委員長と夏の夜に
ふう……これで、今日やらなきゃいけない仕事は全部終わったはず……?
はあ、めんどくさかった……。
早起きしたからか、まだこんな時間なのにもう疲れた……。午後の約束まで、少し休んでおいた方が良いかもしれない……。
少しだ、け……
(ん……)
(んんっ……ふぁ……)
(んっ……ふぅ。でも、久しぶりによく寝た……えっと、この後は……)
(今、そもそも何時……?)
(午後6時……お昼、食べそびれた……)
(まあそれは良いけど……この後の予定は……っ!?)
っ!!先生との……っ!
……。
……?
……!?
先生……。
……。
本当に、ごめん……。
せっかく先生と海に行けると思ったのに、私のせいで……。
……?
言い訳には、ならない……。
本当にごめん、先生。今からじゃ海に行く時間も無いし……私のせいで、先生の時間を無駄にして……。
私、私……。
……?せ、先生……?
な、何?急に手を握って……。
"まだ終わってないよ。海はすぐそこにあるんだし。"
すぐそこに、って……。
あっ……そういえばここのホテル、テラスから海が見下ろせるって……。
"行こう!"
……どうして、先生はそんなに優しいの?
…………。
……ううん、何でもない。
先生は、いつもそうだった。そうやって、いっつも私に……。
じゃあ、えっと……
あ、んっ……。
へくしゅっ……!
……大丈夫、風邪とかじゃない。これは、今起きたばっかりだから——
これ……カーディガン?わざわざ持ってきてくれたの?
……ううん、ありがとう。
(いつもこうやって、気を遣ってくれるから、私は……)
……なら、遠慮なく。
それじゃあ、先生が自信満々に綺麗だって言ってた海、見に行こう。
——何でもんな、そんなに海が好きなんだろう……って、
——ずっとそう思ってた。
——みんなは楽しそうだけど、
——私はどうしても好きになれなくて……
——水の中はよく見えないし、足がつかないと不安だし……
——見てるだけで吸い込まれそうで、好きになれなかったけど……
——でも……今は、みんなの気持ちが少しだけ分かった気がする。
——海って、こんなに綺麗だったのね。
——色んなことを、教えてくれて。