うつで長期休職したのち、会社から復職の条件として提示されたのが、
そこに勤める臨床心理士がYさんだった。
施設のプログラムは、うつの再発を防ぐことに主眼が置かれたもので、
Yさんは歳は30過ぎ、小顔ですらりと手足が長く、
お子さんが一人いる既婚者だが、見た目は歳より若く見えた。
数か月してお互いのこともよく知りあったころ、
今にして思えばYさんのこの行動はプロとしてはいかがなものかということになるのだろうが、
年上で会話の引き出しが多い私はYさんの周りにはいないタイプで、頼りになるのだと。
そういうことを繰り返しているうちに私は、屈託なく頼ってくるYさんに好意を持つようになっていた。
復職プログラムも終わりに近づいたある日、呼吸法により自律神経をリラックスさせることを実践していた時だった。
少し離れたマットの上にYさんと並んで横になって、BGMに合わせてYさんが「鼻から大きく息を吸って~、ゆっくりと口から吐いて~」と何度も繰り返し、
ゆったりとした時間が流れていた。ふとYさんの声が止まり、どうしたのかなと思い目を開けてYさんの方を見ると、だまったままじっと私を見つめていた。
「増田さん、もうすぐ卒業ですね」とだけいうと、また長い沈黙とともにただ私のほうを見ていた。
私は衝動的にYさんに近づいた。唇か重なる直前に、Yさんは人差し指を唇ノの前に立てて、
ゆっくりと首を振った。たまらなく愛しいその顔を覗きながら、ダメなの?と聞いた。
やっぱりだめですよ。私は何とも言えないもやもやと、胸が張り裂けそうな思いの両方を押し殺して、
その後私は無事復職した。復職後のフォローアップとして定期的にYさんと面談があるのだが、
会社の人間も同席するため、個人的な話は全くできない。6か月後の最終面談はコロナの影響で実施されずうやむやになり、
その後Yさんに会う口実もなく、1年経った。
相変わらず吹っ切れない思いを引きずっていた私は、意を決して施設に電話した。
コロナが落ち着いてきたので、最終面談で言おうと思っていたお礼をどうしても伝えたい。
一度会って欲しいと。Yさんの返事は施設の会議室でならOKとのことだった。
私は別に何のプランもなく、とにかくYさんに会いたいという思いだった。
会議室に通されて、Yさんと二人きりになると、直ぐにそれまでの社交辞令的な話をやめて、
Yさんにどうしても伝えたい気持ちがあると切り出した。
Yさんはあの時と同じように何も言わずに人差し指を唇の前に立てて、首をゆっくり振った。
目を真っ赤にし、涙をぽろぽろ流しながら、それをぬぐうこともせず、ゆっくりと首を振り続けた。
Yさん側からみたらめっちゃ怖い話やんけ
この話には実はある仕掛けが隠されている。 君は気付けるかな?
女同士だよね多分