2021-08-29

コロナデカドロン処方のあれ

倉持仁医師コロナウイルス自宅療養者にイベルクチン抗生剤(フロモックス)+軽症者を悪化させる恐れのあるステロイドを処方?

https://togetter.com/li/1766223

のあれこれ、前提として私は医療従事者ではない。

どちらの判断が正しいかからないので、私に理解できる範囲で調べたのが以下。

抗生剤の方でなくステロイドの方。

  

前提

「倉持医師が自宅療養のCOVID-19感染者にデカドロンという薬剤を処方した」を事実とする。

ツイッター上の消去された自称患者ツイートであるため、信頼度がそこまで高いわけではないが、おそらく事実であろうという判断可能と思われる。

まずツイート上では「デカドロン(ステロイド)」とあるため、処方の書き間違いは考えにくいし「自宅療養の人に積極的に処方してあげて欲しい」といっていることから自宅療養の患者であろうと推測できる。

また、倉持医師ツイッター

自宅待機で呼吸苦あり、酸素も測定器もない。検査も診察も受けられないのに自宅待機者に医者なら〇〇出しちゃいけないとか、私ならこの薬は使いませんとか、意味不明。実際の患者さん見ての話前提。投薬とは医師患者さんで同意して行うもので、ガイドラインしか知らない人は自分だけそうしてれば良い。

https://twitter.com/kuramochijin/status/1431846060935168000

という反応をしているため、自身の処方である解釈されても仕方ないであろう。

    

説明書

まず、デカドロンとはデキサメタゾンというステロイドホルモン一種を錠剤にした製品である

デカドロンの説明書には以下のように書いてある。

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062800.pdf

9.特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

9.1.1 以下の患者には治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しないこと。

(1) 有効抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者

免疫抑制作用により、感染症が増悪するおそれがある。

というわけで有効抗菌剤の存在しない感染であるCOVID-19に対して、やむを得ないと判断される場合でなければ処方してはいけないのがデカドロンとなる。なぜなら、感染症をかえって悪化させるおそれがあるためというはっきりした理由があるわけで。

一般論としてのデカドロンの説明としては以上になるが、コロナ治療の場という場では話が変わるかもしれないというわけで、次。

  

診察の手引き

なぜデカドロンが処方されていたかと言えば、コロナ治療薬としての認証を受けているからと思われる。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61798210R20C20A7MM8000/

ということで、この異常事態では特殊な処方のされ方もされているかもしれないということで厚労省が出している「新型コロナウイルス感染診療の手引き[第2.2 版]」を見ることにする。

https://www.mhlw.go.jp/content/000650160.pdf

デキサメタゾンステロイド薬)

 英国での RECOVERY 試験の結果,デキサメタゾンが COVID-19 の重症例の死亡を減少させたとの報告がなされた.……主要評価項目である治療開始 28 日後の死亡率はデキサメタゾン治療群 vs.標準治療群において全体で 21.6% vs. 24.6%(年齢調整リスク比:0.83 [95% CI 0.74-0.92], p<0.001)とデキサメタゾンによる致死率低下を認めた.さらに呼吸サポート別では人工呼吸器装着患者の致死率は 29.0% vs. 40.7%(リスク比:0.65, [95% CI 0.51-0.82], p<0.001),酸素投与のみの患者の致死率は 21.5% vs. 25.0%(リスク比:0.80,[95% CI 0.70-0.92], p=0.002)とデキサメタゾンによる死亡率低下を認めたが,酸素投与の必要のない患者の致死率は 17.0% vs. 13.2%(リスク比: 1.22, [95% CI:0.931.61],p=0.14)とデキサメタゾン効果を認めなかった.

(RECOVERY Collaborative Group, Effect of Dexamethasone in Hospitalized Patients withCOVID-19: Preliminary Report, 2020. doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.22.20137273)この試験を受けて,米国 NIH治療ガイドラインを 2020 年 6 月 25 日に改訂し,人工呼吸,または酸素投与を要する COVID-19 患者デキサメタゾン使用を推奨している.

NIH COVID-19 Treatment Guidelines https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov)

なお, MERS-Co-V やインフルエンザにおいては,ステロイド投与によりウイルス排除が遅延し,致死率も高かったとの報告がある.デキサメタゾン以外のステロイド薬の評価確立していない.

デキサメタゾンの投与で効果が認められたのは、人工呼吸又は酸素投与を要する場合であり、そうでない対象には効果が認められていない(それどころか投与した方が死亡率が高い)。

他のウィルス感染症の場合にはステロイド投与で致死率が高まるという報告も書かれており、原則使用不可の説明書裏付けているものだろう。

 

なぜ効果があるのか

デキサメタゾンが効く理由として、日本感染症学会の「COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 7 版(2021年2月1日)」では

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_210201.pdf

機序重症COVID-19患者は、肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応を発現する。コルチコステロイドの抗炎症作用によって、これらの有害な炎症反応を予防または抑制する可能性が示唆されている。

としている。免疫作用として炎症が起こるが、免疫作用しすぎて炎症が有害になっているため炎症を抑えるためにデキサメタゾンが処方される。

そうすると免疫暴走していない状態デキサメタゾンを処方するのは問題ということだろう(免疫普通に頑張ってくれないとウィルス排除してくれない)。

  

やむを得ないと判断される場合

他のデキサメタゾン必要な疾患のためにCOVID-19と並行して治療を行う可能性とかも考えられるのかもしれない(それにしたって、COVID-19が治った後でもいい話でそんなに急いで取り掛からなくてはならないかと思わなくもないけども)。

後は、有害な炎症反応が起こっているが病床が足りないために入院できないで自宅療養をせざるを得ない状態もあるかもしれない(それならそうと説明すればよい気もするが)。

もっと専門的見地から見てやむを得ない事情があるかもしれないので、デカドロンの処方が全くおかしいとは私の調べた範囲では言い切れないが、危険を伴う処方であることも事実ではあろう。

基礎中の基礎の資料しか舐めていない私の理解は全く足りていないだろうが(倉持氏が苦言を呈したようにガイドラインしか読んでいない)、何も知らない一般人が調べただけでは倉持医師批判する側の言い分を肯定する資料が見つかったといえるだろう。

これ以上は私の手に余るので終わらせるが、それが本当に効くのならば一医師経験と勘で終わらせてほしくはないので、ほかの医師でも診断可能なような客観的基準を示して世界の役に立ってほしいなぁと愚考する次第である

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