2021-07-11

ジャンプラ『汚れた血

導入の動機からスムーズで、中盤に家を捨ててアイドルになり、母への憎悪と愛の独占欲動機まで中盤に出し切ってる。そのあとで妹の歪みを一挙に表出させてゆくわけだけど、その際の妹の演出が上手。事故死直後の葬式の際に「久しぶり」のコマで妹になにか黒い部分があるのではないか、と思わせる一コマを挿入している。一コマで状況説明できるのは力量がある証拠しか前後関係からして妹が事故をわざと起こしたのではないか、というミスリードにも繋がっている(後述)。独占欲と妹の心象風景をもって、自分自身一心憎悪を向ける妹に独占欲の充足を知る。また、妹は自分と似た独占欲にまつわる憎悪を抱いていて、姉は妹に自分自身を見る。姉の心象風景自己愛に集中しているので、もうひとりの歪んだ自分(妹)に最大の自己愛を注げるという内容。すべての伏線回収を綺麗に行っている。

ただしエピソードの割に母の死付近演出凄惨すぎて、上記のように殺人事件連想させたのはわざとなのかどうかが気になる。これがわざとならサブシナリオや連載も考えてのことなんだろう。もしそうなら動機から考えて妹は姉へ愛を注ぎ続ける憎悪から母を殺したという話になる。

惜しむらくは押見修造先生のように繊細な心情を語りなくして語り切る手法がないことだけど、これはページ数が足りないかちょっとモノローグ説明が多い気がする。初っ端からにじみ出るベテラン感。作者はもともと研究熱心だと思う。

  • 便乗でここに書くけど、 本人たちが自分の感情は醜いと感じていて、絵柄や演出がそれを強調しているけど、 全然醜い感情ではないと思う。 僕らはみんな、もっとドロドロした感情抱...

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