあれば主催する上映会の一時差し止めが常道であろう。それを遺族からの「クレーム問題と捉える姿勢は悪質。原監督が「国家権力による言論封殺」と述べた時にはズッコけた。

 現代社会精神障害者が置かれている立場精神科医問題さら法整備への問題提起とはならなかった。むしろ歴史上の「沖縄カワイソウ」にフォーカスし、精神科入院病棟があった本土台湾などを上位づけするのは、現代につながる精神科病棟の諸問題(例えば医療保護入院社会入院など)を正当化するに等しく大いに誤解を招く内容だった。

地域社会人間関係や遺族心情への想像力も足らず、その責任を引き受ける覚悟もなく、ただただ映像力不足

キャッチー社会問題を取り上げ(たつもり)て左方面チヤホヤされたいだけのペラペラ作品だった。

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