2021-05-29

少年ジャンプ+南野夏雄「減量機械」と安部公房「R62号の発明

南野夏雄「減量機械

https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496332061202

安部公房「R62号の発明

https://www.shinchosha.co.jp/book/112109/

すでに指摘されてるように「減量機械」は安部公房「R62号の発明」の翻案のような作品なのだが、最後大会に出てくる司会ロボット?が「R63」であることから、そのことを作者も隠しているわけではないし、筋の大枠も違うし、それ自体問題とは感じなかった。

ただ終盤機械が何も知らないお偉いさんを殺害するところで「ランプのついたボタンを押させるが失敗したら指を切断する」という同じような場面が双方の作品にあり、その時機械の製作者(主人公)が発するセリフちょっと引っかかった。

「筐体にボタンがついてるでしょう」「青く光るので3秒以内に押して下さい」「ボタンを押すのが遅れると指を一本失います」「10回までなら失敗ができますよ」

「ランプが血で見え辛くなったら…左側のレバーを引いてください」「メタノールで洗浄されますよ」

(以上「減量機械」より引用

「前に沢山並んだボタングリーンのランプがついたら、それをすぐ押して下さい。押すのが二・四秒おくれたら指が切れてしまます。(中略)指は十本あるから十回までは指だけですむのです。」

「血でランプが見えなくなったら、一番下の赤いランプをおして下さいね。上からメタノールが流れて洗ってくれますから

(以上「R62号の発明」より引用

「失敗したら指が切断されるけど指は10本あるから10回まではチャンスがあるよ」「ちなみにランプが血で見えなくなったらメタノールで洗えるからがんばってね」という冷酷な場面におけるブラックな笑いは、作品を際立たせる発明のようなもので、自分はなんでもかんでもお気軽にパクリパクリという風潮にどちらかというとうんざりなんだが(例えば「R62号の発明」の機械カフカの「流刑地にて」に登場する処刑機械を想起させるがそういうのをいちいちパクリとは言わない)、こういう細部に宿るキラーフレーズこそ案外漫画小説における作者の勝負どころだと思っているので、もうちょっと頑張って一捻り加えなければいけなかったのではないかと思うのだ。

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