2021-08-04

キスブリアのリスクベネフィット比を推定するのは容易ではない

日経のこの記事、1/10万人程度の血栓にびびってバキスブリアを棚上げしてた国がおかしいみたいな論調だけど。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK281E70Y1A720C2000000/

そのバキスブリアによる血小板減少を伴う血栓症候群(TTS)は脳静脈血栓を起こすと致死的になりうる( https://www.jsts.gr.jp/news/pdf/20210601_tts2_3.pdf p6) 。確率が低くても結果が重大なら当然その分「得失」の失の部分は大きくなり無視できなくなる。リスク不寛容とかそういうレベルの話じゃないんだよ。

一方で国内コロナ感染症が猛威を振るっている現状ではコロナにかかる確率デルタ株が優勢という点から、従来より高いと思われる。この点に関してはライフスタイル・体質の影響は大きい。また臨床経過も人様々であろう。両側広範囲肺炎から呼吸不全で亡くなったり、血栓症を合併してこちらが致死的になるかもしれない。これらのことから、「得失」の得の部分も一様ではない。有症状感染予防に関してデルタ株に対して、バキスブリアは65-75%程度といわれる。(67%, 95%CI 61.3%-71.8%, https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2108891)。得は思ったより大きくないかもしれない。

これらのことからリスクベネフィット比を各個人でどう判断するかは容易ではない。ここで、コミナティモデルナなどの比較安全ワクチンを接種できる選択肢があるのならばよいが、バキスブリしか選択できない若年世代はどうしたらよいのだろうか。それが1/10万人でも自分に起こってしまえばそれは100%の災難だ。そうなったとき、現状東京では治療を受けられるかどうかもわからない。

「腑に落ちない」のはかまわないが、それを非合理な国・国民所為だと高みから放言できるのは自分が恵まれ地位いるからだ、と自覚してから物言おうな。

  • リスク計算できている、と嘯くやつらは、たいてい件数みたいな数字を表で出してくるんだけど、その1件あたりのリスクの大きさを度外視している。 ……というやつか。まあ典型的な...

  • 日本の年齢別死亡率からして、ジジババの高い(?)死亡率がワクチン打てばかなり下がるのを踏まえれば、アストラゼネカの血栓なんて大したリスクではなかったはずだと思う。 (そもそも...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん