昔の話。
もう20年以上前の話。まだ、いじめの問題が社会問題ではなく、学校内で解決しないといけない課題、みたいな扱いだった時代の話。
当時は、中学校(場合によっては高校も)どこのクラスにも1人や2人、リーダー的存在っていたのよ。学級委員とか生徒会とかとは別に、運動部のエースとか、まあ、これは僕らの世代と地域だからかもしれないけど、ヤンキーのトップからも一目置かれてるみたいなやつで、そいつが提案したものは、割とクラスの中でも無条件で通ってしまうみたいな人物。チープな言い方をすれば学年やクラスのカリスマみたいなやつ。今はそういうやつ、いるのかなあ。
スクールカーストの頂点というと、実はちょっと違っていて、カーストは無くて、そいつとほか数人が中心人物みたいな感じで。
ちなみに言えば、家が金持ちとかなわけでもない。
で、うちの学校にももちろんそういうやつがいました。文化祭のテーマとかも、なぜか実行委員長がそいつらに個別に「これでどうだろ?」とかお伺い立てるみたいなやつで。
そいつ(以下、カリスマ)は、まあ、友達も多くて、面白いやつなんだけど、ちょっと調子にのりすぎるきらいがあったんだよね。それがめちゃくちゃ悪い方向に出たって話。
ある時、文化祭の準備がありました。文化祭で、カリスマのクラスは演劇をすることになっていました。オリジナル脚本の劇で、クラスの秀才がシナリオを書いていました。で、カリスマが主演兼演出みたいな感じ。
その劇のわき役をやる男子(以下、Aくん)がいました。かれは普段は目立たないタイプで、クラスの中でもおとなしく、部活も入っておらず、成績は中の中、運動神経もまあ普通、みたいなタイプでした。
実は彼にはめちゃくちゃに芝居の才能があった。脇役でセリフの数も少ないんだけど、ものすごく的確な芝居をした。本番の後、大人が口をそろえて「Aくん、すごく上手いね、劇団とか入ってないのかしら」と言っちゃうくらい。
しかし、運悪く、彼が立った舞台はクラス演劇。まあ、仕方ない話だが、カリスマも含めて演技は良く言えばナチュラル、悪く言えば棒読みみたいな大根役者たちだったんですね。つまり、Aくんの演技はめちゃくちゃ浮いた。それこそ、一人だけ劇場の床が5メートルくらい上なんじゃないかってくらいに浮いた。
その結果、どうなったかといえば、彼の演技は「こっけいでくさい演技」みたいな評価になっちゃったんですね。カリスマもAくんの演技を鼻で笑う。それだけならよかったのだけど、カリスマは彼の演技をさらに誇張して、モノマネみたいにしはじめたんですね。演技のけいこの場じゃなくて、普通の授業の休み時間とかに、取り巻きの友人たちといっしょに。そして、取り巻きの友人はゲラゲラ笑うわけです。
Aくんは笑われてるのに気づきつつ、多少困惑もしつつ、まあ、勝手に言ってろ、俺は俺の芝居をするんだくらいに思ってたみたいです(って、本人に聞いてるわけではないので、本当のところはわからないのですが)
カリスマの取り巻きが、徐々にダイレクトにAくんをいじりだしたんですよね。
それは、文化祭が終わった後、さらに顕著になりました。なんせ、文化祭が終わったら、Aくんの華々しい演技はもう終わりで、彼はもう地味で目立たない中学生なのですから。
カリスマはもう、彼の演技の真似なんかしていません。だって、文化祭は終わったのですから。でも、取り巻きはAくんをいじり続ける。
べつに演技なんか関係なく、かれの一挙手一投足をいじる。だって、前にカリスマはいじってたんですから、AはいじってもOKなお墨付きがあるんですから。取り巻きにとって。
それが徐々に波及するとどうなるかというと、文化祭が終わって数か月もすると、彼はすっかり、いじって良いキャラになっちゃったんですね。本人の意思とは全く関係なしに。
そして、彼に施されるいたずらの数々。取り巻き(すでにそのころには、取り巻きだけではなくなってましたが)たちは、彼のリアクションが見たいわけです。
いたずらが続いて、2,3か月、Aくんは学校に来なくなりました。まあ、端的に言えば、いじめが原因の不登校です。
ところが、学校がいじめがあったかを把握するアンケートをやってみたら、誰も彼がいじめられていたなんて認識してないわけです。
いたずらしていた取り巻き「Aくんとは仲良く遊んでいた。あいつは面白いやつだった。」
カリスマ「なんで、彼が不登校になったのか全く分からない。あいつは文化祭を経て、一目置かれるようになって友達(とりまきのこと)もできたみたいだし。」
それ以外の生徒「なんか、Aくん、文化祭が終わったら、何人かと遊ぶようになったみたいで、笑ってるところをみるようになったし、なんで学校に来なくなったかわからない」
学校も困ってしまい、結局、親御さんには「いじめらしい、いじめがみつからなかった。本人が気にしすぎてそうなったのかもしれない」なんて無神経な返し方をしてしまうわけです。
結局、学校も信頼できなくなったAくんの家は、市の教育委員会と相談をして、新学年で転校させてもらうことにしました。
カリスマや取り巻きやそのほかの生徒たちは「あいつ、なんで学校に来なくなって、新学年で転校しちゃったんだろ」と首をひねるのでした。
こういう、関係性の勾配が結果として、いじめにつながる話、当時はいたるところにあったのですよ。
被害者の子は、マスコミの情報レベルだとここでいうカリスマみたいなタイプの子だったんだろうなと思います。彼がもし、一時期、加害者をからかったことがあったなら、それは加害者の彼にとって一つのターニングポイントになっちゃったんじゃないかなと思うのです。現状、情報がほとんどないので、この辺りは推測でしかなく、もしかしたら、加害者は単なる逆恨みかもしれず、もしかしたら本当に被害者は加害者を陰で大人の見えないところでいじめていたのかもしれませんが。
そして、僕はこの件にどうしても福岡IT講師殺害事件と同じ構図を思わずにはいられないのです。犯人(有名な仮称はここでは使いません)にとって、Hagex氏はここでいうカリスマであり、我々は取り巻きだったのではないかなと。事件の後「Hagex氏が彼を取り上げる前にすでに問題は大きくなっていた」という論調をいくつも見たのですが、犯人はあの記事が表に出たとき、「日向にさらされた」と思ったのではないでしょうか。そして、犯人をあの仮称で読んでいた我々(ブクマカたち)は、彼からHagexの取り巻きみたいにみられたんじゃないかと。
つまり、僕らは加害者の彼を単純に同情することも非難することもできない立場なんじゃないかと思うのです。それは、福岡の犯人に対しても。
あのねえ そもそも低能先生が殺したかった奴は山ほどいて、Hagexは先生の「いつか殺すリスト」の「Bランク」でしかなかったわけ たまたまHagexが近所でセミナーやってたから、チャリこ...