2021-06-14

東芝ガバナンス問題外為法運用観点を中心とした整理

掲題事項について整理した。

まとめると、東芝問題は、そもそも外為法範疇外。

なのに、東芝経産省も、必死外国ファンド圧力をかけて、東芝を守った(守ったことになってない。)。 です。

事実整理

長くなるので、報道に譲ります。どの新聞も、中途半端事実整理が多いですが、一応日経のこの記事飛ばし読みには良いと思います

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC109JP0Q1A610C2000000/

ヘッドラインだけ書いておくと、次の2点が報告書では疑義とされています

1.行使された議決権集計にかかる不正処理
2.一部の株主に対する議決権行使にかかる圧力(末尾で述べる)

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20210610_1.pdf

結構短いので、是非読んでください。

1.については、不正処理があったことを認定する証拠は無いという報告内容です。

2.については、圧力等があったという報告内容です。

以下は、その事実を前提として、外為法との関係を整理するものです。

外為法運用観点を中心とした整理

改正外為法は、取得時の審査目的としたものである

安全保障観点で取得を認めるべきでない株主の取得について、事前の届出を義務付け、審査し、帳簿請求権等を有する手前(1パーセント)段階でチェックする主旨の法律です。

これの是非は置いておいて、東芝問題との関係では、「外国株主が取得後に本法を持ち出して行政が介入できる道具ではない」という点に尽きます

非常に細かい法令なので、詳細は後で書きます

外為法改正の経緯(2019年整理)

2020年6月から適用開始された「外国為替及び外国貿易法」および政省令改正は、i)外国投資家が、ii)同法令で指定された業種に投資する場合、iii)事前に届出を行い審査対象とする、法令です。

これを、「対内直接投資等」と呼んでいます

複数自民党議員が、本法の必要性を訴えたこから財務省経済産業省等が動かされ、2019年から急ピッチ改正案が纏められ、国会を通りました。なお、同法趣旨が正当かという点はここでは論じませんが、多くの先進国運用されている法制度で特殊ではありません。

審査基準

外国投資家が「対内直接投資等」を行う場合投資先の会社やその子会社等が安全保障等に関連する一定の業種であれば、原則として事前届出が必要です。

届出内容にかかる、外為法による審査基準は次の通り。

外国投資家から指定業種を営む会社に対する対内直接投資等について事前届出がなされた場合財務大臣及び事業所大臣は、その対内直接投資等が下記に該当しないか審査する(外為法 27③一)。
①国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆安全保護に支障を来すことになること。
我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになること。
外為法改正の概略・事前届け出の対象とは

前述の審査が行われる場合として、外国投資家が「対内直接投資等」を行う場合投資先の会社やその子会社等が安全保障等に関連する一定の業種であれば、原則として事前届出が必要となります

かい例外はありますが、1パーセント以上の取得が対象となります。(大量保有報告の最初閾値が5%なので、相当に低い水準)

業種は次の通りで、相応に広い。

①「国の安全」関連:武器航空機原子力宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造サイバーセキュリティ関連

②「公の秩序」関連:電力、ガス、熱供給通信放送水道鉄道旅客運送

③「公衆安全」関連:生物学的製剤製造医薬品製造感染症関連)、高度管理医療機器製造、警備

④「我が国経済の円滑運営」関連:農林水産石油、皮革関連、航空運輸、海運

さらに、「コア業種」という特に重要な業種が指定されていて、東芝は、これにあたる。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm

トリッキーな点・1パーセント以上の取得以外の場合

1パーセント以上の取得以外でも、審査対象となる場合があります。ここがポイントになります

上場会社株式又は議決権の取得で、出資比率又は議決権比率が 1%以上となるもの

株主総会において下記に係る議案に同意すること

(a)会社事業目的実質的な変更

(b)当該外国投資家又はその関係者の、取締役または監査役への選任

(c)事業譲渡合併、分割、子会社株式譲渡解散

以下長いので略します。

取締役または監査役への選任」に関する議決権が、外為法審査対象になりうるキーファクターのため、東芝陣営はこの点を使えないかと画策しています

しかしながら、対象の議案は、これに該当しないため(東芝内部でも同じ見解が出ている)、外為法そもそも使えないケースです。
東芝事実分析

加茂常務からの依頼に答えるかたちで「法務T2氏は、(改正外為法の)条文をそのまま解釈する限り、取締役選任議案に対する反対又は棄権議決権行使が対内直接投資等に該当しない・・・」という分析を示しています。(報告書P.58)

経営企画部のT1氏は、法務T2氏に、経産省へのネゴを頑張るような指示をして「強引度合いを広げてみ」たというメールをしてます(報告書P.60)。チャレンジ精神が残ってる感じですね。

車谷社長は、当時の菅官房長官朝食会を共にして、外為法で何が出来るか相談したと推認される事案については、暗にしか認めず(当初は否認)、個別の話もしなかった、などと述べていますが、報告書では信用に値しないとされています

加茂常務は、経産省との間に立って、経産省が「東芝に有利な解釈」を引き出せるようなアイデアを出せと、法務T2氏に迫ったりしています

法務T2氏は、どうやらマトモな方のようで、概略、外為法解釈としては無理であること等を述べています

経産省METI)は、外為法の直接の所管ではない課長級が、エフィッシモに電話をしたりしています報道では、水野弘道を使った点などが騒がれていますが、METI自身も影響力を暗に行使してしまっています

METI側も、「コロナ禍において、社会的影響の大きい企業が安定して事業継続できること・・・は広義の安全保障」と考える人間がいて(K3局長・当時の商務情報政策局長。辞職済。)勝手な法解釈をしています

外為法の所管部署は、安全保障貿易管理政策課です。報告書をみるに、同課は、外為法は使えないことは理解していて、同法行使ではなくエフィッシモに接触したりしています。(長くなるので省く。)

再度まとめ

エフィッシモ他の東芝株の取得および議決権行使については、そもそも外為法アクティビスト排除法令ではないこと、基本的には取得時の事前審査(一部、議決権行使も”取得”とみなされ審査対象)をする法令であることから東芝上層部METIの一部が勝手解釈同法を自らの利益になるように恣意的運用したケースとして問題が大きいです。(所管の、安全保障貿易管理政策課は、使えないことが分かっていた節があり、違うアプローチをとっている。長くなるので省く。)

実際に同法を発動させて事前審査していないものの、行政から株主電話等を行って、一企業株主総会運営が歪んだのは、私見ですが、i)東芝METIが近すぎること、ii)官房長官が安請け合いした上から圧力があること、等があると思いました。

さいごに、東芝T2氏は、かなり勇気のある法務だと思います

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