■anond:20211121234334

いえ、こちらも大変興味深いやり取りでした。以下に返答をしておきますが、夜遅いですので、後日ゆっくりお読みいただければけっこうです。

• トランスユーラシア語族は？
  • ありえそうな気はする、しかし「語族」というより「言語連合」なのでは
  • 言語学的に証明するのは不可能なので、分子生物学と考古学でやるしかないが
    • 言語学の人が納得できないのは分かる、しかし科学の世界ではある学問で解明できなかった問題が別の学問によって解決されるケースは多々ある

• いわゆるアルタイ諸語の類似が言語連合によるものであるという可能性は「アルタイ語族」よりもありえそうだと思う（根拠は山勘）
• 分子生物学と考古学は、言語の系統についていかなる証明もすることはできない。言語の系統を証明できるのは言語学だけである
  • なぜなら、遺伝子にもモノにも言語は刻まれていないからである（文字が書かれた遺物が見つかったら言語学の出番だ）
    • 血統と言語系統はまったく別である。分子生物学は前者を証明することはできるが、後者についていかなる言明もすることができない
      • 分子生物学の成果を補助線にして言語の拡散経路を考えることはありうるが、それはあくまで言語学の側で言語史をそれなりに復元した上で、分子生物学の成果と突き合わせて検討するという手続きを踏むべきである
      • 分子生物学や考古学の成果を、仮説の蓋然性を比較検討するときの判断材料に使うことはできる。しかし、それは仮説を採択したり棄却したりするのに使うべきではない
        • 「どの方向で研究を進めれば成果が見つかりそうか」を考える上でのヒントとして使うのなら、分子生物学や考古学の成果はもちろん言語学にとって有益である

• 日琉祖語が弥生時代に朝鮮半島から渡ってきたと思う根拠は？

• 特に異論はない（もともとそこに異論を唱えていたわけではない）
  • 日本語の起源については、オーストロネシア語族説やオーストロアジア語族説など、いくつかの説が唱えられているが、どれも決定打ではないと思う
    • 考古学的証拠や分子生物学的証拠が朝鮮半島からの渡来を示しており、また琉球列島へのホモサピの拡散は日本列島からである以上、南方起源説は（ありえなくはないが）可能性は低いように思われる（これらを覆すような言語学的証拠が見つかるなら別）
      • また、東北・北陸・関東の各地にアイヌ語の痕跡（「気多」「武蔵」「小矢部」など）が見られることは、列島西部から東部へと日琉語話者がアイヌ語話者を押しのけて（あるいは同化して）東進した証拠であろう

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